R
らしくないと思いながら。
寒空の下、僕は黙々と歩き続けている。
張り詰めていた気持ちを、何気ないように呟いて、吐き出して。
その後、結局――彼女の表情をみることをしないまま、
家に帰ることも無く適当な電車を適当に乗り継いで。
当てもなく進んでいたはずの僕は。
気が付いた。
眼の前に広がる森林と積もり始めた雪を見て、
その先からゆっくりと水の音が聴こえて。
僕はただ、しずみたくなったのかもしれない。
この真っ白に染まりつつある雪景色と、
耳に聴こえる音の根源の中に。
【ザクザク】
【ザクザク】
そう足元から堅い音がする。
吐く息はどんどん白くなる。
腕も鼻も、足も冷たく、
痛みが増してくる。
痺れている。
そうして――。
ハッとした。
いつの間にか視界に入っていた湖に。
簡単だったのかもしれない。
僕はきっと、君に愛焦がれていた。
恋していたんだと思う。
身体に流れるこの血が、鈍く、暗く。
錆びついた鎖になるくらい。
湖に沈みたくなるくらいに。
「愛しているよ。だからせめて――もう一度だけ君を抱きしめたかった。」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?