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進学校かどうかは関係ありません

昨年から、校則の見直しについて世間の関心が特に高まっています。
それは、ツーブロックや地毛証明の提出など、時代にそぐわない校則へのネガティブな文脈がほとんどで「ブラック校則」と呼ばれることもあります。
社会全体で多様性への配慮や主体性の尊重が求められる中で、不必要かつ強制的に同一性を求めるものや児童生徒に校則の必要性を説明できないものについては、早急に見直すべきであることは説明を要しません。

ただ、この問題に関しては、旧態依然の学校の体質にのみ原因があると捉えて、学校だけを非難することには反対です。
もちろん、不適切な校則を残している学校の責任は問われるべきですし、その場で強制的に髪染めをさせるなど行き過ぎた指導は非難されるべきです。
けれど、校則が出来た背景まで遡ると、保護者や地域からの声で作られたものや、現在進行形で、高校生の服装や髪型について「こうあるべき」と考えて学校にその対応を求めるケースがあります。
学校は社会の縮図であり、日本社会が抱える多様性への寛容さとセットで議論されるべきです。

一方で、未来を変える力を持っているのも高校生であり、高校魅力化や探究活動の一貫で、社会課題の解決に取組んでいる高校生がたくさんいるのも事実です。
岩手県立大槌高校では数年前から高校魅力化に取り組んでいて、高校生がマイプロジェクトとして地域課題の解決に向き合ってきました。
そんな大槌高校では昨年度から、生徒が主体的になって校則の見直しに取り組んでいます
素晴らしいのは、生徒だけでなく教員や保護者、地域住民などの関係者を巻き込んで、校則の見直しを行ったところです。
そして、対話を重ね、実際にツーブロックの解禁など、校則を見直しを実現することができました。

きっと、高校生達は、見直しのプロセスで価値観の異なる他者と対話することの難しさや、納得解を得ていくことの大切さを学んだことと思います。
何よりも、ルールは上(教師)から与えられるものではなく、自分たちで作り・変えることができることを学び、小さな成功体験として実感できたことは今後の長い人生の武器になることでしょう。

ちなみに、令和3年5月21日刊『内外教育』(時事通信社)には、苫野一徳・熊本大学准教授の執筆記事として、NPO法人カタリバが主催する「ルールメイカー育成プロジェクト」のオンラインシンポジウムでの様子が掲載されていました。
その記事では、対話と合意のプロセスを通して校則を見直して行く活動についての発表に対して、参加者から「優秀な進学校でないと難しいのでは?」との発言があった際に、参加していた大槌高校の生徒が、いわゆる進学校と呼ばれる学校ではない自分達にもできたのだから「進学校かどうかは関係ありません」と、堂々と受け答えをした様子が記されていました。

この言葉には、様々な意味が込められていると思います。
都市部にある大規模な進学校ではなく、東北の沿岸部にある小さな高校でもやれたということを証明したことは、この取組が全国に広がっていく可能性を示したことでもあります。
そのことは、単に高校の校則だけに留まらず、社会のルールを作り・変えることができるのは一部のエリートではなく、当事者意識を持つすべての意志ある人々であるというメッセージにもなるのだと私は捉えています。

校則の見直しが、単に文部科学省や教育委員会、世間から言われて学校側が一方的に見直しましたというものではなく、高校生が校則見直しのプロセスを通じて、ルールづくりを学べる場になればと切に願っています

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