見出し画像

酒好きになり店を出したら人に騙され人に救われた話②

2007年4月
嘉松は福岡大学のキャンパスにいた。

初めての1人暮らし
高校の友人も誰が福大に来ているのかよくわからない。

入学式で福岡大学に向かう中
虚無感は未だに続いていた。

出身校である長崎東高等学校、長崎ではそこそこの進学校。
”国公立に行くことが正義”
当時はそのような考えしかなかったからだ。
福大にいる自分に嫌悪感すら抱いていた。

何もやる気が起きないまま入学式から1週間が経った頃だ。
地元長崎から友達が福岡に遊びに来た。

この時の選択肢が少しでもずれていたら
どれかひとつがズレていたら人生は大きく変わってだろう。

目的地、車を停める場所、歩いた道、時間
全てがピッタリ嵌った出会いだった。


「福岡といえば天神じゃない?」

そんな友人の一言がこの出会いを作ったのだった。

長崎とは段違いのきらびやかな街並みがとても眩しい
長崎を離れた寂しさだけだった心から
都会に来たんだというワクワク感が少しだけ入り混じった。

「とりあえず、中心部に行ってみるか」
そんな会話をしつつ天神を北に向かった


すると、いきなり大都会の真ん中で
発せられた大声に驚いた

「いらっしゃいませ〜〜!!!」

とんでもなくデカイ声だった。
声の主は屋台の店員さんだった。
あまりの声の大きさに笑ってしまった。
声の主に目線を移すと
まだ少し肌寒い中での半袖のシャツ

”福岡の屋台ってこんな元気がいいんだなぁ”
当時の落ち込んでいる自分とは対称的な姿に
少し羨望の目で見ていたのかもしれない。

今思うと、その屋台だけ飛び抜けてうるさかった。
それが「屋台屋ぴょんきち」との最初の出会いだった

最初は素通りしたものの
”声”に惹かれていつの間にか屋台の前に戻ってきていた。

「ぼったくられるんじゃないか?」
そんな不安も入り交じりながらおそるおそる屋台の中へ足を踏み入れた

まだ少し肌寒い時期にも関わらず
屋台の中は暖かさで満ちていた

「お兄さん、福岡の人?」
「いや、長崎から出てきたばっかりなんですよ…」
いきなり隣のお客さんから声をかけられた

だいぶ驚いたが、見ず知らずの人から
福岡の観光スポットなどを聞くことができて
とてもワクワクした。

何を頼もうか悩んでいると
店員さんが優しく注文を聞いてくれた

半袖のTシャツ、体格も良くて、いかついのに丁寧な接客
そんなギャップが妙に面白かった。

なにより、受験失敗で落ち込んでいた私にとって
久々楽しいと思えた瞬間だった。

屋台で元気をもらったあと、
私はひとつの答えを出した。

「どうせ、勉強で勝てないなら、アルバイトをしっかりやってみよう!」

屋台での人との出会いが私の
これからの人生を大きく変えたのだった。



この記事が参加している募集

自己紹介

最後まで読んでいただきありがとうございました。記事が気に入ったらシェアやいいねをしてもらえると嬉しいです。