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英文法解説 テーマ8 仮定法 第1回 「もしもボックス」があればいいのになあ ~仮定法の基本~

 こんにちは。今回から「仮定法」の解説に入ります。仮定法は、得意な人と苦手な人がはっきり分けれる分野です。コツを知っていて得意な人は「仮定法、楽勝!」と言うのですが、苦手な人は「何度勉強してもできない…」と嘆きます。苦手な人の特徴としては、ifを使えば何とかなると思って、「仮定法とは?」という基本から理解していないことが多いので、まずは「仮定法とは何か?」ということから解説していきたいと思います。

直説法と仮定法

 仮定法というと「もし~ならば」というイメージが強いと思いますが、「もし~ならば」であればなんでも仮定法というわけにはいかないのが難しいところです。そこで、仮定法に関して次のように考えてみましょう。

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 「反実仮想」という用語自体、あまり知られていないかもしれませんが、これは読んで字のごとく「事実に反することを仮に想定すること」という意味です。例えば、「もし私が鳥ならば」は、「鳥ではない」という事実が前提になっているので、「反実仮想」と言えますが、「もし明日晴れたら」は、「晴れていない」という前提がないので仮定法とは言えません。これは単なる条件を表しているだけです。

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 このように、仮定法にはその前提となる現実世界があり、両者はある意味、表裏一体になっています。そして、現実世界のことを表す方法を「直説法」(←「直接」ではない!)と呼び、反実仮想の世界のことを表す方法を「仮定法」と呼ぶのです。まるでドラえもんの「もしもボックス」の世界のような感じです。

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 仮定法を用いるかどうかは、反実仮想になっているかどうかをチェックするのがポイントです。反対に、仮定法を用いられている英文を読む場合は、その前提となっている現実世界の事実を確認すると良いでしょう。「実際はどうなのか?」を考えるのがコツです。

仮定法と時制

 さて、仮定法=反実仮想、ということが分かったら次は「仮定法の時制」を考えるのが重要です。というのも、いつの時制のことを仮定法で表すかによって使う公式が異なるからです。仮定法には時制によって次の2種類があります

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 ここで注目したいのは、時制の名称のズレです。現実世界での「現在時制」は、仮定法では「仮定法過去」となり、現実世界での「過去時制」は、仮定法では「仮定法過去完了」となります。どうしてこのようなズレが生じるかは諸説ありますが、最も有力なのは、反実仮想を表すためにできるだけ現実味から遠ざける、というものです。基本的に、過去形や過去完了形のような形は「距離感を生む」と言われています。したがって、現実の世界の事実から遠ざけて、現実味をなくすために過去形や過去完了形が用いられているということですが、とりあえずは、直説法と仮定法では時制が異なる、ということを把握できていれば十分です。

仮定法過去

 仮定法過去は、現実世界では現在時制で表される事実に対する反実仮想です。簡単に言えば、「今現在~である」という事実を「もし~でなければ」と仮定することや、「一般的には~ではない」という事実を「もし~であれば」とすることです。仮定法過去は次のような公式で表されます。

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 If SV~のかたまりのことを「if節」と言い、S+助動詞の過去形+V原形…のかたまりのことを「帰結節[文]」と言います。if節で用いられる動詞の過去形は、be動詞の場合はwasよりもwereが伝統文法的には好まれていますが、実際にはwasも普通に用いられています。また、帰結節の助動詞の過去形は主にwould, could, mightが用いられますが、wouldの代用としてshouldが用いられることもあります。

 例文でこの公式の用例を確認しましょう。

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 (1)は、「私は早起きではないから、毎朝ジョギングをしない」という事実を前提としています。また、(2)は「彼にはお金がないから、その自転車を買えない」という事実があります。(3)は、「あなたは私の立場ではないから怒っていない」という事実があります。それらを反実仮想で表した文が、(1)~(3)の仮定法の文になります。ちなみに、if節と帰結節はどちらを先に書いてもいいので、

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としてもOKです。

仮定法過去完了

 仮定法過去完了は、現実世界では過去時制で表される事実に対する反実仮想です。例えば、「私は~だった」という過去の事実を反実仮想で表し「もし私が~でなかったら」とするのが仮定法過去完了です。仮定法過去完了の公式は次のように表されます。

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 仮定法過去完了は、どうしても公式自体に多くの語句が含まれるので、ボリュームが出てしまうのですが、if節と帰結節のVの語形に注目して覚えてください。特に、帰結節のwould/could/might have Vp.p.という構造は、仮定法過去完了の大きな特徴です。

 例文で仮定法過去完了の公式を確認していきましょう。

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 (4)では、「私はそれを知らなかったから、君に伝えなかった」という事実を前提とした仮定法です。過去の事実に基づいているので、仮定法過去完了の公式が用いられています。(5)では、「彼はあまり練習をしなかったから、上手に演技ができなかった」という過去の事実に基づいた仮定法過去完了の文です。いずれも、if節でhad Vp.p.が用いられ、帰結節では助動詞の過去形+have Vp.p.が用いられています。公式通りだということを確認してください。

仮定法過去完了+仮定法過去

 一方で、(6)は少し変わった仮定法です。実はこれ、if節には仮定法過去完了の公式が用いられているのですが、帰結節の方では仮定法過去の公式が用いられているのです。つまり、「もし過去において~だったら」+「現在は…だろう」という2つの時制にまたがった仮定法なのです。

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 つまり、(6)では、「君は昨晩早く寝なかった」という過去の事実を前提としたif節「もし昨晩早く寝ていたら」と、「君は今眠い」という現在の事実を前提とした帰結節「君は今頃眠くないかもしれない」から成り立っていることが分かります。このようなパターンまでカバーできると、仮定法過去と仮定法過去完了に関する基本は理解できていると判断できると思います。

 若干、複雑に見えますが、2つの公式(仮定法過去過去と仮定法過去完了)の2つの節(if節と帰結節)を組み合わせているということです。*ちなみに、今回は触れませんが「If節(仮定法過去)+帰結節(仮定法過去完了)」というパターンもあるにはありますが、ほとんど出てこないのであまり気にしないでもOKです。

 というわけで、仮定法の基本の解説はここまでになりますが、次回は「未来のこと」についての仮定法を解説したいと思います。仮定法を使うべきか直説法を使うべきかという判断が必要になる場面が出て来るので、空想・妄想=仮定法、現実=直説法、というざっくりした分け方で構わないので、その辺を明確にして臨んでください。では、また。

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