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ミラノスカラ座合唱団コンサート
ミラノスカラ座における聖金曜日の合唱団のコンサートがストリーミング配信されました。音楽がキリストの受難を我がことのように共感することのできる触媒となり、心に染み渡ります。この受難はもちろんコロナ禍と重なりますが、美しい音楽のおかげで悲しみや怒りは昇華され聴く者の心を洗ってくれます。悲劇も多分、同じ効用があるのでしょう。美しく悲しいフィクションは現実の暴力的な災いを回避する力があるのだとしたら、今こ
もっとみるVittorio Grigolo (ヴィットリオ・グリゴーロ) ミラノスカラ座リサイタル
いやー、面白かった!
いきなりアンコール最終曲から書いてしまおう、名付けて「一人三大テノール」のオーソレミーオ!そんなにソの音伸ばさなくても〜、しかもたいがい伸ばしてからのトリルですか!?どんだけ〜?と言いたくなるグリゴーロ節に思わず大笑いしてしまった!
スターテノールとしての自分が大好き、なナルシストぶりが随所にうかがえる音楽作りは、イタリアオペラの殿堂スカラ座で歌うには自由すぎるものがありま
プッチーニ作曲「ジャンニ・スキッキ」より「私のお父さん」
プッチーニ作曲のオペラ「ジャンニ・スキッキ」より、ラウレッタのアリア「私のお父さん」の伴奏動画です。恋人との結婚を父ジャンニ・スキッキに反対されたラウレッタが「愛しいお父さん、もし私の思いが無駄になるなら、ヴェッキオ橋(フィレンツェの有名な観光スポットですね)からアルノ川に飛び込んで死んじゃうわよ!」と啖呵を切るアリアですが、音楽は娘のおねだりを流れるような美しい旋律で盛り上げます。
このアリア、 もっとみる
トスティ「理想の女(ひと)」
伴奏しながら歌のメロディーを弾くのがコレペティトールの仕事のひとつですが、伴奏をアレンジすると原曲のクォリティが再現できない(例えばオクターブ下で和音進行をかろうじて再現する程度になってしまう)という難しさがありました。
でも、メロディー動画を別撮りして重ねれば、伴奏のアレンジすることなく歌のガイドができる!
しかもガイドに合わせて歌ってくださった歌手の方の動画を重ねる際にはメロディー動画の小窓を もっとみる
ドニゼッティ作曲「ランメルモールのルチア」第2幕(または第2部1幕)フィナーレから
ちょっとマニアックですが、ドニゼッティの代表作「ランメルモールのルチア」の中のハイライトの伴奏動画です。主人公ルチアが便りのない恋人エドガルドを諦め、兄の薦める結婚相手アルトゥーロ卿との結婚契約書にサインしてしまいます。しかしその直後、当のエドガルドが現れるという部分です。最後はソリスト5人に合唱も加わって大がかりな重唱となります。ドラマはまだこの先も、ルチアのサインした結婚契約書をエドガルドが見 もっとみる
ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告⑥ 6日目リハ最終日
さあ、ムーティが指揮台に立って、リゴレットの短いけれど衝撃的な序曲が始まった!
トランペットのpp、何という緊張感、そして音楽が生命を持った!
昨日までとは全く別物!違う曲??
ムーティの指揮は変幻自在だがとても分かりやすい。拍というよりはフレーズのアウフタクトを振ってくれる。しかも奏者に命令するのではなく、音がなってから次の拍までの道のりをフォローするゼスチャーになっている。オケは一人ぼっちで放
ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告⑤ 5日目午前
ムーティは語る
若い指揮者たちよ、私の言う通りにエッセンスだけを振ったり必要以上に動かなかったりしたら、君たちはきっとキャリアを築けないだろう。
劇場支配人は客の要望に応えようとオーバアクションでいかにも陶酔していますという振り方の指揮者を喜んで登用する。客は音楽を聴くより、指揮者の動きを見て喜ぶのだ。
劇場では、昔は指揮者がオペラの全ての責任者だった。アバド、ムーティ、カラヤン、クライバー、オ
ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告④ アカデミー4日目
ついに歌手が入ってのオケリハ!
ようやくムーティが振ると思ったらまさかまだ若手を指揮台に上げる。歌手のために心配になる…
3幕の公爵の女心の歌、続いて四重唱。ムーティは歌手が楽譜を無視して勝手に歌うのを許さないので、楽譜通りの歌の素晴らしい掛け合いに感動!
若手の指揮者にとってはこんなに素晴らしい歌手たちでオペラを指揮できることは一生ものの経験!というか楽譜通り歌ってくれる4人で四重唱を振れるのは
ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告③
さて、3日目夜の部はピアニストが入ってムーティの歌手指導だった。
ムーティは、歌手に厳格なまでに楽譜通りを要求する。テノールが五線を超えた高音になるとすぐ楽譜の音価(音の長さ)を無視してのばしたがるのを再三制止。だが楽譜にテヌートの指示があったりオーケストラの伴奏がない場所では、”Fai tenore !” ここはテノールしろ(高音が長くなってもOKの意味)、と自由を強制?する。
2幕のラスト、
ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告② オケリハ3日目
オケだけのリハとしては最後。若い指揮者の指導で1幕、2幕の2巡目、しかしオペラを振る難しさ!どうしても指揮者は拍をとりたがるけど、オペラは言葉と歌が先にあるから、どの拍の重さも言葉によってまちまち、強弱中強弱などという4拍子は存在しません!
どの指揮者も迷宮入りしてタクトがふらふら宙を舞ってしまう。
ムーティは指揮者の不自然さをユーモアたっぷりに真似してみせ、足を上げて踊ったりジャンプしたり、病
ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告① オーケストラリハーサル2日目
私は実はアカデミー2日目から6日までの5日間聴講しました。初日はどうしても行けない用事があったので。
ムーティは何も教えない、と言われていたけれど、このアカデミーでは、4名の30歳前後の若手指揮者に、指揮の仕方を丁寧に教えている。2つ振り、4つ振り、ここは1拍を分けて振る、レチタティーヴォ(語りの部分)は歌のフレーズの続きとしてオケの音を滑り込ませて、など、実に具体的に指示があり、若い指揮者たち
ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」アカデミーへのイントロ
ミラノに留学していた時、スカラ座の演出稽古に何演目か潜入した。劇場入りの前に演出が作られていく過程は、スカラ座の場合2週間くらいだっただろうか。朝10時から昼1時、その後に各自自宅に帰って昼食をとり、2時半から5時半が夕方の練習。
アンサルドという巨大な稽古場には開帳場か既に作られていて、天井は高く舞台セットが丸々乗るようになっている。
ピアニスト2名と副指揮者、そして舞台でキュー出しをする、日本
G.Pucciniオペラ「ラ・ボエーム」より「私が街を歩けば」Quando me'n vo'
G.Puccini : "La Bohème" Aria di Musetta
プッチーニ作曲オペラ「ラ・ボエーム」よりムゼッタのワルツです。フルスコアを見ながら弾いています。ハープのアルペジオや木管のヒューヒューと囃し立てるような音など、色彩豊かなオーケストレーションをピアノで弾くのは限界がありますがやってみました!ご存知の方はぜひ歌ってくださいませ♫
個人的感想文 : ザルツブルク音楽祭 ベートーヴェン交響曲第九番
ザルツブルグ音楽祭のリッカルド・ムーティ指揮、ウィーンフィルのベートーヴェン交響曲第9番を配信で聴きました。長文レポートになりますので悪しからずご了承くださいませm(_ _)m
この第九は、今までに聞いたことのない響きに満ちた世紀の名演でした。コロナ禍の真っ只中の今だからこそこの解釈が成り立ったのはもちろんですが、もしかしたら私たちは今まで平和すぎてベートーヴェンが第九で表現しようとしていたこと