『グロースハッカー佚』(第8話)【ミーティング】
現在Webメディア『マーキャリメディア』内にて執筆掲載している大好評の連載小説『グロースハッカー佚』をnoteにて第5話に続いて第6話も配信致します。
BtoBマーケティング会社に中途入社した八月一日 佚(ほずみ てつ)。前職ではプロモーターとして勤務していた小さな音楽レーベルを1人でメジャーレーベルにまで成長させたキャリアを持つ26歳彼女の誰も思いつかないような独創的な発想は果たしてBtoBマーケティング会社でも通用するのか。会社のブレーンとして様々な企業課題に立ち向かう彼女と会社の成長を追ったオリジナルのストーリー小説です。
ミーティング
前回までのプラットフォーム案のおさらい
柿島「私たちは今アプリ開発チームと連動して大規模なプラットフォームサービスのリリース準備を進めています。一言でいうとスタートアップ企業にオンラインでマーケティングチームを提供するサービスです。まずユーザーは我々が今開発しているマーケティングスキル診断アプリを使い、得意な分野やスキルレベルを洗い出します。その結果を元に私たちがクライアント企業に合わせて、ユーザーを組み合わせてチームを作りその企業に提供します。彼らは決まった時間にチャットやWeb会議などで企業の新規事業立ち上げに努めます。私たち仲介を挟んだ状態で企業と月契約を結ぶので月給のような形で彼らには報酬が支払われます。つまり企業側は、実際に人を複数雇ってチームを作るよりも効率的に、そして低コストでスキルのある人を集めて運用を行えるというサービスになります」
佚「オンライン上でチームを持った時に、企業としての成長はどこにありますか?」
-------------------------------------
柿島「今日のミーティングはプラットフォームについてのコンセプト案です。一度決まりましたが、八月一日さんから意見があり、横さんにも共有し再度新たな意見を元に話し合うべきだということになりこの時間を頂きました」
横「まだ話し合う余地はあるかなと思ったので取り急ぎ企画メンバーだけ集まってもらいました。先ず八月一日さん、みんなに意見を共有してもらっていいかな?」
佚「はい。スタートアップ企業にオンライン上でマーケティングチームを提供するサービスということで、凄く面白いコンセプトだと思いましたが、スタートアップ企業をターゲットにした場合、彼らは既に何かしらのアイディアを持っています。なので次に必要なのは戦略です。このサービスでは、彼らにその戦略がないからそこをマーケティング経験のある外部メンバーがチームを組んで補うのが想定だと思いますが、ここで先ず懸念なのが、本当に補う事が出来るかです」
坂西「そこは、ちゃんとこちらでマーケティング経験のある人材を集めて、上手くチームを組んで提供するから大丈夫だよ」
佚「スタートアップ企業に必要な戦略は、通常のマーケティング戦略とは異なります。更に、より高度なノウハウを必要とします。豊富な立ち上げ経験のあるマーケターをピンポイントでちゃんと集められるでしょうか?」
坂西「いや、だからチームなんだよ。例え立ち上げ経験がなくてもマーケティング知識のある人間が複数人集まれば色々な意見も出てくるし、上手くいくでしょ」
佚「それから、スタートアップ企業に特に必要なのは、戦略ではありません。本当に重要なのはその戦略を実行する為のリソースです」
坂西「だから、その実行もオンラインで我々が集めたマーケティングチームがやるんだよ」
佚「その場合に、その企業の成長はどこにありますか?」
坂西「成長?売上が伸びれば成長してるってことじゃないの?」
佚「戦略も実行も外部の即席メンバー任せでは企業は成長出来ないと思います。特にスタートアップであれば組織を成長させていかなければ続きません。外部メンバーは副業です。つまり収入面とキャリアアップが彼らの目的として想定できます。仮に彼らが実行を補って成長したとしても会社の成長にはなりません」
坂西「ん? 彼らが成果を上げれば会社の成長になるんじゃないの?」
横「八月一日さんの言ってるのは、実行メンバーはそのスタートアップ企業であるべきだということでしょ。即席で集めた外部メンバーは正規メンバーではないし、まして副業だから、社員以上に本人の意思でいつでも離れるリスクがある。その時に組織が回らなくなるって話」
佚「はい、それと、即席で集めたそのオンラインのマーケチームでは実行を行うこと自体が非現実的だと思います」
坂西「なら戦略だけをオンラインのチームが担えば良いじゃん、実行はその企業に任せて。本来そういう想定のサービスだったでしょ」
佚「であればチームで提供する意味はないと思います。ノウハウ提供であれば、スポット的なコンサルを1人が行えば済みます」
坂西「でも、俺はチームとして提供することに良さがあると思うんだけどな」
横「取り合えず、八月一日さんのこの意見についてみんなの見解を聞きたい」
類巣「自分はテッサンの意見、凄く分かります。そもそもスタートアップを支援出来るメンバーが集められないと思います」
川門「俺もそうですね。結構前から思ってたんですけど、即席で集めたメンバーで更にオンラインで意見の出し合いって、チームとして統制取れるのか疑問でしたし」
坂西「チームとしての成長なんて、俺らが考えなくても良いのでは?結局このサービスを使ってくれる企業は一時的でも成果が出れば良いと思います。その後の成長はそれぞれの企業の能力次第なんじゃないかなと」
佚「今この話し合いを...」
チーム「ん?」
佚「もし外部のマーケチームがオンラインで行っていたら私たちは実行できますか?」
チーム「....」
横「再度、サービス案を出し合う必要があるな」
柿島「え!?この数か月行ってきた話し合いをもう一回やるんですか?」
坂西「リリースタイミングまた遅れますよ!」
横「自分たちが良いと確信を持てないサービスを他社が使うわけないだろ?」
坂西「俺は良いと確信持ってますよ!」
横「どこら辺に?」
坂西「マーケ知識があるメンバーを集められたらどんなスタートアップ企業も上手くいくと」
横「我々はマーケ知識のあるメンバーの集まりだよ」
坂西「え?」
-----続く
『グロースハッカー佚』はマーキャリメディアにて絶賛連載中です。最新号も無料で読めます。もし気に入っていただけましたら是非チェックしてみてください。宜しければnoteのフォローもよろしくお願いします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?