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「年間643万トン!喫緊の課題“フードロス”と闘う料理人兼社会起業家の取り組み」川越一磨さん(後編)

喫緊の社会問題である「フードロス」を手軽に削減できるアプリ「TABETE」。2019年度のグッドデザイン ベスト100にも選ばれました。TABETEの展開を進めるコークッキング代表取締役の川越一磨さんが行う食に関する活動について、いろいろ伺います。


スローフードってなに?

ミイナ:
川越さんの取り組みの中でスローフードの取り組みというのがあるんですけど、わかってるようでわかってないんですがスローフードってどういうものなんですか。

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川越:
一言で言うと食の未来を作るための草の根運動をする団体で一応国際NPOなんですけど。本部はイタリアにあって世界160カ国以上に支部がある団体。「ゆっくり食べる」とか言われちゃうこともあるんですけど、そういうことじゃないんです。スローフードはファストフードの対義語みたいな。

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しっかり生産者さんを守っていきましょうとか、ストーリーがある食を食べていきましょうとか、しっかり生産者さんに対価をはらって、持続可能な食を未来を作っていく、食の生産活動を支援する、みたいなそういったことがスローフードのモットーですね。

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ミイナ:
ちゃんと味わって消費しましょうじゃないけど、リスペクトして消費しましょう、みたいな。

川越:
食の多様性とかも守っていかないといけないとか種の保存とかそういったこともスローフードのテーマですね。

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ミイナ:
種の保存というのは食べ物の、植物だったり、魚だったりとか?

川越:
海洋の持続可能性というのもありますし、どこが乱獲しててとか・・・という話にもなりますし、どちらかというと水資源の話とか水ってどれくらい公共性が担保されるべきなのかとか。あとは先住民族とかもそうで、先住民族の食文化とかってものすごく注目されてるんですけど、それって絶滅に瀕しているんですね。絶滅に瀕すると何が問題かというと、昔からのトラディショナルな食文化とか気候変動がこれだけしている地球になっているので、生き抜く知恵とかそういうことを先住民族は実は知ってたりとかですね。科学的に解明されていないような部分も知ってたりするので。

ミイナ:
経験的に、長い歴史の中で。

川越:
先住民族の食文化の保護、ひいては、先住民族自体の保護とか持続性とかも考えていかないといけない。あとは種とかですね。植物の種も今、種子法が改正されようとしてますけど・・・。


「種子法」ってなに?

「種子法」とはコメ・大豆・麦類の種子を各都道府県が責任を持って安定的に生産・普及する義務を定めた法律でしたが、去年4月に廃止されました。
種子法に守られてきた公共の種がなくなることによって種子が一部の大企業に独占され値段が不安定になることや、品種の多様性が失われること、遺伝子組み換えされた種子しか手に入らなくなるのでは、など懸念の声も上がっています。

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川越:
一企業が種を売る会社として成立して世界中の種を牛耳るみたいなことになると我々の食事、食べ物を提供する会社が世界で一社に決まっちゃうとか2社に決まっちゃうとか、そうなると僕たちが食を楽しむことがその会社によってできなくなるかもしれないっていう。

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ミイナ:
なるべく多様性があったほうがリスクがあったときに誰かが生き残るかもしれない。

川越:
そこで種が絶滅してしまっている状態だと復活はもちろんできないのでそういったことを守っていくっていうこともスローフードのミッションの一つ。スローフードとしては「なになにしちゃいけません」っていうのは「遺伝子の組み換えはNGです」っていうのを言ってるがそれ以外のことはいいこと、食の未来を作ることであれば何でもしなさい、というポリシーでやってる団体ですね。

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スローフードとの出会い「ディスコスープ」

ミイナ:
川越さんとスローフードの出会いは。

川越:
規格外の野菜とか圃場廃棄で捨てられちゃう野菜を農家から買い取って、みんなで料理をして啓蒙活動しましょう・・・ディスコスープっていう活動があるんですけど、それをやってたときにやり始めるタイミングですね。料理パートをぜひ一緒にできないかとお誘いをいただいて、じゃあやりましょうとやり始めたのがきっかけですね。

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ミイナ:
日本でも広まってはいるんでしょうか。

川越:
ディスコスープとしてはいろんなところでやられるようになってきました。少しずつですけど。スローフードの活動はまだまだ認知度高くないですけど、ちょっとずつですね。じわじわとそういう概念が広がっていけばいいかなと思います。

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コークッキング

ミイナ:
「コークッキング」についてもお伺いしたいのですが

川越:
コークッキングってどうしてコークッキングっていってるかっていうと、コラボレーティブクッキングコークッキング

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それは共創料理、一緒に料理をすることがクリエイティビティに寄与できるんじゃないかというところが最初にスタート。どっちかっていうとキッチンをプラットフォームとしてあくまでキッチンの中では平等ですよという環境を作って、大企業の一部署、営業部なら営業部の部長クラスから新入社員まで全員キッチンにぶち込んでみるんですね。そうすると、ヒエラルキーが替わったりする。キッチンの中で。そうするとなにがおきるかというと、まずコミュニケーションの仕方が変わってきたりとかその人のことをよりよく知れるようになったりとか・・・

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この人雑だなとか実は女性より男性のほうが料理にこだわりが強かったりとかいろんな景色が見れる。

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例えばTBSさんだったらTBSさんらしさってなんだろうみたいなところをワークショップで言語化していく。

川越:
そういう経験を一緒にするそうだしコミュニケーションがその中でも必要。やるとなると他のチームよりクリエイティブなもの作りたいなとかおいしいものつくりたいとかそういう方向性になるので意外と

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川越:
おいしいものを作るというベクトルは変わらずにもっているんですね。ひとつ軸となるベクトルがあるのでそこに向かってどう肉付けしていくかというところがそれぞれのチームごとの色が出る。

ミイナ:
料理ワークショップやってみたいですね。

川越:
ぜひ。


乗り越えてきた壁「既存のルール」

ミイナ:
これまで取り組まれてきた問題で大変だったこと、乗り越えてきた壁っていうのは。

川越:
既存のルールですよね。業界の中で、当たり前とされてるルールを少しずつ変えていくというのが一番大きな壁だと思っています。それはもう今までもずっとそうなんですけど、これからもいろんな壁にぶちあたっていく、

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そこをやらないと何の意味もない、と言う風に思ってます。

ミイナ:
当たり前じゃないんだよ、っていうのは何に対して一番感じますか。

川越:
余っちゃったものとか疑わしきものとか家庭もそうかもしれないですけど、これ悪くなってそうだなとか悪くなってるかわからないなとかそういったものを「疑わしきは捨てよ」みたいな文化がこれまでずっと続いてきたと思っていて、でもそれは今これだけインターネットがあるんだし、そこの文化が変わっていくべきたな、と。「これ本当にだめですかね」とかって人に聞きやすい環境とかあると思っていて、そういう今まで当たり前をされてきたところはもうちょっと環境的なとか正しい知識を得るとかいろんな迂回ルートがあると思うのでそういうものを使って、壊され、アップデートされていくことは必要だと思っています。


人生を変えた本

ミイナ:
人生を変えた本とか映画ってありますか?

川越:
僕が読んでて最近すごくよかったのは「持続可能な資本主義」っていう本があるんですけど・・・

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川越:
自分の中でのもやもやがある程度解消されたなというような内容で、「資本主義って人を幸せにもしたし、不幸にもしたな」って思うのが一番俯瞰的に見ると僕の中では一番しっくりくる感覚なんですけど。不幸にしたなっていう部分があるから次の経済システムに移行すべきだって僕は思ってたんですね。資本主義自体を諦めるべきだって最初は思ってたんですけど、どうやらそうしなくてもいけそうだなとか、資本主義経済自体が持続はしていくんだけどその中の不幸が減っていく、みたいなやり方もあるんじゃないかなと言う風に気づかされたのはその本がきっかけですね。


気になったニュース「アマゾンの火災」

ミイナ:
気になったニュースありますか。

川越:
気になったというか悲しくなったニュースはもうアマゾンの火災ですよね。

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森林火災。ちょっとねえ、あのニュースを見たときに僕やる気がなくなっちゃってですね。こんだけフードロスでCO2削減してみたいなことをこつこつとやり続けてるにもかかわらずあれでとんでもない面積の森林が焼かれてしまって、自然発生的に起きたということであればしょうがないんでしょうけれど。

ミイナ:
焼き畑ですもんね。

川越:
人為的なものなんで。そうするとお金のためって考えるとそっちが優先されちゃうんだなってすごい象徴的なその資本主義と環境配慮みたいなところの狭間を見たような気がしてですね。このニュースはものすごく衝撃的でしたね。

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ミイナ:
ほんとそうですよね。CO2とかもはかりしれない影響がこれから出てくるんじゃないかと。結構海外の方と話してるとこのニュースの話題になりがちで、日本だけがあまり危機感をもってないんじゃないかとたまに思うんですけど。

川越:
世界的に注目が集まってるのに日本は報道されないっていうのもなぜなんだろうなとも思いつつも。そもそもなんでこんなことするんだろうな、とかそれだけ困ってたのかなとかね、いろんなね、誰が悪いってわけじゃこれもない話なんですけど、悲しいなと思ったニュースですね。


社会起業もビジネスになる時代

ミイナ:
ご自身も20代でいらっしゃるんですけど。

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川越:
こう見えてですね。

ミイナ:
10代、20代に伝えていきたいメッセージ・・・。

川越:
ソーシャルビジネスとかNPOとかの活動はこれまですごく非営利で儲からないし、やる意味もないしみたいな風に思われている時代っていうのがようやくプレイヤーがそれぞれ出てくることによってそういう時代が少しずつ終わろうとしてるんじゃないかなと個人的には思ってます。

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諦めさせないために僕も頑張ります。持続できるようにがんばろうと思ってます。

ミイナ:
仲間も増えてきてるし、いろんなところから応援も得やすい時代になってきたっていう・・・

川越:
そうですね。環境系とか気候変動とかは特にそうなんですけど、お金も集まりやすくなってます。

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世界的にスタートアップへの投資の中でその領域ってすごくホットな領域になってきてるので、お金が集まらないと思ったら大間違いです。やっぱり長期的な投資と考えたときにお金が集まりやすくなってるので、今までのスタートアップの定例としてはやっぱり、なんとか6年とかのスパンで上場してみたいなそういうモデルにとらわれないやり方も今は広義のスタートアップとしては出てきていると思うので、急成長を目指しながら、

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ミイナ:
大学生くらいからでもチャレンジしちゃってOK。

川越:
全然いい思います。高校生とかでもいいと思いますしね。20代前半までが環境に対する意識とか社会課題に対する意識って高いっていう傾向があってですね。30代に向けて一気に下がるんですよ。関心度が。

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ミイナ:
仲間求む。

川越:
仲間を募集してます。


収録を終えて

ミイナ:
川越さん、きょうはありがとうございました。

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川越:
ありがとうございました。

ミイナ:
改めてゆるんでたなと思って。もっとフードロスの問題について考えていきたいと思ったんですけどこちら、背景の写真はなんでしょうか。

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川越:
「TABETE」のリリース1周年記念でお世話になってる方々に集まっていただいてパーティーをしたんですけど、いろんな人に支えられてるなあと思って大切にしたい一コマというかそんなところです。

ミイナ:
どうですかみなさん「TABETE」に関わってみてどんな感想というか・・・。

川越:
基本的にはいいことしかないというか誰も損しないようなビジネスモデルをみんなで支えてもらって、ユーザーさんも店舗さんもステークホルダーのみなさんも支えてもらってるので、基本的に悪い気はしないよね、というところがうちの大きななんていうか財産というか。

ミイナ:
なんかいいことをしてるっていう、もちろんしてるんですけど、気持ちになれるっていうのもいいですよね。

川越:
そうですね。単純なやっぱりお金もうけというところではなくて、どちらかというとしっかりインパクトが社会的にあることに携わるっていう経験はなかなかできるようでできないので。

ミイナ:
できないできない。

川越:
なんでそういうところにすごく共感してもらったりはしてますね。

ミイナ:
「ちりつも」ですしね。

川越:
そうですね。

ミイナ:
川越さんきょうは本当にどうもありがとうございました。

川越:
ありがとうございました。

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