旅する教師が出会った言葉(なかがわ さとゆき)

1981年の福岡生まれ。岡山県で中学校の教師を4年経験したのち、文部科学省に入省。その後も島根県の海士町や岩手県への出向を経験。 学校現場から文科省、県教委、町役場と、様々な立場から教育に携わってきた道のりはまるで旅のようで、そんな旅の中で出会った言葉をここに綴っています。

旅する教師が出会った言葉(なかがわ さとゆき)

1981年の福岡生まれ。岡山県で中学校の教師を4年経験したのち、文部科学省に入省。その後も島根県の海士町や岩手県への出向を経験。 学校現場から文科省、県教委、町役場と、様々な立場から教育に携わってきた道のりはまるで旅のようで、そんな旅の中で出会った言葉をここに綴っています。

    最近の記事

    学校で子ども達に時間をかえす(意思決定の機会をつくる)

    先日、経済教育を推進する一般社団法人CEE(Council for Economic Education)の方からお話を聞く機会がありました。 たくさんの貴重なお話の中で、私が特に心に刺さったキーワードは「選択と意思決定」です。経済教育とは、単に経済活動を学ぶということではなく、児童生徒が主体的に選択と意思決定できる環境をつくることだと教えてもらいました。 自身が中学校の教員をしていた頃を振り返ると「選択」の機会は比較的用意できていたのではないかと思います。学級活動や授業の

      • 子ども達の学びの選択肢をどれだけ増やせるのかという視点が大切

        昨年から、中央教育審議会の「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」で、新しい学びの在り方が議論されています。 その部会に設置されている「教科書・教材・ソフトウェアの在り方ワーキング」では、GIGAスクール構想で導入が進んでいるオンラインドリルなどのデジタル教材や、デジタル教科書について議論しています。 デジタル教科書の議論では「紙」と「デジタル」を巡って紙の良さやデジタルのデメリットなど、様々な意見交換がなされました。 そのよう

        • 子ども達がカッコイイ、行きたいと思える名前にしたい【SCHOOL Sの見学】

          先日、大阪で開催された「NEW EDUCATION EXPO 2022」にパネリストの一人として出席しました。 私は、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けて、デジタル教科書の現状と今後の方向性について、文部科学省の立場からお話をさせてもらいました。 フォーラムの最後に、広島県の平川教育長が登壇され、広島県教育委員会が実践している先進的な挑戦事例についてご紹介頂きました。 その中でも、私が特に印象的だったのが、広島県教育委員会が取り組んでいる「SCHOOL S」の

          • 開運橋をわたって帰京するときは景色が違って見える【岩手県教委の離任】

            この度、岩手県教育委員会を離任し、文部科学省に戻ることになりました。 2年間という短い間でしたが、お世話になったすべての方々にこの場をお借りして心からお礼を申し上げます。 今から2年前に文部科学省から岩手県教委への出向が決まったとき、かつて岩手県に出向したことのある先輩から話を聞く機会がありました。 その先輩からは「着任のとき、盛岡駅から県庁までの間にある開運橋という橋をわたるのだけれど、行きは雄大な自然と見知らぬ景色に圧倒される。そして、2年が経過し開運橋をわたって帰京す

            つくる、つながる、とどける【岩手県教育委員会とnoteの連携協定】

            先日、岩手県教育委員会とnote株式会社が高校魅力化の情報発信に関する連携協定を締結しました。 これにより、県教育委員会と県立高校63校がnoteプロを活用して、高校魅力化の取組を発信していくことになります。 これまでのように県教育委員会が各学校の取組を一元的にまとめて発信したり、各学校がホームページでバラバラに発信したりするのではなく、noteのメディア・プラットフォームを使うことで、各学校が自律・分散的に生徒の探究活動や地域との連携の様子を発信しつつ、それらがネットワー

            学校の魅力は地域をはじめとする社会との関係性の中からしか生まれない

            昨年の10月に、岩手県教育委員会から「いわて高校魅力化グランドデザイン」が公表されました。文部科学省の高校改革の流れを受けて、高校の設置者である都道府県が高校の役割を再定義するもので、スクール・ミッションとも呼ばれています。 このスクールミッションを見てみると、各都道府県の特色が出ています。高校全体の大きな方向性を示しているところもあれば、一つ一つの高校の役割を明示しているところもあります。 岩手県の場合、前者のパターンで、高校の役割として大きな方向性を示しています。ただ

            一人の人間にできることはこの(マネジメントの5つの要素の)うちの2つが限界

            島根県の海士町に出向していた頃、ある企業の社長経験者から経営についてお話を伺う機会がありました。 その方からは、「マネジメントには、①ビジョンの共有、②ミッションの明確化、③進捗管理、④モチベーションのアップ、⑤人材育成、の5つの要素がある」と教えてもらいました。この話を聞いた時、私は「これは学校経営にも当てはまる」と思いました。 目的と手段が逆転して活動の形骸化が起こりやすい学校文化の中で、教育の最上位の目的を常に掲げ続け、目的達成のためなら慣習に囚われず新しいことに挑戦

            先生が3年間で費やした時間は、息子さんより私の方が長かっただろう

            昨年末に配信されていた陸上競技選手の為末大選手のインタビュー記事を拝見しました。その中で、為末さんは2つの観点から、部活動の地域移行の必要性について語っています。 一つは、少子化で学校規模が小さくなっており、これまで通りに学校単位で部活動を維持していくことが難しいという点です。インタビューの中で、「少子化は大きな流れであり、学校単位で部活動を維持するのは無理がある」と明確に発言されています。 これはデータから見ても明らかで、全国の約19%の中学校が生徒数100人未満(1学

            学級の概念が変わろうとしている

            先日、教育関係者の勉強会で、これからの教育の方向性について話をする機会がありました。その時に話した内容を一部紹介します。 中央教育審議会の答申『「令和の日本型学校教育」の構築を目指して』では、誰一人取り残されない教育を実現するため、多様化する児童生徒とどのように向き合っていくのかが大きな柱になっています。 そのことは答申に明記されている「正解主義や同調圧力への偏りから脱却」という言葉からも強く感じ取ることができます。 イノベーションは辺境から起こると言われますが、教育にお

            進学校かどうかは関係ありません

            昨年から、校則の見直しについて世間の関心が特に高まっています。 それは、ツーブロックや地毛証明の提出など、時代にそぐわない校則へのネガティブな文脈がほとんどで「ブラック校則」と呼ばれることもあります。 社会全体で多様性への配慮や主体性の尊重が求められる中で、不必要かつ強制的に同一性を求めるものや児童生徒に校則の必要性を説明できないものについては、早急に見直すべきであることは説明を要しません。 ただ、この問題に関しては、旧態依然の学校の体質にのみ原因があると捉えて、学校だけを

            私は田舎者だ。田舎者として復興に取り組む。

            文部科学省から復興庁に出向していた頃、大臣室に配属され、秘書官補佐として仕事をしていました。そのときにお使えした大臣のお一人が島根県選出の竹下亘氏です。 それまでの復興大臣が被災3県選出であったのに対して、竹下大臣は島根県選出で被災地ではありませんでした。そのことを疑問視する声もあり、就任時の記者会見でも指摘されます。 その質問に当時の竹下大臣は「私は田舎者だ。田舎者として復興に取り組む。」と答えます。以降、復興大臣として、この言葉を口癖の様に使っておられました。 竹下

            形式的平等主義からの脱却

            先日、前文部科学副大臣の鈴木寛氏からお話を聞く機会がありました。 その時に特に印象に残ったのが「学校が抱えている形式的平等主義からの脱却」というフレーズです。 昨年の臨時休校の際には、特にもこの部分が学校の足枷になってしまった場面が全国的にも散見されました。 例えば、オンライン授業に対して積極的な先生がいるのに、できる先生とできな先生がいた場合にクラスによって不公平が生じるので、できる先生にストップをかけてしまう。 また、クラスの大半の児童生徒がオンラインできる環境にあるに

            分かりやすい授業と簡単な授業とは違う

            教師の指導力を測定する指標の一つに「分かりやすさ」があります。全国学力・学習状況調査でも、児童生徒のアンケート調査で「〇〇の授業の内容はよく分かる」という項目を設定しており、岩手県教育委員会でも教育政策の一つの指標として、この授業の分かりやすさを掲げています。 授業の「分かりやすさ」はとても重要です。分かりにくい授業は児童生徒の学ぶ意欲を低下させるだけでなく、児童生徒の満足度や幸福度にも繋がってくるからです。 私自身、中学校で理科を教えていた頃は、兎に角、分かりやすさを第一

            本気なのは当たり前、問われているのは本気度

            先日、岩手県庁の希望者を対象に、海士町のまちづくりについてお話する機会がありました。本来であれば海士町の方に来てもらって話をしてもらう方が良いのですが、都道府県間での往来が難しい中、国家公務員として離島に出向していた者としての視点を加えて話をさせてもらいました。 サザエカレーやいわがき「春香」、隠岐牛、CAS商品といった島まるごとブランド化について、商品開発の裏には、いずれも販路を自らの手で開拓する中で徹底的な品質管理を行い、価格決定権を手放さなかったことが、持続化可能な生

            具体と抽象を行き来する

            元経済産業省商務情報政策局長で、現在は東京大学未来ビジョン研究センターの客員教授として活躍されている西山圭太氏著書の『DXの思考法』(文藝春秋)を読みました。 学校現場においても国が掲げる「GIGAスクール構想」の流れでICT環境が急速に整備されていますが、ICTを単なる道具として捉えるのではなく、教育の世界にDX(デジタル・トランスフォーメーション)をもたらすものと考えたときに、根っこのところで何が問われているのかを知りたくて本著を手に取りました。 DXに関する様々な視

            Diversity Without Quality

            今年1月の中央教育審議会答申「令和の日本型教育の構築を目指して」は、GIGAスクール構想で急速に進む学校現場のICT化やアフターコロナを見据えて、幼児教育から義務教育、高校教育までの初等中等教育を一気通貫する形で、新しい学びの方向性が示されています。 私は、今回の答申のキーワードは「多様性」であると捉えています。 高校に焦点化して現状を観察すると、入学する生徒(入口)が多様化していること、卒業後の進路先(出口)が多様化していることが数値からも見えてきます。 入口の面では、