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英文法解説 テーマ8 仮定法 第4回 定番の“I wish I were a bird.”という文について

 こんにちは。今回で仮定法の最終回になります。扱うテーマは、仮定法を用いた慣用構文です。仮定法の公式(仮定法過去および仮定法過去完了)を前提とした構文の説明になるので、それぞれの公式をしっかり確認してもらうために、しつこいかもしれませんが再度、掲載します(簡略版ですが)。

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これらの公式の主にif節中の「SV~」の部分が繰り返し用いられるので、難しいと感じたら、ここに戻って公式を確認してください。一部の慣用構文の中には、各仮定法の公式の帰結節部分の「S+助動詞の過去形+V/have Vp.p.」も用いられる場合もあるのでその場合は気を付けてください。

①I wish SV構文

 よく“I wish I were a bird!(私が鳥だったらなあ)”という仮定法の例文を見かけると思いますが、なぜあれが仮定法なのでしょうか?どこに仮定のニュアンスが含まれているのでしょうか?
 「仮定法=反実仮想」というのを覚えていますか?「事実に反することを仮に想定すること」が反実仮想ですよね。つまり、「私は鳥ではない」という事実があるからこそ「私が鳥だったらなあ」という「事実に反する願望」が可能になるのです。そして、この例文のどこに仮定法の要素があるのかというと、I wereとう部分です。これは、仮定法過去のif節のSV部分にあたります。というわけで、この構文を一般化すると以下のようになります。

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 基本的には、I wishの後ろには、if節の「SV」にあたる部分を用います。したがって、仮定法過去であればS+V過去形で、仮定法過去完了であればS+have Vp.p.です。しかし、「~できればなあ」や「~できたらなあ」など「能力」の意味での願望(反実仮想)を表したい場合は、could Vやcould have Vp.p.を用いる場合もあります(ただし、それ以外の助動詞の過去形(would, might, should)はほとんど用いられないです)。
 また、ここではI wishで統一しましたが、もちろんそれ以外の主語を用いても構いません。例えばHe wished he were richer.(彼はもっと金持ちならなあと思っている)としてもOKです。というわけで、例文でいくつかのパターンを確認しましょう。

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 どうでしょうか?どれも反実仮想に基づく願望で仮定法の公式が部分的に用いられていることが分かればOKです。

②as if[though] SV構文

 次は、as ifという「まるで~かのように」という構文です。例えば、「まるで外国人のようにふるまう」という例文があります。実際には「外国人ではない」という事実に基づいているので「まるで外国人のように」と言えるので、ここでも反実仮想に基づいていることが分かります。I wishの場合と同様に、as ifの後ろに仮定法の公式を用いるという点に注目しながら、この構文を一般化してみましょう。

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 基本的にはas ifを用いますが、as thoughの場合もあります。特に意味は変わらないのでどちらでも構いません。I wishの場合と同様に、as if[though]の後ろには、if節の「SV」にあたる部分を用います。したがって、仮定法過去であればS+V過去形で、仮定法過去完了であればS+have Vp.p.です。そして、ここでも、「まるで~できるかのように」や「まるで~できたかのように」など「能力」の意味での反実仮想を表したい場合は、could Vやcould have Vp.p.を用いる場合もあります。というわけで、例文でいくつかのパターンを確認しましょう。

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 (4)~(6)のいずれの例文でも、as if[though]のうしろに仮定法過去と仮定法過去完了の公式が用いられていることを確認してください。ただし、as if[though]の後ろの仮定法の時制の判断には注意が必要です。通常、「仮定法過去=現在時制」「仮定法過去完了=過去時制」と覚えているかと思いますが、この構文のケースでは、「仮定法過去=主節と同じ時制」「仮定法過去完了=主節のひとつ前の時制」となるのです。

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 つまり、(5)ではas ifの後ろに仮定法過去としてcould doが用いられていますが、これは現在時制ではなく、主節のbehavedと同じ時制である過去時制を表しています。同様に、(6)でも、as thoughの後ろに仮定法過去完了としてhad beenが用いられていますが、これは過去時制なのではなく、主節のtalkedのひとつ前の時制、つまり大過去を表しています。

③it is time SV構文

 次は、it is time SVという構文です。これは「もう~する時間・頃だ」と訳す構文なのですが、なぜこの構文に仮定法が用いられるかというと、「実際には~していない」という事実をベースにしているからです。「していない」→「するべき」という仕組みです。そして、この構文には仮定法過去のみが用いられるというのが大きな特徴です。確かに、「もう~した時間だ」という表現は日本語としても不自然ですね。というわけで、この構文を一般化すると以下のようになります。

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 timeの直前に修飾語としてaboutが用いられれば「そろそろ」の意味合いが、highが用いられれば「とっくに」の意味合いが足されます。とにかくこの構文のポイントは、仮定法過去のみが用いられるという点なので、たとえ日本語で「~する」とあっても、V過去形にすることが重要です。

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 仮定法過去と仮定法過去完了の使い分けがない分、分かりやすいと思います。ただし、仮定法を用いないで不定詞を使って、It is time for you to go bed.と書くこともできるので、一応気を付けてください。

④「もし~がなかったら」構文

 最後は「もし~がなかったら」という構文です。これは、日本語訳の上では、現在時制「もし~がなければ」と過去時制「もし~がなかったら」と厳密には違いがありますが、実際の会話では、現在のことであっても「もし~がなかったら」と言ってしまうことが多々あると思います(例えば、「もしこのお金がなかったら、今日の昼食を買えないだろう」など)。なので、日本語訳に惑わされずに、特に主節の語形や全体の意味を考えながら、仮定法過去と仮定法過去完了を使い分ける必要があります。

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 とりあえず、例文でそれぞれの使い方を確認しましょう。

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 これらの構文は、このままの形で用いられることももちろん多いのですが、「テーマ8 仮定法 第3回 「「もし~ならば」が隠れている仮定法について」」で解説した「if節の変形(ifを省略→SVの倒置)」を受けることがあります。すると、(9)(10)の例文はそれぞれ次のようになります。

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 例文では赤字で示しましたが、実際の英文でもこのような変形に気づけるかがポイントになります。基本的には “were it not for”や “had it not been for”というこの特徴ある構造で気づくか、主節の助動詞の過去形+V・have Vp.p.で気づけると思います。

 さらに、これらはどちらも前置詞を用いて、withoutやbut forで書き換えることもできます。「もし~がなければ・なかったら」を表すwithoutに関しては、「テーマ8 仮定法 第3回 「「もし~ならば」が隠れている仮定法について」」でも一度出てきたので併せて確認しておいてください。

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 ここまでが、仮定法を用いた慣用構文になります。もっとも有名なI wish SVだけでなく、as ifやit is timeなども仮定法の公式がどのように用いられているのかをしっかり確認しながらマスターしてください。

 というわけで、仮定法に関してはここで終了になります。繰り返しますが、仮定法は、「テーマ8 仮定法 第1回 「もしもボックス」があればいいのになあ ~仮定法の基本~」「テーマ8 仮定法 第2回 未来のことについて仮定してみると…」で解説した、仮定法の公式が頭に入っていないと全く太刀打ちできないので、苦手な人はとにかく各公式を覚えることから復習してください。それさえ覚えてしまえばあとはスムーズに理解が深まるはずです。頑張ってください!では、また次回のテーマで。


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