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3億円調達の舞台裏:エンジェル投資家 有安伸宏を20年来の腐れ縁の私が徹底解説

現場向け動画教育プラットフォーム tebikiを提供している弊社では、「3億円のシード資金調達を実施」というプレスリリースを先日発表し、各メディアで大きく取り上げて頂きました。

グロービス・キャピタル・パートナーズ社からの出資後、役員会での充実した議論から、こちらが驚くレベルの日々のサポートまで、事業成長していくために素晴らしいVCに株主になってもらえたと強く感じています。

今回の資金調達では、プレスリリースでも投資家コメントを寄せてもらったエンジェル投資家の有安伸宏が大きな役割を果たしてくれました。本記事では、有安がどういう行動原理を持って、具体的に何をしてくれたのか、ということを詳しく解説したいと思います。

※「エンジェル投資家 有安伸宏って誰?」という人はANGEL PORTをご覧ください。

( 貴山 @tkiyama )

はじめに:有安との出会いとこれまで

もともと大学のゼミの先輩と後輩で、後輩のゼミ発表を見に行ったときに「偉そうに発表してるやつがいるなぁ」が第一印象でした。ものすごい態度がでかかった有安ですが、どういうわけか仲良くなって、一緒にサーフィンいったりしてました。

↓これは有安(左側)が25歳ぐらいの頃。当時ペーパードライバーだった私は、サーフィン帰りは有安が運転する車の中でいつも爆睡してました。

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時は流れて、有安がコーチ・ユナイテッド社(後にCookpad社に売却)を起業してがんばってる頃、私は当時勤めていた三菱商事をやめて起業することになります。

↓私がTechCrunch主催のスタートアップバトル(ピッチコンテスト)に出場したとき。有安も一緒に壇上に上がってたりします。

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その後、起業した会社を事業譲渡して、次なにをやろうかごにょごにょしてたら、いつのまにかコーチ・ユナイテッド社に入社していました。入社後何年かして、有安は辞め、紆余曲折あってCookpad社に吸収合併されることになり、それを機に私は2回目の起業をすることになります。

ここでも腐れ縁は続き、エンジェル投資家としてブイブイ言わせてた有安に色々聞いてる内に出資を受けることになり、その後のVCラウンドで大きなサポートを受けることになりました。

とまあ、こんな感じで有安との関係はかれこれ20年近くなります。今回は、起業家/エンジェル投資家としての表の華やかな顔から、裏側のどうしようもないとことか苦労とか努力をよく知る私が、今回のディールでエンジェル投資家として有安がやったことと、その背景にある考え方を解説したいと思います。

エンジェル投資家 有安の特徴①:起業家ファースト

「自分が起業家だったときにやられて嫌だったことはやらない、やって欲しかったことをやる」というシンプルな基本原則を持ってます。起業家出身者しか持ち得ない視点を持ってて、後述する他の特徴はすべてこの行動原則から来てる。

起業家側と有安の意見が異なるときも、多くのことは正解がないし、全体最適が何より大事だし、結局やるのは起業家だということをよくわかっているので、常に起業家をリスペクトした姿勢をとります。面倒な報告を求めてくることもありません。

まとめると、投資家として親切かつめんどくさくない(←コレ大事)。

エンジェル投資家 有安の特徴②:投資契約書が超シンプル

投資契約書がなんとA4二枚だけ。両面コピーして1枚にできた。
長年の付き合いとはいえ、やはり契約は契約なので一応ちゃんとチェックしようと思ったら3分で読み終わってしまった。

基本的に起業家と交渉する気がなく、起業家側に有利な条項でやるからシンプルになったみたいです。

↓実際の投資契約書。ほぼボカシだけど...

有安投資契約

エンジェル投資家 有安の特徴③:光の速度で返信がくる

何を聞いても返事が本当に早い。理由聞くと「スピードが価値だから!」みたいなこと言うんだけど、実はヒマなんじゃないかと疑ってます。

↓リスティング広告を外注するべきか質問したとき。何を聞いてもそれっぽい答えが返ってくる。

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エンジェル投資家 有安の特徴④:パートタイムCFO

こちらが求めないかぎり普段は全然口出ししてこない有安ですが、次のラウンドに入るときは、ギアチェンジして主体的に強く介入してきます。アプローチすべきVCと担当者、タイミング、プレゼンストーリーなどなど、資金調達の全体設計を手伝ってくれる。立ち位置はまさに「パートタイムCFO」そのものです。
かなりの件数をこなした経験から来るアドバイスは的確で無駄がなく、有安に出資してもらった価値を実感する瞬間でした。

ほとんどの起業家にとって資金調達は初めての体験で、VC側と情報の非対称性が大きいことをよくわかっているので、力強くバックアップしてくれます。

VCラウンドで実際にやってくれたこと①:プレゼンの壁打ち

VCプレゼンまでに、合計6回ミーティングしました。

最初に相談したときに、「6回ミーティングするから」って言われて、「そんなにやる必要ないでしょ。有安とミーティングしてるヒマとかないし。」と思ったけど、ほんとに6回やった。

手書きのラフなプレゼン資料の段階からやって、大きなことから細かなことまで、たくさんの指摘がありました。「そのデータまとめるの面倒なんだけど」「そんなこと聞いてくるのおまえだけでしょ」と思ったんだけど、VCへのプレゼンがはじまると、彼の指摘が正しかったことがわかります。有安と同じ質問が実際とても多かった。

うちの事業の場合は、「デスクレスワーカー向けの動画教育」という多くの投資家には馴染みがない領域だったこともあって、有安からの指摘は「とにかく解像度を上げるべし」でした。

起業家とVCで立ち位置が異なるので、起業家がVC目線を持つのはなかなか難しい。VCから聞かれることを事前に準備できるかでプレゼンパワーは全然違うので、VC目線での指摘をもらえたのはとても助かりました。

↓ミーティングで有安がホワイトボードに書いた図。字が汚くて読めない。。。

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VCラウンドで実際にやってくれたこと②:スーパー秘書

全VCにコンタクトして、アポとってくれました。しかも、こちらがアプローチしたいVCの人への「有安紹介案件」という信頼のお墨付き。

実際に資金調達をやってみた人はよくわかると思いますが、普通は会いたい人に紹介でたどっていくので、自分でやるのは凄まじく大変。CEOの時間が大幅にとられるので、事業成長の打ち手が止まります。

同じVCの中の人でも得意領域もノリも違うし、こちらにとって適切なVCと適切な担当者にアプローチするのは至難の技。なかでもスケジュール調整は高難度で、各VCに同時期にピッチしたいけどうまく設定できることはまずありません。

有安はこれを、流れるような美しい段取りで全部やってくれました。これまで培ってきた人脈とレピュテーションと経験のなせる技。私はカレンダーの空き日程を教えただけです。
もはやパートタイムCFOというより超優秀な秘書。秘書として採用したい。「え、もうアポ全部とりおわったの?マジで?」という感じでした。

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VCラウンドで実際にやってくれたこと③:ピッチに同席

1人でのピッチはやはり心細いもの。特に今回は新型コロナの緊急事態宣言と同時期でした。今でこそコロナをものともせずに投資してるVCがたくさんいらっしゃいますが、あのときは「これはなんかすげーやべーことになるぞ」という空気が充満していて、起業家側も投資家側も一気に守りモードに入った瞬間でした。

「新型コロナの影響」というスライドを急遽追加してのぞんだVCプレゼンに、有安はすべて同席。身内が1人いるというだけでも心が落ち着くし、VC側にとっても有安がいると安心です。
ちなみに、私のときは「サーフィン友達なんですよー」ぐらいの雑な紹介だったんだけど、普段は「なぜ出資したのか、出資時の論点、それがどう解消されたか、時系列で見る起業家と事業の成長の差分」とかを説明するらしい。

資金調達プレゼンがすべてZoomという不慣れな状況でしたが、おかげで全く問題なく進めることができました。

↓普段のオフィスをそのまま見せる私と、全力でおしゃれにする有安。

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さいごに

私と有安は20年近い腐れ縁ですが、彼の基本姿勢はどの投資先でも同じだと思います。
「エンジェル投資家」といっても、人によってスタンスも起業家との関わり方も全然違うし、正解があるわけではありません。
今回の記事が、エンジェル投資家の考え方、行動パターンの一例として、起業家/投資家の皆さんに少しでも役に立ったら嬉しいです。


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