負債の図解 #会計の地図
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負債
うまく活用して会社を成長させるお金
負債は、資産とは反対にマイナスの財産、つまり「返す義務があるもの」を指す。負債は、大きく2つに分けられる。「有利子負債」と「無利子負債」だ。有利子負債というのは、会社が利子をつけて返済しなければならない負債のこと。つまり借金である。
「借金」というと、それだけであまりよくないイメージを持つ方もいるかもしれない。しかし、会社における負債は、適切に借りて、しっかり返済することができれば、決して悪いことではない。
一方、無利子負債とは、利子がかからない負債のこと。たとえば、何か商品をつくるための代金を後払いする「買掛金」などが当てはまる。
負債には「リスク」と「リターン」がある
そもそも、負債はなぜ必要なのか。なぜ銀行からお金を借りるのか。それは、まとまったお金を使って、さらに事業を成長させる目的で投資を行うためだ。
たとえば製造業なら、工場や新しい設備を導入することで、さらに売上を伸ばそうとすることが考えられる。大きな投資が必要な場合、手元に持っているお金だけでは足りない場合が多い。その不足を補うために、銀行からお金を借りることで事業を成長させる。結果、自分たちの資金力だけでは実現できなかったスピードで事業を成長させることが可能になる。
銀行からの借り入れは、利息があったり返済の義務があるという一定のリスクがあるものの、そのリスクを取ることで事業の成長を早めて利益を大きくしてくれるリターンを生む場合もある。だからこそ、「借金は悪いもの」と決めつけるのではなく、リスクとリターンの両面を踏まえて負債について考えることが大事だ。
有利子負債が大きいと、利子が加わって負担がより大きくなる。もし会社の有利子負債が多すぎると、事業の継続が難しくなって、会社の存続そのものが危機に陥る可能性がある。しかし一方で、負債は事業を健全にまわすために必要になるお金でもあるのだ。
もちろん、負債を有効に使うことで事業を成長させようとする経営者もいれば、そうでない経営者もいる。自分が所属する会社にどれだけ負債があるか、その負債の内訳はどうなっているかを確認してみると、経営陣のスタンスが見えてくるかもしれない。
「負債」を考えるための事例
負債をどのように活用するのかというスタンスは、同じ業界でも、企業によってまったく違う。それがわかる事例として、大手携帯3社の負債を見てみよう。2020年3月の決算を元に比較してみると、NTTドコモとKDDIとソフトバンクで、負債が占める割合が全然違うことがわかる。
さらに負債の中身を見てみると、有利子負債に大きな違いが見て取れる。NTTドコモの有利子負債は極端に少なく、KDDIは他の2つと比べると中程度、ソフトバンクは圧倒的に一番大きい。ソフトバンクは、それだけ金融機関からの借り入れが大きいことが考えられる。有利子負債の割合が対極的なソフトバンクとNTTドコモを比較してみよう。
ソフトバンクは、積極的にお金を借りて資産に投資し、事業を成長させるスタイルだ。ソフトバンクは主に企業買収を通じて積極的に事業を多角化し成長してきた歴史がある。ヤフー株式会社や、LINE株式会社なども、結果的にソフトバンクが買収した企業だ。
今でこそ3大キャリアと呼ばれ通信事業者の大手の一角として名を連ねているソフトバンクだが、通信事業者として存在感を大きくしたのは、英ボーダフォングループからボーダフォン株式会社を買収したことがきっかけだった。当然、こうした企業買収には大きなお金が必要になるから、有利子負債の占める比率は大きくなりやすい。
一方、NTTドコモはお金を借りるよりも安全性が高い経営スタイルだ。NTTドコモは元々「日本電信電話公社」(電電公社)と呼ばれる国営の特殊法人からスタートし、そこから移動体通信事業が分離してNTTドコモになっている。そういう背景から、純粋な民間企業よりも安定した経営が求められる経営文化があったことから、リスクを取らずに安全な事業運営をする性質が負債の少なさに表れているとも考えられる。また、回線契約数が3キャリアの中でトップであったことも、そうした性質を押し上げる1つの要因だったかもしれない。
このように、負債の中身を見ていくことで、「会社の性格」のようなものが透けて見えてくることもある。
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