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【1話完結小説】アルコール噴霧器

会社の玄関に人感センサーのアルコール噴霧器がある。それが最近、誰も居なくてもプシュと音を響かせアルコールを吹き出す時があるのだ。

 同僚達は「外国製の安いヤツ買ったから誤作動だな」と笑って話していたが、私には一つ気になる事があった。誤作動するのは大体いつも火曜の昼頃。最近全く姿を見せなくなった移動販売のパン屋のおばさんが来ていた時間帯だ。

 火曜の昼頃、アルコール噴霧器は誰もいない空間に2回アルコールを撒き散らす。たぶんそれは、おばさんが来た時と帰る時の2回。しかし今日は昼を過ぎていつまで経っても2回目のプシュが聞こえない。心なしか事務所の中にはパンの甘い香りが漂っている。お願いだから早く帰って…。

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