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イタリアオペラアカデミー東京2019

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以前のブログより転載します。 リッカルド・ムーティによるヴェルディのオペラ「リゴレット」のアカデミーの様子を私的にレポートしました。
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記事一覧

ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」アカデミーへのイントロ

ミラノに留学していた時、スカラ座の演出稽古に何演目か潜入した。劇場入りの前に演出が作られていく過程は、スカラ座の場合2週間くらいだっただろうか。朝10時から昼1時、その後に各自自宅に帰って昼食をとり、2時半から5時半が夕方の練習。
アンサルドという巨大な稽古場には開帳場か既に作られていて、天井は高く舞台セットが丸々乗るようになっている。
ピアニスト2名と副指揮者、そして舞台でキュー出しをする、日本

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ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告① オーケストラリハーサル2日目

私は実はアカデミー2日目から6日までの5日間聴講しました。初日はどうしても行けない用事があったので。

ムーティは何も教えない、と言われていたけれど、このアカデミーでは、4名の30歳前後の若手指揮者に、指揮の仕方を丁寧に教えている。2つ振り、4つ振り、ここは1拍を分けて振る、レチタティーヴォ(語りの部分)は歌のフレーズの続きとしてオケの音を滑り込ませて、など、実に具体的に指示があり、若い指揮者たち

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ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告② オケリハ3日目

オケだけのリハとしては最後。若い指揮者の指導で1幕、2幕の2巡目、しかしオペラを振る難しさ!どうしても指揮者は拍をとりたがるけど、オペラは言葉と歌が先にあるから、どの拍の重さも言葉によってまちまち、強弱中強弱などという4拍子は存在しません!
どの指揮者も迷宮入りしてタクトがふらふら宙を舞ってしまう。

ムーティは指揮者の不自然さをユーモアたっぷりに真似してみせ、足を上げて踊ったりジャンプしたり、病

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ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告③

さて、3日目夜の部はピアニストが入ってムーティの歌手指導だった。
ムーティは、歌手に厳格なまでに楽譜通りを要求する。テノールが五線を超えた高音になるとすぐ楽譜の音価(音の長さ)を無視してのばしたがるのを再三制止。だが楽譜にテヌートの指示があったりオーケストラの伴奏がない場所では、”Fai tenore !” ここはテノールしろ(高音が長くなってもOKの意味)、と自由を強制?する。

2幕のラスト、

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ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告④ アカデミー4日目

ついに歌手が入ってのオケリハ!
ようやくムーティが振ると思ったらまさかまだ若手を指揮台に上げる。歌手のために心配になる…
3幕の公爵の女心の歌、続いて四重唱。ムーティは歌手が楽譜を無視して勝手に歌うのを許さないので、楽譜通りの歌の素晴らしい掛け合いに感動!
若手の指揮者にとってはこんなに素晴らしい歌手たちでオペラを指揮できることは一生ものの経験!というか楽譜通り歌ってくれる4人で四重唱を振れるのは

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ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告⑤ 5日目午前

ムーティは語る
若い指揮者たちよ、私の言う通りにエッセンスだけを振ったり必要以上に動かなかったりしたら、君たちはきっとキャリアを築けないだろう。
劇場支配人は客の要望に応えようとオーバアクションでいかにも陶酔していますという振り方の指揮者を喜んで登用する。客は音楽を聴くより、指揮者の動きを見て喜ぶのだ。

劇場では、昔は指揮者がオペラの全ての責任者だった。アバド、ムーティ、カラヤン、クライバー、オ

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ムーティのイタリアオペラアカデミー2019「リゴレット」報告⑥ 6日目リハ最終日

さあ、ムーティが指揮台に立って、リゴレットの短いけれど衝撃的な序曲が始まった!
トランペットのpp、何という緊張感、そして音楽が生命を持った!
昨日までとは全く別物!違う曲??
ムーティの指揮は変幻自在だがとても分かりやすい。拍というよりはフレーズのアウフタクトを振ってくれる。しかも奏者に命令するのではなく、音がなってから次の拍までの道のりをフォローするゼスチャーになっている。オケは一人ぼっちで放

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