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one medical: デジタルヘルスxクリニック

昨今感染症拡大の影響から医療への注目が集まっており、特にその需要と供給のズレが問題視されている様に感じます。これまでの記事でもそうした課題の解決に取り組むデジタルヘルス企業を紹介してきましたが、今回まとめたOne Medicalはシステムの構築のみではなく直接クリニックを運営して効率化と医療供給拡大の仕組みを作っています。

企業概要

One Medicalとは2007年にTom Lee氏 (EpocratesGalileo等の医療系企業も設立)によって創設された会員制のプライマリーケアプラットフォームを提供する企業です。アメリカ、サンフランシスコを拠点に米国内に100以上のクリニックを構えています。全ての診療所で医療記録は共有されており、患者は異なる診療所でも同様の診察を受けることが出来ます。また完全な時間統制によって待ち時間を排除しています。24時間年中無休でビデオチャットやメッセージ、処方箋の更新も可能になっており、メンタルヘルスコーチングや小児科まで対応しています。収入は年間会員費用とそれぞれの医療費から得られています。

医療の効率化、医療費の削減に成功しており、2019年にはForbesの「最も顧客中心のヘルスケアカンパニー」に選ばれました。

2020年1月にNASDAQに上場し2億4,500万ドルを調達

2021年6月には同様のサービスを提供するiora Healthを全額株式交換によって買収しています。(iora Healthは合併後も会社の約27%の株を保有

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マーケットと提供価値

GrandViewResearchによると米国のプライマリケア市場規模は2019年に2,830億ドルと計算されており、2020年から2027年にかけて年平均約4.7%の成長が予想されています。

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Peterson Foundationによると米国の医療費支出は医療保険制度の違いなどからその他の先進国と比較しても高い傾向にあります。加えて Prophet and GE Healthcare Camden Groupの調査では81%の人が医療に満足していません。

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医療サービスの提供側でも医師の約50%が燃え尽き症候群を抱え、75%の医療提供者が外部の医師とのネットワーク構築を望んでいます。

以上の課題に対してOne Medicalは下図の様に90%以上の満足度と40%以上の電子カルテ業務の削減、待ち時間の排除と100%の医師間ネットワークの構築に成功しています。

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この満足度にはオンライン予約、待ち時間の削減、オンライン決済、24時間の対応や遠隔診療への対応によるものと考えられます。創設者のTom Lee氏は1998年に自身が医学を学ぶ過程で当時の医療システムに疑問を感じ、医師同士がコミュニケーションをとり学び合えるサービスを提供するEpocratesを創設しています。Epocratesの開発過程でユーザーエクスペリエンスを重視した設計に取り組んでおり、その工程をOne Medicalに適応した結果の満足度の向上と言えます。

これまでの主要な資金調達歴

2011年, One MedicalはSFとNYを中心に9つの診療所を運営しており、さらに5つを開設。オンラインでの予約と健康状態の確認、処方箋のリクエスト、オンライン決済機能を実装、さらに通常平均3~5人のサポートスタッフを要するところを2人以下に抑える効率化に成功しており、9月にBenchmarkという投資企業より2,000万ドルの資金調達に成功しました。

2014年に診療所は27に拡大し、さらに7つを増設。UberやFitbitなど40以上の企業と契約を結び、GoogleHelpoutsを介した新しい遠隔医療サービスを開始しました。4月にはRedmile Group主導の元で4,000万ドルを調達しています。

2015年、One MedicalはAdobeやAirbnb、Lyftなどを含む150以上の企業と契約を結び、JPモルガンから6,500万ドルの投資を受けています。

2018年にはすでに1,000人以上の医療費を平均約5.5%の削減に成功しており、The Carlyle Groupから3億5,000万ドルの資金調達に成功しました。

株価

2020年の上場から

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業績

2021年次でのiorahealthと併せた業績は以下の様になっている様です。

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【One Medical】 
・収益: $4億7500万
・年間平均成長率: 28%
・合計会員数: 59万8,000人
・会員数成長率: 27%
・年間平均会員エンゲージメント: ~10
・医療費削減率: 8~45%  

【iorahealth】 
・収益: $2億9900万
・年間平均成長率: 45%
・合計会員数: 3万8,000人
・会員数成長率: 43%
・年間平均会員エンゲージメント: ~19
・医療費削減率: 27%  

これらの情報を見る限りでは全体の業績ではOne Medicalが上回っていますが、iorahealthはより高い成長率を示していることが見て取れます。

今後は2社のサービスの統合により2030年まで年間平均成長率30%と17%以上のEBITDA Marginを目指し、8,700億ドルのTAMを獲得しに動く様です。

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最後に

今回は米国大手医療プラットフォーム企業について同社のIR資料をその周辺知識と合わせてまとめてみました。医療系企業としての上場とパンデミックの重なりやiorahealthの買収からまだ日も浅く、その成長とシナジー効果が結果に現れるのは少し先になると思われます。こうした企業の在り方を知識として共有し、皆様の業界や医療への考察の一助となれば幸いです。

読んで頂きありがとうございました。


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