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英文法解説 テーマ11 否定 第2回 「100%を否定は何%?」と「否定の否定は?」という話

 こんにちは。今回が「否定」の第2回目です。部分否定と二重否定について解説していきたいと思います。これらは、慣用表現という都合の良い用語で丸暗記を強要されてしまいがちなところですが、実は、正しい理解をベースに定着させるべき範囲なのです。基本からしっかり解説していくので、「なるほど!」と考えながら進めていってください。

部分否定

 まずは、部分否定から説明していきたいと思いますが、そもそも「部分否定」という用語自体が分かりにくいかもしれません。これは、どういうことかというと「数量」や「割合」に少し関係しているのですが、例えば、「昨日のテストの結果は100点ではなかった」という場合、実際には何点だったのだろうか、と考えてみてください。「0点」でしょうか?「100点ではない」=「0点だ」というのはあまりにも極論です。99点や80点や40点だって「100点ではない」のですから。つまり、このように全体を丸ごと否定するのではなく、一部分だけを否定するというのが「部分否定」ということです

 今の例でも分かるように、「部分否定」を表すには、必ず「100(や全体)」を表す語句が用いられ、それを否定する形式になります。そして、否定語notは、その「100(や全体)」を表す語にかかるようにその直前に置かれることが一般的です。次のようにまとめてみます。

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 「~というわけではない」という訳語が特徴的です。このように訳すことで「部分否定」のニュアンスが生まれます。allやeveryは「全て」という意味なので「数量が100%」であることを表していて、alwaysやnecessarilyの場合は「頻度が100%」であることを表しています。また、both「両方とも」ということは、分数で表すと2/2なので「100%」です。例文でいくつかのパターンを確認しましょう。

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 notの位置に注意してください。例えば、例文1ですが、通常であればnotはagreedの直前に置かれ、didn’t agreeとなるはずです。しかし、部分否定では、notはallにかかることを明示するために、たとえ文頭であっても、not+allという語順で置かれることが一般的です。また、例文3でも、通常はhave not metのような現在完了形の否定文の語順の方が自然に見えるかもしれませんが、ここでもnotがbothにかかる語順で書かれています。

全体否定

 さて、ここで考えてみたいことがあります。「100%でない」=「0%だ」のように、0%を表す否定文はどのように表せばいいのでしょうか?100%を表す語を否定したら「部分否定」になってしまうのであれば、「0%」を表す否定文は別の方法を用いることになります。このように「0%を表す否定」のことを「全体否定」と呼びます。

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 要するに、前回扱った「否定語」を利用することになります。詳しくは、「テーマ11 否定 第1回「否定のかかり具合と否定がかかる範囲について」」を参照してください。例えば、例文1を「全体否定」にして書き換えると、次のようになります。

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 よく生徒の答案を添削していて気付くのは、例えば「生徒は全員、辞書を持っていなかった」のような和文を英訳してもらうと、“All the students didn’t have ~.”と書き始める人が多いことです。こう書きたいのも分からなくはないですが、“No students had ~.”と書いた方が良いでしょう。

二重否定

 次は、二重否定について解説していきたいと思います。これは、イメージしやすいと思います。否定が二重にかかるのですから、「肯定」のニュアンスが生まれます。「否定を否定する」というのは、①やんわりと肯定する場合と、②強く肯定する場合の2つのパターンがありますが、これは文脈によってケースバイケースです。例文で確認しましょう。

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 ①「否定×否定」=「やんわりとした肯定」の場合は、例文5のように否定的な意味合いを持つ語にnotがかかることで二重否定になっています。「可能性が低くはない」ということは「可能性が高い」わけではありません。例文6は、②「否定×否定」=「強い肯定」を表しています。「知らない人はいない」ということは「誰もが知っている」ということです。このように、「二重否定」は2パターンの捉え方ができると良いと思います。

 また、二重否定を組み込んだ形式の慣用表現もいくつかあるので、最後にそれらをチェックしていきましょう。

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 ①は直訳すると「Sは~Vしないで…Vすることはない」という二重否定です。「涙を流さずにこの手紙を読むことはない」ということから「この手紙を読めば必ず涙を流す」となります。②はfail to Vが「Vしない」という意味なので、それを否定することで「必ずVする」という強い肯定になります。③は、butがポイントです。このbutは「~を除いて」という意味なので、「それを諦めることを除いて選択肢はない」という二重否定を分かりやすくすることで「それを諦めざるをえない」という解釈になっています。

 というわけで、部分否定と二重否定の解説はここまでになります。次回は「否定」の最終回、「否定のイディオム」です。ご期待ください。

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