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「石」の巻 2日目

午前6時に目を覚まし、ニュースをつけ天気予報を待つ。

降ったりやんだりで、所によっては雷をともない強く降るという。

スマホの天気予報で1時間毎の地元の天気を確認する。午前10時まで降らない予想に変わった。

今日、一番楽しみにしていた石巻ー雄勝ー女川ー石巻ルートを走るとしたら、一番心配なのは最初に走る北上川沿いのルートだ。

豪雨になっても雨宿りするところがない。雷が鳴っても隠れるところがない。

でも、雨が降るまでに走り抜けれそうだ、どうにかなるぞ!

カーテンを開けると青空が見える。

「よし、出発だ!」

のそのそと出発の準備をして、誰もいないカウンターに鍵を置いて、自転車に向かう。

あれっ?

自転車に小さめのレジ袋がかかっている。

(昨日の夜、記憶がないほど飲んでないよなぁ)

袋の中を見るとなんと、手作りのおにぎり2つと「あいにくのお天気ですが、よい旅になりますように」のメモ。

一体何ていう国なんだ石巻。

青空と白雲が踊る北上川を、河口に向けて走りだす。

追い風だ!

これならきっと雨に濡れずに川沿いを走りきれる。

1時間強だろうか、分岐点に着いた。

右に曲がれば雄勝。そのまま真っ直ぐ行けばすぐに大川小学校遺構。

一瞬、行こうかどうか悩んだが行かないことにした。もう、見過ぎた。どれくらいの破壊力だったのかは分かっている。過去を見るより、今の中の輝きを見たい。走ろう。

登り坂が始まる。北上川沿いを走っている時から思っていたんだけど、石巻はなにか縄文パワーのようなものを感じる。

遠野は民話の町と言われていて、そんな雰囲気を感じるが、石巻も地形に何か強いものを感じる。縄文的な何か。

坂を登り始めると車もほとんどなく、体力と自然との対話が始まる。

リアス式海岸の海沿いはアップ・ダウンが激しいのは知っていたから、焦らずゆっくり一番軽いギアで登っていく。二日目にしては疲れがあまりない。今日は行けそうだ。

長いつづら折れの登り坂は、上の方に道が見える時がある。見えた。

あそこまで登るのか…

上の方に見えた場所らしきところまで登ると、先の方にトンネルが見えた。

助かった〜

久しぶりに長いトンネルを抜けると下りになった。

一気に降ると雄勝に着いた。

真新しい道路と、たくさんのコンクリートと、人の気配の感じなさ。

小さな入江なのに巨大な防波堤で覆われている様は、まるで母が意識不明の時にたくさんのチューブを身体中に差し込まれている時のようなショックを受けた。

今日のルートでは、今夜お邪魔する石巻の魯曼停さんおすすめの場所が2つあり、その一つがここの防波堤に描かれた巨大な壁画。

まずは小さな道の駅で休憩をする。何か食べようと思ったが、ちょうどいい物がないのはしょうがない。

それでも何か一口食べたいなぁと、ふと見ると、いろんな海産物入りのアイスクリームが売られていた。

その中でも目を引いたのが「ホヤアイスクリーム」


これは食べるしかない。

海辺に出て、釣りをする家族を横目に食べる。

うん?ホヤの味がしないぞ、このツブツブはホヤだ。でも果肉みたいでホヤっぽくない。

普通に食べられるなぁと、拍子抜けして自転車に向かった。

自転車に乗ろうとして思い出した。

そうだ、雄勝は硯石で有名だ。何か小さな石を買って帰りたかったのだ。

まさにそういう石が売っていた。

蝋石のような、消しゴムのような形状。

こういうのを店で使いたかった、というのがあり買うことが出来た。

次に壁画に向かう。

これは、一つのプロジェクトで、年に2〜3ペースで、巨大な防波堤に、負けないくらい大きな壁画を描いていくそうだ。

最初の年の2つの絵を見ることができた。

雄勝の人が、日本人が、忘れてはならない、海辺に暮らす人達の営みや風景が描かれていて、じっと見ていると、リアルよりもリアルと言うか、時空をこえている。

そこだけコンクリートがなく、まるでその向こうの海やその時代に吸い込まれるようだった。

これほど、写真にするとあせてしまうものはないので、ぜひ皆さんも自転車か車で行って、実際に見て下さい。


壁なのに海が見えてくる。
夕暮れの漁師の背中の大きさが永遠。


入り江の向こう側の山と溶け合ってくる。
そこにいた、じっと見ている女性がさらに物語を作っている。

1時間くらいじっと見ていたかったが、雨雲が近づいてきている。

自転車に乗った。

ここからはひたすらアップ・ダウンが繰り返される。縦に横に道がうねる。

雨が降り出した。最初はミストで涼しかったが、本降りになってきた。

最初はフルーツみたいだったホヤアイスクリーム。自転車に乗っていたら、ジワジワと胃袋の方からホヤの味が口の中に広がってきて笑えた。

アップ・ダウンの下りでは久しぶりのスピードとカーブ。自分の自転車が雨の日にどれくらいのスピードでも曲がれるか、減速できるか忘れているので少し慎重に下る。小さな集落名に「唐桑」とか「呉○(忘れた)」などの地名があり、古来にここに大陸からの人が来たのかなと思いを馳せる。

雨が少し落ち着いて女川に着いた。

魯曼停さんオススメ2つ目は「ニューこのり」さん。

穴子天が美味しいらしい。

女川では、美味しい海の幸を食べたかったので、そのお店に行くことにした。並ぶのも覚悟のうえだ。

中心地に行くと、ものすごくモダンな街づくりに驚く。以前訪れた十年前が嘘のようだ。

メイン通りが洗練されている。観光客もたくさん。

「ニューこのり」さんを探して中に入る。

2時間待ちの時もある、順番待ちの端末がある、と、レビューで見ていたのでそのつもりで。

やはりそんな感じだったが、それくらい待ち時間がないと、のんびり出来ない人間なので、これも悪くないなと、予約をして港でボーっとする。


オンラインで、残りの待ち時間が分かる。

71人の待ち人数、途中キャンセルもあったのか、もう少し早く席に座ることが出来た。

穴子天も食べたいが刺身系も食べたいと思っていたら、そんなセットがあった。


早く食べたくて、ちゃんと撮れてないですね。

地物の穴子は、まるで高級な和菓子のように臭みがなく、クセがなく、甘みにあふれ、柔らかいのにしっかりしていた。

これだけのお客さんに揚げているのに揚げ油も全く傷んでない。軽くて、しっかりコクもある。

海鮮丼には女川産のウニまで入っている!

アラ汁も最高で、やっぱり鮮度なんだなとは思うけど、それ以上に、

これは料理という名前の「この港で生きる人の誇り」を頂いているのだ、と思った。仕上げのフルーツまで絶品。

ここで不思議なことがあった。

私には1つ違いの名古屋に住む、いとこがいる。

食べていたら2つ先のテーブルに、後ろ向きでそっくりな人がいた。聞こえてくる声も似ている。

隣りにいる奥さんも、そっくりだ。ただ、もうひとり男の人がいて、その人は知らない。

たまに横顔が見える。さらにそっくりだ。

彼らのほうが先に食事を終えて席を立った。

もう、どう見てもいとこだったので目があったら声をかけようかと思ったけど、目も合わず、こんなところで騒いでもしょうがないので、声をかけなかった。そういう人間だ私は。

いや~、本当に石巻ミラクル、色んな不思議なことが起きる。

その他にもこのお店には、書きたい仮店舗時代の思い出がとかがあるけど、あまりにも長くなるので。

そして、いよいよ石巻中心地の魯曼停さんへ!

話が長くなるので、次回は魯曼停スピンオフです!石巻ミラクル。


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