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003「みつるとみちこ」みつる、都会に圧倒される

(なかなか文章を書く時間が作れません。細々と書いていきます。気長にお待ち下さい。あと、上の写真は現代の京都のようです。すみません。)


とっても長い時間、列車に乗って、ようやく京都に着いた頃には、日が傾いていた。
みつるは町の光景をみて、びっくりした。「これが、都会なの」

自分の生まれ故郷は草木の色と土の色しかなかったが、この街は色彩にあふれていた。車道はたくさんの車が走り、歩道は様々な人々がひっきりなしに行き来していた。
列車を降りて、駅から祇園に向かって歩いたけど、どの場所でも、建物や人の、様々な色が目に飛び込んできた。
そのうちに、日が暮れて、夜になった。自分の生まれ故郷は夜になると漆黒の闇に包まれたが、この街は照明があふれていて、夜になっても明るいままだった。いつまでたっても、眠らない街。
初めて見る都会の風景に、みつるは圧倒された。

もちろん、観光目的で京都に来たわけではない。次の日から、置屋での生活が始まった。
全国から集められた様々な年齢の女の子達が、集団生活をしながら、一人前の芸奴になるための「いろは」を日々叩き込まれた。礼儀作法、歩き方、話し方、踊り、小唄、三味線、太鼓、などなど。
修業はとても厳しいものだった。うまく出来ないと、容赦なく手が飛んできた。一流の振る舞いが出来るまで、何度もやり直しさせられた。
つらくても、彼女たちに帰る場所はない。たいていが口減らしで家を追われた者たち。生きる場所はここにしかなかった。

つらい修行生活ではあったが、みつるには支えてくれる人がいた。
仲が良かった姉、みよ。京都で再開することができていた。お互いに修行の身で、離れた場所に暮らしていたので、会う機会は少なかったが、会うたびに、母親のような優しい言葉をかけてくれた。
それから、同じ置屋にいた、ちとせ。年齢が近かったこともあり、意気投合して、お休みの日にいっしょに遊びに行ったりした。遊びに行くと言っても、鴨川の河原で並んで座っておしゃべり、程度だったけど。うれしいこと、つらいこと、なんでも話せる仲だった。

十年が過ぎた。いろんな人の助けを借りながら、みつるは、厳しい修行に耐えて、芸奴として、舞台やお座敷に出られるようになっていた。
そんなころ、ある出来事が起きる。

(この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。)

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