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15秒で読める小説

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15秒で読める!140字創作小説
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#超短編小説

【140字小説】母の願い

【140字小説】母の願い

雲を見ながら晴翔が言う。
「ママ、お空にクジラが浮いてるよ。あ、あっちはドーナツだ!」
我が子の無邪気な様子が微笑ましくて私は幸せな気持ちになる。ずっとこのまま健やかに育って欲しい。
クジラ雲の手前に浮かぶ首なし女や、ドーナツの方向の樹上にいる異形なんて、どうかずっと見えないままで_。

【140字小説】公園にて

【140字小説】公園にて

幼児は行動が読めないから怖い。
幼児連れで公園に来てるママ達は、我が子よりお喋りやスマホに夢中だからもっと怖い。
そんな訳で私は今日、ブランコを漕いでいる時、急に飛び出してきた幼児に驚き落下した。
でも一番怖かったのは、その時間その公園に幼児などいなかったと後で聞かされた事だ。

【140字小説】花の家

【140字小説】花の家

「趣味はガーデニングです」と微笑みながら庭中に花を植えている。
花は鎧だ。私のこの暗い性格を覆い隠す。家族仲が冷え切って全然上手くいってない事も隠す。
全部隠して、素敵な花が咲き誇る素敵な家には素敵な家族が住んでいるのだと思わせる。
勿論、庭の1番奥に埋めた夫の死体も隠し通す。

【140字小説】どうとでもなるよ、演技だもの

【140字小説】どうとでもなるよ、演技だもの

ねぇ知ってる?この世は舞台で、君は名優なんだ。
毎日理不尽なイジりを受けてもヘラヘラ笑うその演技、最高だね。
でもそろそろ物語を展開させようか。憎いあいつのイジりを冷めた目で受け流し、正論で鼻っ柱をへし折ろう。
きっと観客は拍手喝采、いいねの嵐だぜ。さぁ魅せてくれよ、主人公!

【140字小説】先輩の範囲

【140字小説】先輩の範囲

「俺の先輩達、誰かしら毎年…いや、毎月殺人とか事故とか起こすんだよな」
高校で初めて友達になったAが、悲しげに言った。
「マジ!?お前どこ中よ?そんなに荒れた中学あったっけ?」
僕が驚いて問うと、
「いや、中学じゃなく人生の先輩方な」
TVで流れるニュースを見ながらAは言った。

【140字小説】暗い家

【140字小説】暗い家

住宅街を散歩していると、たまにやたら暗く感じる家がある。晴れた日でもそこだけ不思議と暗いのだ。
何が違うのだろう。庭木?外壁の色?住人のオーラ?ずっと考えているけれど分からない。
そうして今日もまたどこよりも暗い我が家に帰り着いてしまった。ずっと考えているのに、分からないんだ。

【140字小説】オチのない話

【140字小説】オチのない話

髪の毛を切った。ただそれだけなのに気分が高揚する。
足取りも軽く家路を急いでいると
「あ、髪切った?小学生みたい、アハッ」
急に近所のママ友に声をかけられ、気持ちが落下する。
落下
落下
落下
…浮上!
「そうなんよ、若返っちゃった★」
こんなことではオチなくなった今日この頃。

【140字小説】凄いんだか凄くないんだか

【140字小説】凄いんだか凄くないんだか

「お前さん死相が出ておるぞ」
休日の雑踏でふいに声を掛けられた。振り返ると、胡散臭い老婆がニタニタと俺を見上げている。
「死にたくなければこれを3千円で買え_」
俺は札を差し出す老婆から逃げる様に立ち去ったが、内心かなりビビっていた。
なんであの婆さん死んでる俺が見えるんだ…⁉︎

【140字小説】陰謀論

【140字小説】陰謀論

科学の進歩は凄まじい。
Bluetoothのワイヤレスイヤホンはやがて必要なくなるだろう。
近々、脳波判別機能搭載スマホが登場。貴方の脳波を認識しダイレクトにペアリング可能となる。イヤホン無しで脳内に音楽が流れ込むのだ。
…便利すぎて怖い?怖くないし安全だし我々は何も企んでいませんよ。

【140字小説】リーマンの呟き-ハロウィン編-

【140字小説】リーマンの呟き-ハロウィン編-

「ジャックオランタン」なんて単語、つい数年前まで謎の呪文の様に感じるだけだったが。今となっては「ああ、あのカボチャをくり抜いたハロウィンの飾りか」と即理解できるようになった。慣れって怖いな。
そんな風に俺達は、有無を言わさず始まった「インボイス制度」にもすぐ慣らされていくんだろう。