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犯罪か正義か 「国家の秘密」を内部告発した女性の思い

日本でも公開されている映画「オフィシャル・シークレット」。
17年前、イラク戦争の開戦直前、戦争を止めるため、リスクを冒して声を上げた女性の実話です。

事態は“内部告発”で大きく動き出します。

これは実際にあった出来事。
人気女優キーラ・ナイトレイさんが演じる主人公のモデルになったキャサリン・ガンさんがJNNのインタビューに応じました。

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「この部屋の誰かが、政府とこの国を裏切りました」

イギリスの諜報機関で働いていたキャサリンさんは、ある日、アメリカ政府から届いた一通のメールを目にします。

件名には「最高機密」の文字。

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当時(2003年)、イラク・フセイン政権への攻撃を計画していたアメリカとイギリス。メールの内容は、国連で賛成票を取り付けるため、盗聴工作を企てているという機密情報でした。

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イギリス謀報機関GCHQ元職員 キャサリン・ガンさん(本人)

キャサリンさん:
とても激しい怒りを感じ、私たちにこんなこと(盗聴)をしろと言ってきているのが、非道で、非倫理的、違法だと思いました。

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キャサリンさんは、このメールを新聞社へとリークします。

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記事の反響は大きく、職場では「情報漏洩」の犯人捜しが始まりました。

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同僚に疑いの目が向けられることに耐えられなくなったキャサリンさんは、自ら名乗り出ることを決めますが、機密情報を漏洩した疑いで逮捕されることに・・・。

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取り調べのシーンでは、キャサリンさんのゆるぎない信念が伺える、こんなやりとりがあります。

刑事:君は政府に仕えている身だ。

キャサリンさん:いいえ、正確には違います・・・

刑事:違う?

キャサリンさん:政府は変わる。私は国民に仕えている。

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「公務員は国民に仕えるもの」とはどういうことなのか、聞いてみると・・・。

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大学で日本語を勉強し、卒業後、広島で英語教師として2年間働いていたキャサリンさん。

「戦争を止めなければ」という信念は、広島で働いていた経験から芽生えたといいます。

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キャサリンさん:
(広島で)お年を召した方に色々な話を聞き、戦争がどれほど恐ろしいものかを肌で感じました。戦争というのは、まさに軍や軍需産業だけのためにあるものではないかと。

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キャサリンさんの内部告発後、アメリカとイギリスは、国連での多数派工作をあきらめ、国連決議なしでの攻撃に踏み切りました。

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キャサリンさん:
(戦争は止められなかったが)私が報われたと感じるのは、国連がイラク侵攻の決議を許さなかったことです。私が機密メールを内部告発した後は、国連を操って攻撃を正当化するという彼ら(米英政府)のたくらみは阻止されました。

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後にイギリスではイラク戦争の検証が行われ、国連決議なしの攻撃について
「合法性はとても十分とは言えない」と結論づけられました。
キャサリンさんは内部告発者として、名誉が保たれたのです。

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記者:必要なら同じことをしますか?

キャサリンさん:悔いはないし、同じことをします。


(当時のニュース映像 映画「オフィシャル・シークレット」より)

政府の不正を暴き、戦争を止めようとたった一人で立ち向かったキャサリンさん。

自身の経験から、内部告発者に対する保護を訴えます。

キャサリンさん:
特に安全、国の安全に関わっている人々に対して、イギリスでは内部告発者に対する保護というものが全くない状態なんです。
この作品が英国をはじめ日本でも公開されていますが、それに合わせて関係者や色々な団体が力を合わせて内部告発者を保護していく活動ができないかと考えています。
内部告発者を守る、支えていくということは正しい社会が機能するためには必要なことだと考えています。

逮捕から17年、映画のヒロインとなったキャサリンさんですが、自分は「幸運だった」と強調し、世界中の政府機関で声を上げることが難しい、内部告発者の保護を訴えています。

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【取材後記】
映画を観て一番印象的だったのが、キャサリンさんが内部告発をしようと背中を押した要因のひとつに日本の広島で過ごした経験があったということでした。
様々なリスクを冒してまで内部告発に踏み切らせた、広島での経験とは一体何だったのか。入社1年目で、初めてのリモート取材。勇気を出して取材を申し込みました。
実際に話をしてみると、やわらかで丁寧な語り口で、“正義感溢れる勇敢な女性“という、映画を観て感じたイメージとのギャップに驚きました。
インタビュー中、時折娘の様子を気にかける様子から、優しい母の顔が垣間見える場面もありましたが、画面を通して常に向けられたまっすぐな視線からは、芯の強さも伝わってきました。
日本にも社会のためになる内部告発をした人を保護する「公益通報者保護法」が存在しますが、実質的には、組織の同調圧力から告発できる人は少ないとみられているそうです。キャサリンさんの体験を遠い過去の話とするのではなく、現在の日本の組織のあり方や、内部告発者を取り巻く状況にも目を向ける必要があると感じました。


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報道局記者 長谷川美波  

2020年入社。社会部を経て、現在は「Nスタ」で研修中。移民や働き方の問題に関心があります。趣味はバスケと、自然めぐり。最近は火曜ドラマの奥深さにハマっています。

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