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英文法解説 テーマ11 否定 第1回 否定のかかり具合と否定がかかる範囲について

 こんにちは。英文法解説シリーズの第11回目、今回からのテーマは「否定」です。もちろん、シンプルに否定文を作るだけなら、中学英語で習うnotを使った否定文だけで十分かもしれませんが、もっと幅広い英文を読んだり書いたりするためには、「notを使う」だけではやはり物足りないです。not以外にどんな語を用いれば否定文を表せるのかということや否定のかかり具合(=どの程度否定するのか)などについて解説していきたいと思います。

準否定語について

 否定文を作る語としては、おそらくnot, no, neverあたりが最も有名でよく見かけると思います。これら否定語の使い方は、ルールによって覚えたというより、経験を積むことで体感的に理解している人の方が多いでしょう。おそらくnotに関しては特に問題はないと思いますが、noやneverは意外とつまずく人も多いので、それらの基本的な使い方についてはまとめておきたいと思います。

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 特に「no+名詞」というかたまりは、SやOなどの位置で否定を作れるという点で日本語と異なるので、慣れないと難しく感じるかもしれません。一応、例文で確認しておきましょう。

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 どちらも「0%」を表すという否定文です。例文1では、この部屋に入ってもよい生徒は「ゼロ」ですし、例文2では、私が今持っている現金は「ゼロ」です。このように、noやnever(もちろんnotも)0%を表し、「否定語」と呼ばれます。

 しかし、世の中何でも100%の肯定と0%の否定によって成り立っているわけではありません。「ほぼ~ない」や「めったに~ない」といった数%の余地を残した否定というのもあります。このような際に用いられる語句のことは「準否定語」と呼ばれます。主に次のような語があります。

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 fewやlittleは数量形容詞としてはたらくので、基本的には「名詞」にかかります。可算名詞か不可算名詞かという違いはありますが、「ほとんど[名詞]はない」という意味合いになります。hardlyやrarely[seldom]は副詞としてはたらくので、動詞や形容詞(any)や副詞(ever)にかかります。hardly anyは実質的にfewやlittleと同じ意味で、hardly everは実質的にrarelyと同じ意味です。このあたりの品詞のはたらきがまだあいまいな人は、「テーマ1 品詞と文型 第1回「品詞を理解するのはコスパが良い!」」を参照してください。例文で確認しましょう。

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 このように、notやnoやneverといった「否定語」以外にも「準否定語」という語があり、それらを使っても否定文を作ることができるということを認識することが大切です。そういった認識を通じて、読めたりかけたりする英文の幅がぐっと広がります。繰り返しになりますが、これらの「準否定語」は、形容詞や副詞としてのはたらきもあるので、どういう品詞にかかるのかという点にも気を付けてください。

否定の範囲(射程)

 次は、「否定の範囲」についての解説です。どこまでが否定がかかる範囲なのかを考えるということです。まずは、次の例文を解釈してみましょう。

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 おそらく、「彼は自分勝手なので私は彼が好きではない」と解釈する人が多いと思いますし、その解釈で全く問題はありません。では、次の文はどうでしょう?

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 例文9と同じように、「彼はとても金持ちなので私は彼が好きではない」と解釈するのはなにか不自然ですよね?「金持ち嫌い」という可能性もありますが。そこで、例文10は次のように訳してみてはどうでしょうか?

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 この方が自然だと思います。これなら「私が彼のことを好きな理由が他にもある」というニュアンスが生まれます。では、どうしたらこのような訳し方になるのでしょうか?そして、例文9と10の解釈の仕方は何が違うのでしょうか?実は、「否定語notのかかる範囲(このことを「否定の射程」と言います)」を考えるのがポイントです。

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 ①は、notがV…にしかかからないので、「私は彼が好きではない」という否定文が成立した後に、because節「彼が自分勝手なので」が追加されています。一方で、②は、notがV…because節にまとまってかかります。「彼がとても金持ちなので彼のことが好きだ」を否定するので、「私が彼を好きなのは彼がとても金持ちだからではない」という解釈になります。

 このように、not V+because節の場合は、notがかかる範囲を見分けることが重要ですが、基本的には②のような解釈になる方が一般的です。①のような解釈をするのであれば、つまり、because節をnotの範囲外に出すのであれば、“Because節+S not V~”のように、because節は文頭に置くのが好まれることが多いです。

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 というわけで、簡単にですが、準否定語と否定の範囲(射程)について解説してきました。たかが否定文と軽視するのではなく、様々な角度から「否定」を捉えると、より正確で深みのある解釈ができるようになってきます。次回は、部分否定二重否定について解説していきたいと思います。ご期待ください。


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