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【TEALABO channel_22】とりあえず、やってみる。世代を越え、明るい未来へ挑戦する精神 -松山茶生産組合 松山尚征さん-

鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

第22回目は、『松山茶生産組合』(以下:組合)組合員の松山尚征さんにお話をお伺いしました。

外の世界に触れること

ご実家は農家としてお茶と焼酎用の芋等を栽培されているという尚征さん。

知覧町の松山地区で生まれ育ち、高校卒業後は鹿児島県立農業大学校(以下:農大)へ進学されました。

高校まで部活動に熱中し、家業に関わることも少なかったそうです。

実家に茶工場があるわけではなく、組合に所属し、共同茶工場にて作業されていたことも理由の1つだといいます。

「農大へ進学するまでは肥料を蒔いたり、バロンを被せたりといった簡単な作業しか手伝っていなかったので、お茶に関する知識はほとんどありませんでした。」

松山茶生産組合 松山尚征さん

農大では同期の熱量に戸惑いを感じたこともあったのだとか。

私は家業を継ぐ前提で農大へ進学したわけではなかったので、想いが強い同期と話していると、知識や熱量の違いを痛感しました。でも、ここで一緒に過ごした同期や出会った茶業関係者との繋がりは今でも活きています。わからないことがあれば連絡を取り合って相談しています。」

農大を卒業後は鹿児島県茶市場(以下:茶市場)へ。
1年間、研修生としてお茶について現場で学んだ理由を教えてくれました。

一回外の世界に触れてみようと思ったんです。ズラッと並んだ生産者のお茶を見ているうちに、次第に興味を持つようになっていきました。」

自分から動くことの大切さ

研修期間の終了後は、農協へ指導員として就職します。

多くの茶農家と接しながら仕事をする日々。
職場の先輩に聞いたり、自分なりに調べたりすることで知見を深めていきました。

「お茶農家の皆さんは忙しくて、茶市場に行く時間がないのが現状。それで、私が代わりに市場へ毎日行って情報を仕入れてくることにしたんです。市況は毎日変化します。技術で及ばないなら、真面目に毎日情報を集めて提供する。それが僕なりにできることではないかと考えました。」

近くの小学校でお茶淹れ教室の開催や催事での販売等、消費者とも触れ合う機会もあったといいます。

その時に嬉しかったのは“消費者の声を直接聞けた”ことでした。

「自分たちで仕上げたお茶を試飲してもらい「美味しい」とお声をいただき、商品を買っていただいた時の喜びは今でも忘れられません。」

「その時間は非常に面白いと感じました。その感覚って、その瞬間にしか経験できないものだと思うんです。」

「今でもですが、自分から動かないと何もない。周辺の若い農家さんと、もっと勉強をする機会を増やなきゃいけない。そう思っているところです。」

安心感のある人たちに囲まれて

農協にて7年勤務し、その後は組合に所属する形で就農。

就農された背景はお父さんの年齢を考慮してのことでした。

農家として初めて従事する緊張もあったといいますが、
それ以上に組合で働くことへの安心感が大きかったそうです。

「今の組合長もですが、皆さん、私が小さい頃から知っている方ばかりだったので不安なく、組合に入ることができました。」

「実家の芋の栽培の手伝いもしています。父の体力面の心配もありますが、妻や母の協力もあって、元気に芋づくりができています。」

松山茶生産組合 正面

就農後、苦労されたことについて尋ねました。

「共同工場なので、色々な生産者さんのお茶を混ぜて作業を行います。整枝(※)という作業があるのですが、それが一番緊張しました。」

※植栽された樹木や草花などを、その目的や機能にかなうような姿や形にすること

「切断する芽の高さの判断を誤ってしまうと、お茶の価値が下がってしまいます。不安になり、何度も先輩に「これでいいですか?」と確認しました。これは、今もですが、疑問に感じたら今しか聞けないことので、どんどん聞くようにしています。

とりあえず、やってみる

取材途中、組合長の若松さんが顔を出してくださいました。

ここ8年程、組合として大麦の栽培に力を入れており
それが従業員の年間雇用にも繋がっています。

大麦栽培に至った背景も含め、少しお話してくださいました。

とりあえず、やってみようか」が始まりでした。色々な意見もありましたし、失敗もしました。試行錯誤を繰り返し、組合員にとって、ちゃんと利益になるような仕組みを作っていきました。その判断が結果として、未来に良い結果として直結したと思っています。従業員として若い方を年間雇用できているのは大きいです。

退室される際、「厳しい時代だけど、若い人たちがどんどん帰ってくるようになればいいんだけどね」と尚征さんに視線を送りながら口にされていたのが印象的でした。

松山茶生産組合 組合長 若松浩さん

とりあえず、やってみる。これは、この組合に入ってから先輩たちに一番教わったことです。」

若松さんの退室後、力強くそのように話されました。

「その教えがあったからこそ、気持ちが楽でしたし、やりたいようにさせてもらえたんです。」

「組合に入って7年経ちますが、最初の頃に比べるとできることも大分増えてきました。」

2~3年以内を目標に、先輩たちに心の底から安心して任せてもらえるようになりたいです。」

「そのために、その場しのぎのことはせず、わからない点はしっかり聞いて調べて、1つ1つ身につけていこうと思います。」

みんなで挑戦していく

どの産業もですが、人手が減り、農業であれば放棄地が増えてきている時代。

茶業も同様で、一人当たりの作業できる面積に限界があります。

そんな時代背景を鑑み、尚征さんは若い世代でチームをつくり、茶工場を担う上の世代にヒアリングを行っているそうです。

内容は現在栽培している茶畑の用途について。

それらを踏まえて、自分たちなりの考えを整理している段階といいます。

「まずは情報を内部から集めているところです。整理することで、今後の戦略が立てられると思っていて。」

「これから産地にとって厳しい時代がやってきます。人手が足りない状況に対して、どう明るい未来へアプローチしていけるか。その土台になれたら嬉しいです。

組合で玉露を栽培している茶畑

“今までは組合の先輩たちが土台をつくってきてくれた。だから、次の土台は自分たちの手でつくっていきたい”

そんな想いが今の動きに根底にあると話す尚征さん。

「年齢的に、この先10年ちょっとで先輩たちがいなくなる可能性が高いです。それまでにやらないといけないことがたくさんあります。」

「若い世代チームのみんながいるので、一緒に先輩たちと色々と話し合っていきたいです。」

ありがたいことに先輩たちは柔軟な方ばかりです。なので、若い自分たちだけじゃない。世代関係なく、みんなで挑戦していけるこれからが楽しみです。

柔軟な先輩たちに囲まれた環境で茶業をしてきたからこそ
培われた“とりあえず、やってみよう”精神。

10年ちょっとしたら
そんな先輩たちもいなくなるかもしれない。

でも、その培ってきた精神のもとで
今一緒に向き合い、知覧茶の明るい未来へ着実に進まれようとしています。

世代を越えて共に挑戦し続ける先に
次へとつながる土台が生まれ
さらに、その次の世代が何かをつくっていくのではないか。

そんな期待を感じさせる時間でした。

【プロフィール】
松山尚征(まつやまなおゆき)
1987年南九州市知覧町生まれ
地元の高校を卒業後、鹿児島県立農業大学へ進学。地元企業を退社後、2016年に就農。松山茶生産組合の組合員として自園の管理、生産組合の製造、経営に携わる。

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