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翻訳技術向上

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訳し方、原文の捉え方、日本語の使い方など、英日翻訳で役立つTipsをご紹介。 シリーズではないので、気になるトピックから読めます!
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記事一覧

訳文検討:修飾部が長すぎる訳文をブラッシュアップ

翻訳でありがちな(そして悩みがちな)問題。英文の修飾部が長すぎて、そのまま素直に訳すと冗長になり、意味がわかりづらくなってしまうこと。 そんな場合は、視点を明確化して訳文の構造を整理する、修飾部に含まれる要素を減らすといったテクニックも有効です。 今回は、具体的な原文とありがちな訳例を具体的に挙げて、少しブラッシュアップしてみたいと思います。 たとえば… 「ありがちな訳の例」は、末尾の「ユーザー」に係る修飾(「システムで」から「求める」まで)が非常に長く、その修飾部に「

バッファロー文で頭の体操(1)

こんにちは、川津です。 この記事では、ちょっと遊び心を出して、「バッファロー文」を使って遊んでみたいと思います。翻訳関連のお役立ち情報を綴るnote連載ではありますが、たまには実務翻訳から離れて羽根を伸ばしてみませんか。 バッファロー文とは Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo. 言語学分野における超有名な例文です。一見すると意味不明ですが、文法的には正しく、buffaloという単語

バッファロー文で頭の体操(2)

こんにちは、川津です。 この記事では引き続き、「バッファロー文」を使った英文解釈を進めます。 前回の記事はこちら。 前回からお読みの方はご承知のとおり、バッファローが増えるに従って解釈の幅は広がり続けています。果たしてバッファロー×7まで到達できるのか? 結論から言うと、到達はできたのですが、ご紹介するほどの面白さには到らず、バッファロー×6までに留めることとなりました(その理由は記事内で説明させてください)。 そんなわけで、この記事は主に6頭のバッファローに捧げられま

【英日翻訳初心者向け】なぜなに!辞書入門

みなさまこんにちは、はじめましての方ははじめまして。そうでない方はまたお会いしましたね、お変わりないですか。テレビは居酒屋で見る派の嘉汕(かせん)🐸です。 突然ですが、ふだん辞書を使っていますか。この記事では、英日翻訳者を目指そう、あるいは英日翻訳者になりたてという方向けに、翻訳での辞書の使い方などを語ってみようと思います。 どうして辞書を使うのか、辞書を効率的に使うために翻訳者はどんなことをしているのか、といったことをご説明する予定ですが、学生時代以来辞書に触れていないとい

【仕事術】翻訳者向け 脱マウス超入門ドリル(1) Windows編【作業効率化】

■はじめに こんにちは。TPJでPM(プロジェクトマネージャー)を務めている「たー」と申します。  みなさん、僕と一緒に「脱マウス」を目指してショートカットキーの基本を習得しませんか?  本記事では、普段マウスを多用している翻訳者向けに、マウスを使わずキーボードのショートカットキーだけで作業するための基礎を実践ドリル方式でお伝えします。  ものの本によりますと、脱マウスを達成することで、なんと年間120時間も節約できるんだそうです。すごくないですか?  みなさん、年間120

【翻訳会社の中の人】英日翻訳者として日々心がけていること(嘉汕編)

みなさまおげんきですか。はじめましての方ははじめまして、ご覧いただきありがとうございます。そうでない方はまたお会いましたね、いつもありがとうございます。嘉汕🐸です。 今回はビジネス翻訳(特にIT系)を生業としている身として、フリー時代から翻訳力向上のため日々心がけていることをご紹介します。なお、こうしたルーティーンはTPJ全体でおこなっているものではなく、また心がければ翻訳者として大成できるというものでもありません(そもそも🐸は大成していません、今のところ)。「翻訳の腕を磨

【仕事術】翻訳者向け 脱マウス超入門ドリル(2)Trados Studio編【作業効率化】

■はじめに 「ニューノーマルだしね」が「煩悩丸出しね」に聞こえちゃう今日この頃、皆さん、ご機嫌いかがでしょうか。健やかにお過ごしでしょうか。こんにちは。テクノ・プロ・ジャパンでPM(プロジェクトマネージャー)を務めている「たー」と申します。絶賛在宅勤務中です。会社のオンライン会議で縦横に等分割された画面に顔がたくさん並んでいるのが全然慣れません。仮面ライダーアマゾンの十面鬼を連想してしまいます。ミステリー映画の予告編の「犯人はこの中にいる」みたいな感じにしてほしい。集中できそ

翻訳テクニック集:修飾語句が多いときの訳し方

マーケティング系の英文では、自社サービスをアピールするために1文に多数の修飾語句が盛り込まれるケースが頻出します。日本語で文章を書くときはあまりそういうことをしないからか、素直にそのまま訳してしまうと、冗長になったり、日本語として不自然になってしまったりと、文章の訴求力が下がってしまいます。 たとえば、これくらい修飾語句が多い文章はよく見かけます(文脈の情報として、ある特定のサービスのメリットを紹介する文章です)。こういう場合、訳文では修飾語句の順番を変え、表現を調整するテク

翻訳テクニック集:視点の入れ替え

翻訳のテクニックの1つに、「原文の視点を入れ替える」というものがあります。 たとえば、IT系のドキュメントでは、システムやサービスに何らかのイベントが発生したときに通知を送受信する機能・仕組みがよく取り上げられます。そんな中で頻出する単語が、「send」、「get」、「receive」などです。それぞれ素直に送信、取得、受信のように訳して問題ないケースも多いものの、送信元(送り手)と送信先(受け手)の視点を入れ替えて訳すと、ごく自然な日本語になることがあります。たとえば、「

翻訳者しか知らない文章本の世界

世に数多ある、文章術に関する書籍。我々翻訳会社のスタッフも、物書きの端くれとして、日々読み、学び、実践しています。 このコラムでは、その中でも特に有用と思われる書籍をご紹介します。 執筆者のバックグラウンド 取り上げられている文章のタイプ 執筆者が注目しているポイント その書籍を読むと作文スキルのうちのどこを伸ばすことができるのか どういった人におすすめか 等々、要点を押さえてご紹介。読めば読むほど文章がうまくなる、かも!? 紹介者は実務翻訳者なので、「実務翻

知っておくと(きっと)得する、翻訳業界用語集

はじめにみなさまこんにちは、はじめましての方ははじめまして。最近1日に2回通り雨に降られた嘉汕🐸です。 唐突ですが、初見では意味がわかりいにくい用語や略語って、どこにでもありますよね。今となってはもう少し古いですが「DX」とか「ぴえん」とか。もちろん翻訳業界にもこういう言葉はあるのですが、業界に入りたての方やこれから翻訳者を目指そうと思っている方にとっては少々わかりにくいもの。そこでこの記事では、翻訳の現場でよく使われている用語・略語をアルファベット順にご紹介します。私見にあ

その熟語、自動詞か他動詞か?(日本語の話)

こんにちは、川津です。 実務翻訳においては、熟語(漢熟語)をよく使います。たとえばuseという動詞なら、「使う」や「使って」だけでなく「使用する」と訳す場合も多いわけです。 ここで、気をつけるべきことがひとつ。その熟語が自動詞なのか他動詞なのか、見極める必要があります。 この記事では、いくつかの熟語を例に挙げつつ、普段私がこの点をどのように処理・判断しているかをご紹介します。 何はなくとも辞書を引く使おうとしている熟語が自動詞か他動詞かを見分けたい場合、まずは素直に辞書を

翻訳者のための実体参照入門

こんにちは、川津です。 今回は「実体参照」について軽くご紹介しようと思います。 実務翻訳に興味のある方のうち、この言葉をあまり聞いたことがない方を対象とした内容です。 「実体参照」という言葉自体は、検索すればいくらでも解説記事が見つかります。ただ、そのほとんどが網羅的な内容です。作業中に調べものをするならともかく、事前に「実体参照ってどういうもの?」と調べたい人にとっては少し情報過多かもしれません。 そこで今回は、翻訳業務で頻出するものだけを数個選び、翻訳時の注意点と併せて

助詞「は」の不自然さを解消する(3)

こんにちは、よんのすけです。 前回は、訳文で「は」を使用する際に注意すべき点として、「は」が「動詞から遠くわかりにくい」ケースについてご説明しました。 今回は、「『は』が使用された、自然とは言い切れない微妙な文」のケースについてご説明します。 本記事で扱う改善前の例文は、間違いというには微妙な、絶対にダメとは言い切れない文章です。実は執筆後に同僚に確認してもらったところ、それほど大きな問題を抱えた文章であるとは思えない、との意見をもらいました。ただ一方で、「こういう構文