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ゼロからわかる自己調整学習①「自ら学ぶ子」ってどんな子?

自己調整学習って何?

「自ら学ぶ」「主体的に学ぶ」「子ども主体」といったフレーズ、最近よく耳にしますよね。
教師が全て手取り足取り教えている状態から抜け出せなければ、いつまでたっても子供たちは自立することができません。
学年によって程度の違いがあるのは当然としても、子供が自分で学習を進めていける力を少しでも育てていくことが求められています。

そこで注目されているのが「自己調整学習」というキーワード。
これは簡単に言うと、
「『自ら学ぶ子ども』っていうのはこういう風に学んでいるよ」
「『自ら学ぶ子ども」というのはこうやって育っていくよ」
ということを明らかにした理論なのです。

子どもが自分の学習や行動を自分でコントロールする研究については昔から行われてきました。
また、モチベーションに関する「動機づけ」の研究や、自分の行動や感情などを客観視する「メタ認知」の研究、効果的な学習方法に関する「学習方略」の研究なども古くから盛んにおこなわれてきました。

こういった「自ら学ぶ」ことに関係する様々な研究を1つに統合したのが、「自己調整学習」の理論体系なのです。
実は、自己調整学習の理論には何種類かの考え方があるのですが、ここでは一番有名な、アメリカの学者ジマーマン(Zimmerman)の理論をもとに解説していきます。

ジマーマンの理論によると、自ら学ぶ子どもは、
学習の前・中・後の3段階サイクルをぐるぐる回せる子ども
ということになります。

第1段階 見通しをもつ段階(予見段階)

第1段階は、学習を始める前に、これからの学習について「見通し」をもつ段階です。「予見段階」と言います。

例えば、
①やる気を出す
 「がんばるぞ!」「よし、はじめよう」「おもしろそうだな」
②目標を立てる 
 「今日はここまでやろう」「今日はこれができるようになろう」など
③学習方法の計画を立てる
 「今日はこのテキストを使おう」「今日はこの方法で内容をまとめてみよう」「何分間やる」「この順でやる」など

授業でも今日の学習課題を確認したり、学習の進め方を把握する段階がありますよね。また、子供が興味をもったりやる気を出したりできるように導入を工夫したりしますよね。
自ら学ぶ子は、それらを自分で行う、というわけです。

第2段階 実行する段階(遂行段階)

次に、実際に学習を進める最中の段階です。「遂行段階」と言います。

この段階では、「モニタリング(観察)」と「コントロール(制御)」という2つのポイントがあります。

まず「モニタリング」。
自分の学習が順調に進んでいるか確認します。
授業でも、先生が机間巡視するなどして、子供の学習状況を把握しますよね。そのような状況の観察を自分で行います。

「集中できてるな」「いい調子だ」と思えば、そのままやり方を続けます。しかし、「なんか集中できていないな」「少し困ったな」ということもあるかもしれません。
そんな時、「じゃあこのやり方をやってみよう」「こういう風にしてみよう」と自分のやり方を修正する。これが「コントロール」になります。

つまり、自分の学習状況を観察しつつ、状況によってやり方を変えたりできる子供が「自ら学ぶ子」なのです。

第3段階 ふりかえる段階(自己省察段階)

学習を終えたら、自分の学びを振り返ります。これが「自己省察段階」です。
授業でも最後に振り返りをする場面がありますよね。

目標に照らし合わせて、目標が達成できたか
何が分かったか、何ができるようになったか
何が難しかったか、何が課題か
勉強のやり方は良かったか。変えた方が良いか。

このような様々な視点で自分の学習を振り返ります。
大事なのは、「うまくいった」ことだけでなく、「うまくいかなかった」ことにも目を向けて、原因や対策を考えることです。

そして
「もっとやりたい!」
「次はこうしよう!」
と次の学習への意欲や見通しをもつことになります。←ここが大きなポイントです!!!

まとめ 自ら学ぶ子=自己調整学習者

最後の「自己省察段階」で、次への意欲や見通しをもつ、と述べました。

そうです、それが次の学習の「予見段階」につながるのです。

このように、「自ら学ぶ子」というのは、「予見」―「遂行」―「省察」のサイクルをぐるぐる回すことができます。
この考え方を「自己調整学習の循環モデル」と呼びます。

これがジマーマンの「自己調整学習」理論の基本です。まずこのサイクルの存在を理解すると、漠然とした「自ら学ぶ」ということが、具体的なイメージになりませんか?
次回は「自己調整学習できる子とできない子」の違いについて解説していきます。

文献


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