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デジタルバイオマーカーとは

 今回は、「デジタルバイオマーカーって何?」というテーマで書かせていただきました。

 TechDoctor のデータサイエンティストの杉尾です。
 我々の過去の執筆記事の中でも「デジタルバイオマーカー」という言葉を幾度か使わせていただきましたが、今回の記事を読めば、より詳しくデジタルバイオマーカーについてわかるようになると思います。同語ご一読ください。

 あと、冒頭に失礼いたします。弊社へのお問い合わせはコチラになります。「こんなことはできないか?」、「こういうサービスまたは研究をしたいんだけどサポートしてくれないか?」など、何なりとお申し付けください。

1. バイオマーカーとは

 「デジタルバイオマーカーとは」の前に、バイオマーカーに関して記したいと思います。バイオマーカーは、以下のように定義されています。バイオマーカーとは、以下のように定義されています。

「通常の生物学的過程、病理学的過程、もしくは治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価される特性」と定義されており、広義には日常診療で用いられるバイタルサインや、生化学検査、血液検査、腫瘍マーカーなどの各種臨床検査値や画像診断データなどが含まれる。

[Clin Pharmacol Ther. 2001;69:89-95] [1] 

また、以下のような種類が存在しています[2]。
・ 診断マーカー(diagnostic marker)
  → 疾患の診断
・ 予後マーカー(prognostic marker)
  → 疾病の経過を予測
・ 薬力学マーカー(pharmacodynamic marker)
  → 薬剤の作用機序を診断
・ 予測マーカー(predictive marker)
  → 治療効果を予測
・ 代替マーカー(surrogate marker)
  → 真のエンドポイントの代替となるマーカー
・ モニタリングマーカー(monitoring marker)
  → 治療への反応を診断
・ 患者層別マーカー(stratification marker)
  → 薬剤に関連した特定の分子を発現している患者を選別する
・ 安全性・毒性マーカー(safety/ toxicity marker)
  → 薬物の安全性、毒性を評価

 つまり、疾患の有無や、それらの進行状態を測るための目安になる指標のことです。そして、主に心拍数や血圧、血液検査の結果、さらには心電図などがそれに当たります。これらは決して私たちの生活に馴染みのないものではなく、私たちが病院で医師の方々に診断をしてもらったり、あるいは会社の健康診断などでチェックされる項目で、それらをかっこよく言うとバイオマーカーと呼ぶことができるのです。

2. デジタルバイオマーカー(Digital Biomarker:dBM)とは

 では、本題のデジタルバイオマーカーの話に移りましょう。当たり前ですが、デジタルバイオマーカーは、「デジタル」+「バイオマーカー」です。つまり、すでに存在していた「バイオマーカー」に「デジタル」の何かが応用されたバイオマーカーになります。背景としては、比較的データが手に入りやすくなったことや、それらを処理できるシステム基盤や計算アルゴリズムの進化、そして、センシングや画像診断技術をはじめとするデバイス技術の発達が考えられます。

 デジタルバイオマーカーは、以下のように定義されています。

 スマートフォンやウェアラブルデバイスから得られるデータを用いて、病気の有無や治療による変化を客観的に可視化する指標です。デジタル技術により従来のバイオマーカーでは得られなかったデータを取得・解析し、日常診療および医薬品の研究開発に活用することが期待されています。

「中外製薬「デジタルバイオマーカーへの取り組み(https://www.chugai-pharm.co.jp/profile/digital/digital_biomarkers.html)」から引用

要するに、
・スマートフォンやウェアラブルデバイスから得られるデータ
・24時間またはそれに匹敵するような長時間の計測が可能
・非侵襲的*1

という点が重要な点であると解釈しております。
 また、従来のバイオマーカーよりも〜である!といったものではなく、従来の方法では観測することができなかったようなデータを取得することで、より包括的な状態の観察や分析・評価ができるようになることが素晴らしい点だと思います。

 例えば、デジタルバイオマーカーの代表的な応用例として、高血圧や睡眠時無呼吸などの健康障害があります。これらの健康障害を治療していくには、患者様の行動を詳細に観察できるとその精度を高めることにつながります。そこで、スマートフォンウェアラブルデバイスを応用し、これまで取得することが困難であった「病院にいない時の状態」をデータとして取得することで、それを実現することができるようになりました。

 また、認知症の早期診断のためにテキスト分析やセンサーを用いた歩行解析を応用することで、早期発見・予測し、症状が常態化する前に治療を行うことが可能になってきております[4]。その他にも、認知症やうつ病など、従来診断に数か月から数年かかった病気も、デジタルバイオマーカーの活用により、診断に必要な期間を数時間、数日、時には数分へと短縮することができるようになってきています[4]。そして、このように症状が深刻化する前に早期に治療を行えることは、私たち国民ないしは国のお財布にも優しい、という点も素晴らしい点であります。(治療ってほんまにお金かかりますからねぇ、保険治療も税金なので、タダじゃないですしねぇ...)

 さらにさらに、素晴らしい点としては、これらデジタルバイオマーカーを用いることで、医療リソースの最適な差配や各患者の要医療レベルに合わせた個別化治療をより良いものにできる可能性があることです。

 良いことづくしのように書いてしまいましたが、せっかく取得できた宝の山ようなデータも正しく活用できるシステムや解析技術がないと只の保存しているストレージの無駄遣いです。また、これらのデータは、ウェアラブルデバイスを例に挙げると、これまで病院で取得し、観察してきたようなデータと比べ、ノイズが多く、また取得期間が長いため、扱いが難しいものになっています。これらのデータがデジタルバイオマーカーとして正しく活用されていくように、我々も微力ながら愚直に日々の仕事と向き合っていきたいと思います。

3. 今後の記事に関して

 今回の記事では、デジタルバイオマーカー関してまとめました。
 次回以降は、

・デジタルバイオマーカーを利用した「デジタル・セラピューティクス(治療)」

に関して話を掘り下げて、記述していこうと思います。

 今後も、継続的にこの領域に関してキャッチアップした上で、発信をしていきたいと思います。ご興味を持っていただけたならば、「スキ」していただけると中の人が喜びます。

 弊社㈱TechDoctorではウェアラブルデバイスデータを主軸に人々のメンタルヘルスを計測・可視化、さらには分析していき、より健全な社会にしていくことをモットーに調査・研究・サービス開発を進めております。エンジニア・データサイエンティスト、医学的バックグラウンドを持つ方など多様な人材の採用を実施しております。お気軽にご連絡下さい。

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*1 生体を傷つけないこと


参考文献

[1] Pmda 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 . “【バイオマーカーの定義と種類】” . バイオマーカーについて - PMDA. https://www.pmda.go.jp/files/000155839.pdf , (2021/11/15)
[2] 株式会社 クイック . “バイオマーカー” . バイオマーカーとは | 製薬業界 用語辞典 - Answers . https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/1846/ , (2021/11/15)
[4] Lux Research . “デジタルバイオマーカーとは?” . デジタルバイオマーカーとは? - Lux Research . https://www.luxresearchinc.com/ja/blog-posts/what-are-digital-biomarkers , (2021/11/15)

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