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一身上の都合。

「溜息つくと幸せが逃げる」そんなことを耳にしたことがある。
それが本当なら、僕はいくつの幸せを逃がしただろう。

気づけば溜息をついている日々が続いた。

その日は、今日が温かいのか寒いのか、それを肌で感じることはできなくて、部屋の小さな窓から見える景色を眺めるだけ。

自分の身体の中に、細い何かが入ってくるのを感じる。
しかしながら、僕はまな板の上の鯉で、何も抵抗することなどできない。

これが不快なのか違和感なのかは、時間が経った今でもわからない。

意識はあるし、会話もできた。
ただ、自分以外の何かによって自分の心臓を突き動かされている感覚が間違いなくあった。
僕はあの時、生きていたのではなく、生かされていた。

そして終わった。

腕は固定され、しばらくは何もできない。
気分も悪い。頭も痛い。

自分の身体に何が起こっているのかがわからないことが一番引っかかっていた。

何もないことを知り、いい意味でぷつんと糸が切れた。

これが一安心、一息つくということなのだろう。そう感じた。

これまでの溜息が深呼吸へと変わった。

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