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ごご茶
2021年6月30日 07:45
「待っててくれ、母さん!立派な男になって母さんを絶対助けるから…!」俺はそんな強い思いを胸に、日々修行に励んだ。イメトレで作れそうなレシピが段々増えていく。塩っぱい涙は隠し味。__そして今日、俺は台所という戦場に立つ。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月30日 07:39
「離せ!おっ、俺は!ご飯の準備なんかする為に生まれてきたんじゃねぇぇ!!」そんな絶叫を残して、母さんはアイツらに引きずられリビングから消えて行った。___暫くして台所からはカレーの良い匂いが漂い始めた。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月30日 07:35
この蜂蜜少しも甘くない。路地裏のしょぼい店で買ったからハズレね。_隣のタロちゃん有名私学の受験落ちたんですって。_タロちゃんのご両親喧嘩ばかりみたいよ。最近蜂蜜を食べたらトロミが増しててすっごく美味しいの。他人の不幸で熟成するタイプの蜜かしらね。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月30日 07:31
花一匁とかいう、子供心にトラウマや猜疑心を植え付けるあの遊び。まだ存在しているのだろうか。手応えの無い入社試験帰りにふと思う。「あの子が欲しい」と選ばれない日々。でも花一匁よりマシかもね。私がいらない子だって事、傍目には分からないのだから。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月30日 07:29
私の1番奥底に暗闇色の毛皮を纏った獣が棲む。血走った眼で恐怖や不幸や理不尽を求め忙しなく蠢く。それは日々奥から表層へと近付いて来る。でも大丈夫。決して表へ出さぬよう死ぬ気で食べて、脂肪の結界を張っている。今日も腹の中でグルグル恨めしそうな唸り声。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月30日 07:26
朝、カーテンを開けるとベランダに雪だるまがいた。仕事に遅れそうだったので無視して出かけた。 帰ってきたら雪だるまはベランダで倒れていた。カーテンを閉めて、見なかったことにした。 明日には溶けてなくなってますように。お祈りをして、暖かい布団で眠った。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月24日 08:04
「先輩、こないだフラれちゃったけど…これ、義理チョコなんで安心して受け取って下さい。彼女さんとのバレンタイン、楽しんで下さいね♡」そう言ってバイトの後輩がくれたチョコ。食べたら苦しくなってきた。楽しんで下さいね楽シンデクダサイネ楽死ん… #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月24日 07:59
誕生日。何か特別な事が起こりそうな日。…でも実際は平凡な一日が過ぎるだけ。会社の人は私の誕生日など知らぬのだから仕方ない。昼に母から短いお祝いメールだけ届いた。帰り道、自分の為にコンビニスイーツを奮発。「あ!」お会計が777円だった。それだけの日。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月24日 07:56
常に失敗したという感覚で生きていた。選んだ職、選んだ伴侶、昨日の雑談でのあの発言…。もっと違う選択が出来たんじゃないか?そんな俺も最期の時を迎えた。脳裏に神様が現れ、「ここまでよく頑張った、90点!」…ああ、俺の人生って結構イケてる方だったんだ。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月24日 07:53
義理で行ったお見合い。喫茶店でお相手の彼は終始私の顔を見ず手元のコーヒーカップを弄ぶ。こんなシャイだから恋愛ができないんだろう。見た目もそこそこなのに勿体ない。「たまには顔見て話しません?」そう切り出すと「すみません、あなたの肩にいる鬼が怖くて…」 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月17日 08:03
高架橋から電車を見下ろす。息子が赤ん坊の時、大事に抱っこ紐で抱えてよく乗ったな。まだ喋れない君に車窓から見える川や夕陽やビルを教えて。急に泣き出す君に冷汗をかいて。今、君は毎日部屋に篭って何を思う?窓の外、見てるかな?涙が溢れ電車が滲んだ。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月17日 07:59
運転中。前を行く四角い軽には角刈りの若者が2人乗っている。兄弟だろうか?暫く角刈り兄弟の後を走る。いつのまにか私の握るハンドルが四角くなっていた。急にガタガタし始める…きっとタイヤも四角くなったのだろう。助手席の角刈りがこちらを振り向き笑っている。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月17日 07:54
「鬼は〜外!福は〜内!」そんな元気な声が町中に響いていた頃が懐かしい。年々静かになっていくな…と窓からそっと覗き見れば、人間達は一点を見つめ無言でただ太巻を喰らっていた。最後まで希望を捨てずに残っていた鬼と福は、今年とうとう町を去る事を決めた。 #140字小説 #短編 #創作 #小説 #スキしてみて
2021年6月14日 07:56
「何してるの?」山奥で迷い彷徨っていると女に声をかけられた。「麓に帰る道を探してる」「なら真っ直ぐ行って突き当たりの小川沿いに下るといいよ」俺は礼を言って、一緒に下山しようと誘いかけたが、女の下半身が岩に埋もれている事に気付き、足早にその場を離れた。 #140字小説 #ホラー #創作 #小説 #スキしてみて