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【1話完結小説】見えてるくせに
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ここに載せるためだけにせこせこ
自分で描いた素人イラストです。
誰得…?(笑)
「ねぇ、私のこと見えてるんでしょ」
会社帰り、駅前の雑踏で血塗れの女が話しかけてきた。女の体は半分透けている。明らかにこの世の者ではない。
見てはいけない、答えてはいけない…。
目線をそらし無視を決め込む僕に、女はしつこく付き纏う。
「見えてるくせに!見えてるくせに!返事くらいしなさいよ!」
女の声は段々ヒステリックに大きくなっていった。僕は「早く消えてくれ」と祈りながらひたすら自分のつま先と地面を見つめ続けた。一分一秒がとてつもなく長く感じる。
見てはいけない、答えてはいけない…。
「…お前はいつもそうやって全てから逃げてるから負け組なんだよ!一生目をそらし続けて損してろ!」
急に女は冷ややかな声で吐き捨てるように言って、正面から歩いてくる若い男の方へ駆け寄った。
「ねぇ、私のこと見えてるんでしょ!」
若い男は一瞬驚いた顔をしたが、やがて笑顔になり血塗れの女と楽しげに話し始めた。そうして意気投合した様子の二人は、やがて連れ立って雑踏の中に消えて行った。
怪異の脅威を免れたはずなのに、なぜか僕の心は酷く落ち着かなかった。もしもあの女の呼びかけに答えていたら、このうだつの上がらない人生の何かが変わったのだろうか。答えはもう永遠に分からない。一人とぼとぼと、いつもと変わらぬ家路へついた。
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