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2021年6月の記事一覧

 【140字小説】何のために生まれてpart2

【140字小説】何のために生まれてpart2

「待っててくれ、母さん!立派な男になって母さんを絶対助けるから…!」

俺はそんな強い思いを胸に、日々修行に励んだ。イメトレで作れそうなレシピが段々増えていく。塩っぱい涙は隠し味。

__そして今日、俺は台所という戦場に立つ。
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 【140字小説】何のために生まれて

【140字小説】何のために生まれて

「離せ!おっ、俺は!ご飯の準備なんかする為に生まれてきたんじゃねぇぇ!!」
そんな絶叫を残して、母さんはアイツらに引きずられリビングから消えて行った。

___暫くして台所からはカレーの良い匂いが漂い始めた。
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 【140字小説】蜜の味

【140字小説】蜜の味

この蜂蜜少しも甘くない。路地裏のしょぼい店で買ったからハズレね。

_隣のタロちゃん有名私学の受験落ちたんですって。
_タロちゃんのご両親喧嘩ばかりみたいよ。

最近蜂蜜を食べたらトロミが増しててすっごく美味しいの。他人の不幸で熟成するタイプの蜜かしらね。
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 【140字小説】はないちもんめ

【140字小説】はないちもんめ

花一匁とかいう、子供心にトラウマや猜疑心を植え付けるあの遊び。まだ存在しているのだろうか。

手応えの無い入社試験帰りにふと思う。

「あの子が欲しい」と選ばれない日々。でも花一匁よりマシかもね。私がいらない子だって事、傍目には分からないのだから。
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 【140字小説】ただのデブと違う

【140字小説】ただのデブと違う

私の1番奥底に暗闇色の毛皮を纏った獣が棲む。血走った眼で恐怖や不幸や理不尽を求め忙しなく蠢く。それは日々奥から表層へと近付いて来る。
でも大丈夫。
決して表へ出さぬよう死ぬ気で食べて、脂肪の結界を張っている。
今日も腹の中でグルグル恨めしそうな唸り声。
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 【140字小説】ベランダ

【140字小説】ベランダ

 朝、カーテンを開けるとベランダに雪だるまがいた。仕事に遅れそうだったので無視して出かけた。
 帰ってきたら雪だるまはベランダで倒れていた。カーテンを閉めて、見なかったことにした。
 明日には溶けてなくなってますように。お祈りをして、暖かい布団で眠った。
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 【140字小説】振った後輩がくれた義理チョコは死の香り

【140字小説】振った後輩がくれた義理チョコは死の香り

「先輩、こないだフラれちゃったけど…これ、義理チョコなんで安心して受け取って下さい。彼女さんとのバレンタイン、楽しんで下さいね♡」

そう言ってバイトの後輩がくれたチョコ。
食べたら苦しくなってきた。

楽しんで下さいね
楽シンデクダサイネ
楽死ん…
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 【140字小説】誕生日

【140字小説】誕生日

誕生日。何か特別な事が起こりそうな日。

…でも実際は平凡な一日が過ぎるだけ。

会社の人は私の誕生日など知らぬのだから仕方ない。
昼に母から短いお祝いメールだけ届いた。
帰り道、自分の為にコンビニスイーツを奮発。

「あ!」

お会計が777円だった。それだけの日。
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 【140字小説】相対評価奇譚

【140字小説】相対評価奇譚

常に失敗したという感覚で生きていた。
選んだ職、選んだ伴侶、昨日の雑談でのあの発言…。
もっと違う選択が出来たんじゃないか?

そんな俺も最期の時を迎えた。
脳裏に神様が現れ、
「ここまでよく頑張った、90点!」

…ああ、俺の人生って結構イケてる方だったんだ。
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 【140字小説】お見合い奇譚

【140字小説】お見合い奇譚

義理で行ったお見合い。
喫茶店でお相手の彼は終始私の顔を見ず手元のコーヒーカップを弄ぶ。
こんなシャイだから恋愛ができないんだろう。見た目もそこそこなのに勿体ない。
「たまには顔見て話しません?」
そう切り出すと
「すみません、あなたの肩にいる鬼が怖くて…」
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 【140字小説】遠き日

【140字小説】遠き日

高架橋から電車を見下ろす。
息子が赤ん坊の時、大事に抱っこ紐で抱えてよく乗ったな。まだ喋れない君に車窓から見える川や夕陽やビルを教えて。急に泣き出す君に冷汗をかいて。
今、君は毎日部屋に篭って何を思う?窓の外、見てるかな?
涙が溢れ電車が滲んだ。
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 【140字小説】四角世界

【140字小説】四角世界

運転中。
前を行く四角い軽には角刈りの若者が2人乗っている。兄弟だろうか?
暫く角刈り兄弟の後を走る。
いつのまにか私の握るハンドルが四角くなっていた。急にガタガタし始める…きっとタイヤも四角くなったのだろう。
助手席の角刈りがこちらを振り向き笑っている。
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 【140字小説】節分哀歌

【140字小説】節分哀歌

「鬼は〜外!福は〜内!」
そんな元気な声が町中に響いていた頃が懐かしい。
年々静かになっていくな…と窓からそっと覗き見れば、人間達は一点を見つめ無言でただ太巻を喰らっていた。

最後まで希望を捨てずに残っていた鬼と福は、今年とうとう町を去る事を決めた。
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【140字小説】山奥にて

「何してるの?」

山奥で迷い彷徨っていると女に声をかけられた。

「麓に帰る道を探してる」

「なら真っ直ぐ行って突き当たりの小川沿いに下るといいよ」

俺は礼を言って、一緒に下山しようと誘いかけたが、女の下半身が岩に埋もれている事に気付き、足早にその場を離れた。
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