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俯いていた顔をあげて。

うっとおしいくらい紅葉の雨を、

腕で振り払い続けてため息を吐いた。

暖かくもないしむしろ寒さが増してくる夕暮れ。

紅葉が揺れ流れる、本当なら綺麗だと感じられるだろうこの路を、

独りで歩いている事にまた、ため息が出て。

待ち合わせからもう四時間も過ぎているという事を理解しながら、

黒の腕時計を重い気持ちでチラリと見返す。

「はあ」

ため息が出た。

結局、来なかったか……。

俺には縁のない女性だったと思って帰るとするかね。

紅葉満ちる綺麗なこの場所を待ち合わせにしたのが、

去り際、余計に虚しく感じてしまう。

来たときよりも早く、鮮やかな路を進むのは、

こんなにも呆気ないことなのか。

もうすぐ、もうすぐ。

紅葉でいっぱいの綺麗なこの場所から、

完全に抜け出てしまう。

「まるで――まるで、俺が落ち葉みたいだな呆気ない。」


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