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4.3.2. 解釈 (2) 「伝統」は可変的である

伝承と「伝統」の使い分け

前のセクションでの,「伝統」の上に「自分の」「石を積む」という発言は,「伝統」に自分の手を加えてよいという発想に基づいている。

少なくとも「茶道団体」の代表者や主宰者は,茶道教室で習った内容に変更を加えていい,という大前提を共有している。

大輔さんは「伝統と伝承は違う」と前置きする。

伝承「そのままの昔の姿を続けていく」こと,「伝統」は「根幹にある精神が変わらない限りは,時代に合わせて変化」すべきものと定義していた。


「伝統」は変わらなければならない

茶道には伝承と「伝統」の両方の要素があると述べつつも,「あくまで今の茶道は伝統でしかない」と断言する。
時代に合わせて茶道が変化した例として,裏千家が立礼式(テーブルと椅子を用いた点前)など,新しい点前を創り出したこと挙げていた。

つまり大輔さんは,「伝承」と「伝統」という二つの言葉を使い分けることで,「伝統」という言葉の持ちうる「古いものに固執する」というイメージを「伝承」という言葉に移し替えていた

その上で,茶道は「伝統」として変化していかなければいけない,という論の運び方である。


「伝承を担う人」との差異

「伝承を担う人」は「昔の姿」を変化させることができないため「茶道団体」のような活動はできないが,「伝統を担う僕ら(「茶道団体」)」は時代に合わせた実験的な試みができる,と大輔さんは整理する。

伝承を担う側と「茶道団体」の間で,「役割分担」が行われているということだ。(詳細は4.5.2.参照)


むしろ「伝統」を担っている

本稿は第2章の前衛性の議論から始まり,第4章前半で示した彼らの「お茶」がどのように「茶道」であるかを議論してきた。

しかしインフォーマントはむしろ,自身が「伝統」を担う側に立っていると解釈している。
「完全に保守(派)です」と自称するインフォーマントもいたほどだ。

これは彼ら自身の「伝統」や「保守」の定義ありきではあるが,複数のインフォーマントが「伝統」を担う側であるという意識を持っていたことを付記しておく。


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