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[社内報,プレスリリース]ハンコやめて、電子契約を導入しました。

2020年4月吉日、弊社は創業以来続けてきたハンコをやめました。ハンコをやめることで、お客様はもちろんのこと、お取引先様、そして従業員がハンコのある場所に不必要な来社をしなくても仕事ができることになります。電子契約を導入すると収入印紙税削減や事務効率化(1件あたり約500円+いまだとわざわざ会社に来るコスト)、コンプライアンス強化など様々なメリットがあります(ここ、ほぼクラウドサイン社の受け売り)。改ざんされやすいという懸念もあるとの考えもありますが、後述のように、技術的な点で納得がいっており、導入を決定しました。社員は以下に示すサイトに自分の社員アカウントでログインして、自分の電子署名を用意するだけです。電子署名も、パソコンのマウスで自分の名前を下手なりに書いたもので十分署名として成立します。

ハンコを預かってもらってきた法務の声、「いやー、ハンコなんで私の仕事なのかなってずっと思ってたんですよ。」
ハンコを押しに来た課長の声「まじっすか、やるやないですかっ!、よっシャッチョサン!」

ハンコの法的意味

ハンコはほとんどの場合法的意味は無く、元はあくまで「文書が本当にその本人が作ったものか(作成者の証明)、誤りはないことを認めたものか(正確性の証明)」という内部ルール(作成者の証明と正確性の証明があることで、完全性の証明という)から生まれたとのことです。さらに電子署名法が立法されて、現行法の下でも電子契約は認められています。

注:ハンコが法的意味を持つときがあるので整理しておきました。
・民法で定める遺言は、原則、自署押印
・会社法で定める定款や取締役会議事録は、署名または記名押印が必要
・民事訴訟法や刑事訴訟法では、裁判手続で提出する書面のいくつかに、法律上押印が必要となっているものがある

ハンコのメンタルモデル的意味

電子署名法は2001年、約20年前に成立しています。そんな昔に成立しても進まなかったのは、なにか別の政治的影響力があったとかではなく、企業や個人にとって電子契約は経済合理的でなかった、紙とハンコを使うことの方が理にかなっていたということを認めるところから始める必要があると思いました。ハンコは信用を示す慣習や前提(メンタルモデル)として根づいています。

現状維持バイアス(物事がうまくいってたら、いちいち変えようなんて思わない)も、同調バイアス(みんなやってるんだから)もありました。しかし、会社に行くなと言われた今、オンライン化できていない活動が一挙に「見える化」されてしまいました。テレワークは、Zoomの導入だけではなく、仕事がオンラインで完結させられるようにならないと意味がありません。

ハンコは電子化可能であり、残すは私たちのメンタルモデルを変えるということだけです。

ハンコの用途と代替

ハンコは法的意味はないのに、以下のように実態を伴って多くの企業で以下のようなハンコの運用ルールが生まれています。

契約印 契約書の最後にある会社実印や会社角印
契印 2枚以上の契約書が1つの連続した文書であることを示す印
訂正印  二重線で訂正する印
消印 切手印紙の使用済で再使用できないようにする印
割印 二通以上の文書が関連していますよということを示す印
捨印 訂正印の複製などのために使われる印(銀行などで使われている)
止印 文書の終わりを示す印
認印 認める印(ハンコに意味はないのに不明確な存在?)

契約書に必要になるのは、契約印、契印、訂正印、消印であり、電子契約書の機能ですべて代替可能です。

割印や止印は、そもそも活躍の場があまりなく、代替がなくてもやっていけます。

認印は、社内稟議書などに使われていますが、クラウドの電子契約の機能で代替可能ですが、多くをチケットなどのワークフローツールに置き換えることで、いちいち認印なども必要なくします。ってか、認印ってなんだったのか。

FAQ:電子ファイルはコピーが簡単です、作成者の証明はどのようにしてしているのですか?

電子ファイルを用いる電子契約では、ファイルそのものに印影や署名を施すことはできません。印影や署名を「画像として」上書きすることはできますが、デジタル画像はコピーが容易であるため、本人の意思によることを証明することは出来ず、意味がありません。そのため、別の手段によってその内容が本人の意思であることを証明できるようにする必要があります。多くの電子契約ベンダーが採用しているのは、公開鍵認証を用いて電子ファイルの作成者を証明する方法です。コンピュータの暗号技術を用いた公開鍵認証システムは今のところ信頼性が最も高い部類の技術となっています。

公開鍵認証について事例で説明                    ある死にかけの男が、1億円もの大金を、自分の一番気に入っている女に渡そうと、学芸大学にある自宅の蔵の金庫に隠し、女に引き取るように電話し、四桁の番号を設定したあと、「3238」と最後に女に伝えて死にました。悪党がそれを見て聞いていました。 しめしめ、悪党は、その金庫の中身を持って行こうとし、3238と入力しましたが、金庫は開きませんでした。悪党があきれはてて帰った直後、女が蔵に到着しすんなり金庫をあけました。金庫の前で悪党は3238という番号は聞いていたものの、実際に3238を入れても開けられませんでした。というのも金庫は実際は2220という番号でロックしたからです。気に入った女性とその男性との間には、いつも秘密で使っている自分たちの共通の誕生日(10月18日)、1018があり、女性は3238と聞くやいなや、1018を引き算してロックした2220という番号を想起することができました。
上記の話には1018「共通鍵暗号」という概念があります。 大昔から、男女の恋愛までよく用いられていたのです。悪党が見ていても、共通の鍵がないと開けられないというのはメリットなのでした。これをさらにコンピュータで応用して、暗号化に必要な鍵と復号化に必要な鍵が異なるような暗号方式が公開鍵暗号方式として作られています。一言で言うと、暗号化に必要な鍵と復元に必要な鍵が、同一ではないようにする方式が発明され、より安全に情報がやりとりができるようになっています。

ハンコこぼれ話:はんこシステムのメンタルモデルに気づき使いこなすおじいさん

私が大学生の時(20年前)に、アルバイトで行った会社の会計ソフトのコールセンターでは、社内稟議書がありました。誤って私がハンコを逆さまに押してしまいはずかしい思いをしていると、後ろから、中年のおじさんが声をかけてくれました。思わず「すみませんハンコを逆に押してしまいました。」というと、「いいんだよ、俺なんか、稟議書なんかいつも逆さまに押してるよ」とおっしゃったのです。理由を聞くと、見てる人の印象を引き付ける効果を狙っているとのことでした。白髪のおじさんは、実は会社の社長で、稟議書のなかでも、特に社員の読書ノートの稟議書がお気に入りで、いつも見ていることをアピールするために、そのようにしているのでした。ハンコは明瞭に押されていれば目的は達成されており、あえて逆手にとって、社員に「私も見ているということを伝える手段」としてハンコを使っておられて、柔軟にメンタルモデルを使いこなしていると思いだしたのでした。ハンコをなくすとそのようなエピソードはなくなると思いますが、それよりも大切なのは、メンタルモデルに気づき、変化させられる人が経営者としてふさわしいのではないかと思います。

まとめ

すみません、本Noteは、実は架空の社内報プレスリリースです。

Tokyo Creators' ProjectのData Scientistです。アマゾンが革新的な製品開発をし続けられるのは、プレスリリースから始まるWorking Backwardsにあるとのことで、それを利用して、「ハンコやめました」のプレスリリースを社内報的に書いてみました。でも本気で書きました。なぜならば、本気でハンコやめたいと思っているひとがちらほらいて、役に立ちたかったからです。プレスリリース書くといいと思います。ユーザー視点でどんなステップで課題を克服できるか、会社の課題、問題の核が自分で理解できていないことに気づけます。ベンダーなんかどこでもよいと思います。ハンコをやめて本気で電子契約に移行しませんか!

参考

アマゾンのワーキングバックワード開発メソッド

クラウドサイン電子契約導入のメリットと注意点

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