自分自身にほんの少しでいいから時間を与えて(人生100時代の教育を考える)
アメリカの自己啓発・コーチングで著名なトニー・ロビンズ氏の動画を見る機会がありました。
その動画の中で、彼は自己に否定的な学生に対して、次のようなアドバイスをします。
この言葉を聞いた学生は、明らかに表情が変わります。
私も「自分自身にほんの少しでいいから時間を与えて」という言葉を聞いて心が軽くなりましたし、「多くの人は1年でできることを高く見積もり過ぎる。そして、20年から30年でできることを低く見積もってしまう。」のところはその通りだと心の中で叫んでいました。
私は、教員を辞めて文部科学省に入省してから、約2年単位で職場を異動してきました。教科書課→家庭教育支援室→復興庁→海士町→財務課→岩手県教委と、短い期間での異動なので、できることには限りがあります。
自分は学校現場や教育行政に貢献できているのだろうか、と自問自答することも少なくありません。
組織全体で見たときに自分の貢献など目に見えないほど小さいものですが、その後も組織の中で長く取組が継続していくことで確かに芽が出始めているものもあります。
それは私自身にも言えることで、2年ごとで区切ったときの自分自身の成長は実感できるほどのものではありませんが、振り返ってこの20年を見返すと、確かに自分は成長したと確信できます。
長期的に見ていくことの大切さは、児童生徒の教育にも当てはまることで、心身ともに伸び盛りなので、ついつい1年、2年での成長を期待してしまいますし、目に見える形での成果を求めがちですが、人生100年時代を生きる彼らにとって、1年という時間は貴重なものであっても、その時間に何かを為さなければならないものでもないのでしょう。
人生50年・60年時代の学校教育の在り方と、人生100年時代の学校教育の在り方が同じで良いはずはありません。
リスキリングやアンラーニングといった言葉を耳にする機会が増えましたが、長期的な視点で教育全体を捉え直していく必要があります。
目の前の中間・期末テストや高校・大学入試を乗り越える知識だけに目を向けるのではなく、長い人生を学びながら他者と幸せに生きる力を大切にする。
長期的な視点を持つことこそが新学習指導要領におけるコンピテンシーベースの学びに繋がる視点なのだと気付かされた冒頭の言葉でした。
最後に、関連する話として、先日、『ロングゲーム』ドリー・クラーク著(伊藤守監修・桜田直美翻訳)を読みましたので簡単に紹介します。
この本は、新しい事業や人生の目標を達成するために、長期の視点を持つことの必要性を説いたものです。
事業など、成長するときは指数関数的に成長するものなので、停滞期が長く続いたとしても諦める必要はないことなどが説かれていて、先ほど紹介したロビンズの言葉にも通じるものがあると感じました。
本著でロングゲームをプレイするための3つのカギとして紹介されている3要素は、コンピテンシーと重なる部分が大きいと感じましたので、備忘録的に書いて締めたいと思います。
①独立心:自分のビジョンに忠実であること、周囲の目に晒されてもブレない自分の中の評価基準をつくる
②好奇心:他人の敷いたレールに満足しない
③立ち直る力(レジリエンス):上手くいくかはやってみないと分からない、どんな結果も「失敗」ではなく「実験」と考える