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廷内スケッチってどういう人が描いてる?【教えてTBSニュース】

【教えてTBSニュースに寄せられた質問】
Q.廷内スケッチってどういう人が描いているんですか?
裁判担当の加賀記者が回答します!「元農水事務次官の熊沢英昭被告が長男を殺害した罪に問われた裁判」で実際に根本さんが描かれ、放送に使われたスケッチもご覧ください。

法廷画家 根本真一さん(80)

「根本さん、もう時間です。1分後に接写させて下さい」
「もうちょっと待って、この線をもう少し・・・」

大きな裁判の度に、TBSの司法記者クラブで繰り広げられる裁判担当の記者と法廷画家、根本真一さんとの会話です。最近ですと「元農水事務次官の熊沢英昭被告が長男を殺害した罪に問われた裁判」。この裁判は裁判員裁判の対象事件で連日公判が東京地裁で開かれた為、根本さんにもほぼ連日のようにスケッチを描いて頂きました。

実際にどの場面を切り取るか、事前に根本さんとは相談しますが、アングルや構図は完全に”お任せコース“です。というのも、根本さんはこの道およそ25年!! 私がスケッチについて申し上げるのは恐れ多いほど、長年取り組んでいらっしゃるのです。
法廷スケッチの難しさは、限られた時間で被告と裁判の象徴的な場面を切り取り、1枚のスケッチにするという点です。限られた時間と簡単に言いますが、本当に時間がない時は、11時に開廷した裁判で5分で法廷から出て来て貰い、残り5分でスケッチを仕上げて11時30分からのお昼のニュースのオンエアに繋げるという、正に“曲芸”です。根本さんの素晴らしさは、5分~10分しかない中で、本当に正確な描写をされるという事です。被告のネクタイの色、裁判長の表情、被告の姿勢まで・・。オンエアの際のスケッチを見る度に、その技術に感服します。これも、根本さんの長年の経験に裏付けられたものです。

根本さんの経歴をご紹介すると・・・。実は、TBS(東京放送)の元社員でいらっしゃるのです。入社は昭和41年(1966年)で配属先は当時の「美術部デザイン課」でした。27歳まで東京芸術大学の工芸科に通っていらした根本さんは、大学の先輩にスカウトされて入社試験を受けたということです。入社してからは、「関口宏のヤング720」「日本有線大賞」「サンデーモーニング」などTBSの看板番組のセットや美術を担当。その後、法廷画家への道は突然やって来たそうです。きっかけは、「ロス疑惑」。1981年、三浦和義さんがアメリカで”妻を行きずりの犯人らに殺害された夫“から”保険金目当てで妻を殺害した“として、報道が過熱した事件です。当時、この事件の裁判は2003年頃から日本で開かれ、三浦さんへの判決は地裁の無期懲役から一転、高裁で無罪判決が出て、その後に確定しました。この裁判で法廷画家を依頼され、スケッチを担当した根本さんは抜群の画力を買われ、一時は別の画家さんに引き継いだものの、60歳で一度、TBSを定年した後も法廷画家として80歳となった現在まで続けることとなりました。根本さんのモットーは「生涯現役」だそうです。

また、法廷スケッチ以外にも昔、使用されていた「TBS」のロゴも実は根本さんが考案したものが長年、使われていました。

※上記写真の携帯に映っているロゴが根本さんによる考案のもの

当時、社内では社旗を作るという課題の元、全国から社名のロゴを一般公募したそうです。その際に、社内の美術部からも案を出すことになり、根本さんの案が何万通の応募の中から選ばれました。

このように、連日の裁判でも毎回、構図や印象を変えてスケッチを描いて下さる法廷画家の根本さん。いつまでもお元気で生涯現役を貫いて頂きたいと思っています。



【加賀千草 経歴】
2004年入社。報道局の社会部で警視庁記者クラブ、司法記者クラブ、警察庁担当などを歴任し、夕方ニュース「Nスタ」のディレクターを担当した後、2019年5月から裁判担当記者に。第二子の出産の為に2019年12月から産休に突入。