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訳文検討:修飾部が長すぎる訳文をブラッシュアップ

翻訳でありがちな(そして悩みがちな)問題。英文の修飾部が長すぎて、そのまま素直に訳すと冗長になり、意味がわかりづらくなってしまうこと
そんな場合は、視点を明確化して訳文の構造を整理する修飾部に含まれる要素を減らすといったテクニックも有効です。

今回は、具体的な原文とありがちな訳例を具体的に挙げて、少しブラッシュアップしてみたいと思います。

たとえば…

【原文】Users who ask to get an email when an error occurred in their system.
【ありがちな訳の例】システムでエラーが発生した際にメールを受け取ることを求めるユーザー。

「ありがちな訳の例」は、末尾の「ユーザー」に係る修飾(「システムで」から「求める」まで)が非常に長く、その修飾部に「発生する」「受け取る」「求める」と3つの動詞が含まれていることから、どこにたどり着くのかわからない文章になってしまっています。
また、視点も適切とは言えません。読みようによっては、「自分以外のだれかに対し、メールを受け取るよう求めている」と解釈されてしまう可能性も。

そこで…

【改善案1】システムでエラーが発生した際のメール配信を希望するユーザー。
【改善案2】システムでエラーが発生した際にメールが届くようにしたいユーザー。

  1. 「改善案1」では、「get an email」を「メール配信」と名詞化することで(「品詞の転換」という翻訳テクニックのひとつ)、修飾部に含まれる動詞の数を減らしてみました。

  2. 「改善案2」では、「求める」の代わりに「したい」を使うことで、修飾部に含まれる動詞の数を減らしてみました(「したい」は「する」の連用形に「たい」を付けたものなので、厳密に言えば動詞ですが)。
    また、「届く」を使うことで、視点(メールの動きの方向)を明確化しました。

このように修飾部分に特定の要素が多すぎて意味がわかりにくくなってしまう場合は、それを工夫により減らせないか検討してみるとよいと思います。
また、使う単語を一つ変えるだけで、視点がぶれなくなることもありますので、あわせてご検討を。
原文の言いたいことを簡潔かつ的確に伝えられるよう、工夫したいものです。

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