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RYUITI.K
2017年11月17日 00:48
悲しくて、悲しくて。どうしようもなく悲しくて、わたしはその悲しさを抱いたまま、白く冷たいモノが辺りを覆いつくす中、ゆっくりと歩を進めて、ひとつの場所を目指している。【ザクザク】【ザクザク】ひとつ、また一つと。歩を進める度にそんな音が身体に響いてくる。ああ、悲しい。ああ、悲しい。眼の前が何故だか歪んで、辺りの白さと同じように白くなっていく気がした。悲しい――。
2017年11月18日 19:58
らしくないと思いながら。寒空の下、僕は黙々と歩き続けている。張り詰めていた気持ちを、何気ないように呟いて、吐き出して。その後、結局――彼女の表情をみることをしないまま、家に帰ることも無く適当な電車を適当に乗り継いで。当てもなく進んでいたはずの僕は。気が付いた。眼の前に広がる森林と積もり始めた雪を見て、その先からゆっくりと水の音が聴こえて。僕はただ、しずみたくなっ
2017年11月19日 00:19
やりきれない苦悩を観た。現実的ではない病。幻想的というにはとても残酷なその病。愛するモノ達の気持ちが深くなるほどに、互いの、もしくは片方の命を蝕んでいく病。その病がどのようにして発現するのか、血液を調べたところで、身体を観たところで、なんの成果も得られなかった。ある時、少し前からの記憶が曖昧だという女性が来た。その女性は二十代半ばで身体的にもなんら異常はなく
2017年11月21日 00:46
俯いていた顔をあげて。うっとおしいくらい紅葉の雨を、腕で振り払い続けてため息を吐いた。暖かくもないしむしろ寒さが増してくる夕暮れ。紅葉が揺れ流れる、本当なら綺麗だと感じられるだろうこの路を、独りで歩いている事にまた、ため息が出て。待ち合わせからもう四時間も過ぎているという事を理解しながら、黒の腕時計を重い気持ちでチラリと見返す。「はあ」ため息が出た。結局、来
2017年12月27日 00:59
いつまでも――いつまでも観ていたいと思った。陽にきらめく彼女の姿を、華に揺れる彼女の姿を。砂にはしゃぐ彼女の姿を。雪に驚く彼女の姿を。あの日と同じように――。僕と彼女が初めてあったのは、夕陽が妙に切なく感じた日だった。朝から肌寒く、着込んだうえにカイロを何枚も貼り付けて外に出た。家から長い階段を下ると耳には波音が、鼻には潮の匂いがやってきて、この二つはどれだけ季
2017年12月27日 17:03
とてつもないモノを観てしまった時、感じてしまった時。キミはいったい何を思うだろうか。キミはいったい何が出来るだろうか。ある寒々しい風が地を包んだ日、唐突に現れたとてつもなく大きな黒い虹は大勢の生き物の視界に入り、その大勢の生き物たちの心を、身体を魅了した。記憶の消失という贈り物を与えたままで。在るモノは出逢い在るモノは苦悩し、あるものは辿り着こうとする。さて、終わり
2017年12月30日 21:13
数多に分かれた記憶を観た。ワタシにしみこんだ感情を見た。痛みがしみるほど流れ込んでくる。悲しみに霞むほど見えてくる。怒りに満ちるほど歪んでくる。喜びに染まるほど咲いてくる。これが、この場の生物の路か。ワタシは小さなカタチを得てそれらを理解した。全てが同一でないからこそ、生まれ広がり紡がれるその濃いモノに。ワタシは強く浸りたかった。そう思ってしまう程に楽し