🇮🇱イスラエルでワクチン接種した日本人に聞きました
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🇮🇱イスラエルでワクチン接種した日本人に聞きました

人口が東京23区より少ない923万のイスラエルでは去年12月19日にファイザー/ビオンテック製のワクチン接種を開始。60歳以上や医療従事者、基礎疾患など重症化リスクのある人が優先に受けているが、16歳以下と妊婦はデータが出ていないということで接種の対象から外されている。1月13日時点で、国民の23%にあたる、199万人が1回目の接種を終えている(オックスフォード大学運営Our World in Dataより)。今回話をうかがったのは、テルアビブ大学東アジア学科で日本語を教えるイスラエル在住歴約30年の山森みかさん(60)。1月1日にワクチンの接種を受けた。接種までの動きや当日の様子、イスラエル人の国民性など多岐にわたった(インタビューはZOOMで1月6日に実施)。 

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イスラエルの現状

感染者数はすごく増えている。英国型の変異ウイルスだかが蔓延してるんじゃないかっていう観測は出ていて、1日に今は新規感染者は8000人とかで、現在3度目のロックダウン。いわゆるハンマー&ダンス(厳しい感染防止対策の後、経済活動と両立させて、流行をコントロールすること)で、春に1度目のロックダウンをやって、その時に感染者数が抑えられてみんなこれで終わったと思ったら、やっぱりじわじわ伸びてきて。夏に頑張って秋にもう1回ロックダウンをやって、その時も経済がもたないっていうことでまたちょっと緩めて、そしたらまた(感染者数が)すごく伸びてきた。3度めともなると、みんなあまり聞かなくて。それで割と早い段階からもうこのゲームチェンジャーはワクチンしかないんじゃないか。つまりどれだけ頑張って政策をやってみてもイスラエル人には無理だ、と。あとはやっぱりこの年末にドイツとか、すごくうまくいったような国がやっぱりじわじわと(感染者数が)伸びてきて「どんなにうまくいっててもやっぱり無理なんだ。これはワクチンしかない」みたいな機運がイスラエル人の間に広まっていたというのがあります。

ワクチン接種への不安

不安が全然なかったと言ったらウソになりますが、さほどありませんでした。これまでの経験から私はイスラエルの医療レベルを信頼しているので、この国のトップの医療関係者がGOサインを出しているなら大丈夫だろうと。それに私より先に、ご近所や友人、親戚の60歳以上の人たちが軒並み受けていました。自分が世界で第1号ならかなり不安があったかもしれない。イスラエルでワクチン接種後に亡くなったという報道がありましたが、こんな短期間に100万人以上の高齢者や基礎疾患がある人が接種を受けるんだから、多少の副反応、あるいはワクチンとは関係なく亡くなったり具合が悪くなったりすることはあるだろうと思っていました。

実際にワクチン接種を受けてみたら

屋外接種所

(屋外に設置された接種所)

わたしが受けたのはクリニック内で、カーテンで3つか4つか、ブースみたいに分かれていました。たぶんひとり5分とか10分で予約を回していくと思うけど。病院だったら、院内だったり駐車場だったり。あとドライブスルー方式で。あのなんかすごい、車で行ってテントみたいになっているところもあった。屋外もあるし、体育館みたいなの借りて臨時の設置所もあった。

ガッツポーズワクチン

筋肉注射で、直角にぶすっと針を刺します。うまい下手があると思うけど、特に痛くなかったです。打っているのは医者、看護師、衛生兵。防護服とかは着ていなかった。マスクはもちろんしていました。

私は撮っていませんが、場所によっては写真スポットがあるので、みんな「イエーイ」って撮っていました。イスラエルとしては広報になるので、国としても人に(接種に)来てもらわないと、ということなんでしょう。ユリ・ゲラーさんも接種の瞬間にスプーン曲げていました。

ユリゲラー

(スプーンを曲げるイスラエルの“超能力者”ユリ・ゲラーさん)

ワクチン接種後の体調

普通のインフルのワクチンと同じで、ちょっと最初の日は腕が重いかなと思いましたが、それ以外は特に何も感じませんでした。腫れたりもなくて。でも人によって違うと思うので。接種当日はお風呂NGとかもなかったです。

2回目の接種の案内

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(ワクチン接種の証明書)

1回目に受けた証明書に名前とか住所とか、ロット=ファイザーのワクチンの何番目とか書いてあって、それがあるとクリニックの受付の人が、ネットで3週間後の予約は入れてくれます。1月1日に受けたので1月22日の予約が入っています。

イスラエルのスピード感

11月の段階から「ワクチンがあったら買い付けるんだ」という報道があった。ファイザー社とモデルナ社はマイナス70度°、マイナス80度°の冷凍庫(での保管)が大変だって言うので、とにかく政府は冷凍庫とドライアイスの確保にも努力するってことはその時から言っていました。11月にファイザー社とイスラエル政府が何百万回分だかを契約した。送るのは年末とか言っていたんだけれども、それが1週間ぐらい早く来て。12月19日の夜からネタニヤフ首相とエーデルシュタイン保健相の2人がワクチン接種の第1号、第2号になるっていうことで接種の様子を生中継して、「とにかく大丈夫なんだ」と。「とにかくがんばってみなさん、接種しよう」みたいなことでした。まず医療関係者は自分の病院で受けて、あと60歳以上の人と基礎疾患を持っている人、心臓病や糖尿病とか。そういうリスクグループの人は12月20日からの予約ができるから皆さん順次予約してくださいと、報道でも言ってるし、保険組織から、直接メッセージがきました。

ネタニヤフ

(1度目のワクチン接種を受けるネタニヤフ首相)

イスラエルの保険システム

イスラエルは日本と同じく、国民皆保険で、健康保険の組織というか機構というのが4つあって、いずれかに入らなくてはいけない。給料から差し引かれたりして保険料を毎月納めます。わたしが属しているのはクラリットというところで、そこに情報が全部入ってるんですね。だから ID ナンバー、過去の通院歴とか処方された薬とか全部1つの番号で管理してあるので、そのデータベースから60歳以上の人をピックアップして携帯とかメールとかで個人に連絡が来ます。ワクチンは無料です。

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(実際に山森さんに届いたメール。「今回接種対象になっている60歳以上であるなら、すぐに案内が行って予約できるようになるから、ネットかアプリ、あるいは電話で予約せよ、と書いてある)

その組織が独自にクリニックとか病院とか医者を持っている。普段から自分(の家)に一番近いクリニックに1人ホームドクターがいて管理している。産婦人科、皮膚科とかその特殊な所に行かなきゃいけない時には、ホームドクターからの紹介がなくても、保険組織のウェブサイトに行けば直に空いてるところにも予約を入れられるシステムになっている。そこにパスワードを入れれば自分の予約も見れるし。(属する保険組織に)全ての個人情報が握られている、良くも悪くも。

ワクチン予約の仕組み

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(予約する際のホームページ)
予約の案内が12月19日にメールで保険組織から来た。最初の1週間はあまりにも予約が殺到してシステムもダウンしているし、電話もつながらない。私は12月22日にホームページに何度かトライしてみたら、重かったけど何とかつながって、2月の中旬の予約が取れたんですね。私としてはこれでいいと思っていたんですけど、イスラエル人はそういう国民性ではなくて、これだけ国がキャンペーンをやってて1月末までにすべてのリスクグループと高齢者には接種を終わらせるって言ってるんだから何か方策があるはずだって。一応今私の把握しているところでは、接種のシステムは3つある。①自分の属している保険機構を通して予約を取るシステム。②高齢者施設には打つ人たちが巡回してくる。③一部病院や独自に接種所を設置したところでは①のやり方ではなく、直接行って、接種の権利がある人はそこで接種する。ただ待ち時間が、運次第。
③について話を聞くとアラブ人が多く住んでいる地域では、どうしてもワクチンに対する忌避感が強い、と。アラブ人の若い人は接種したいんだけど、接種を呼びかけられている老人は腰が重くてそのせいで予約が取りやすい、だからユダヤ人がそこに行っている、みたいな話があって。それでうちも29日にネットを介さずにナザレという地域の、私が属している保険組織のクリニックに直で電話をしたら、「1月1日が空いてるから来なさい」って言われて、予約をそこで取れたんで、夫と受けました。

無題

当日飛び込みでも在庫あればOK

イスラエルはけっこうゆるいので、予約がなくてもどうしてもって言ったら、来たら入れてあげるよみたいな感じではあります。本当にお年寄りの人がそこに来ちゃったら追い返すより接種したほうがいいので。予約したほうが安心なんだけれども、 IDナンバーでその人が何歳か分かるので、その人が接種の資格を持っていて、空きがあればどんどん入れてくれる。お役所仕事なんだけれども、現場の裁量っていうのが大きい。特に今回はワクチンは冷凍庫から出したら使用期限が2日ぐらいしかないのかな、それで診療所によっては、余らせるくらいなら、付き添いで来た若い人が望めば摂取してくれたりした。これに関しては、怒る人もいれば「どうせ将来的に打つんだから合理的だ」という人もいて論争になっていた。

アレルギーについて

とにかく2週間の間に130万人だか140万人だかのお年寄りとリスクグループが接種したんだから、多少体調が変化する人はいるとは思う。イスラエルの保険組織のシステムでは、アレルギー歴が全部一目瞭然なので、私に接種した人もすごくアレルギーのところ見ていました。深刻なアレルギーの症例っていうのは1例、アナフィラキシーだった人がいたみたいですが、すぐにアトロピンとかの注射をして大丈夫だったと聞きましたが。接種後、10分から15分程度、待機する場所を設けてそこで体調の変化がないか見るところもあると聞きました。私が受けたところにはなかったですけれど。テレビにはアレルギー専門医が出てきて「食品のアレルギーくらいでは全然問題がない、ちょっと痒くなるとかその花粉症とかって全然問題がない。過去のインフルのワクチンの接種で何か問題があった人は注意すべきなんだけれども、そういう人は入院してもらって医師の管理下でちゃんと接種する方策はある」と主張していました。入院とは少量ずつ接種する、点滴みたいな感じとかってことだと思います。

ワクチンを打ってみて

打って良かったかはまだよくわからない。とにかくこのプロジェクトというかワクチンがこの国ではゲームチェンジャーだと思っている。高齢者が1番重症化しやすいので、自分の重症化リスクを下げることは、自分のためっていうか医療を圧迫しないためにもすごく重要。私も別にほかの人を押しのけてまで自分が先に接種受けたいと思わないんですけれども、予約が簡単に取れてちょっと頑張れば接種できるんだったらばもちろんこのプロジェクトに参加した方が社会的に意味があるとは思いました。
重症化すると自分が困るだけじゃなく家族も困るし病院も困るし。国としてもとにかく重症化さえしなければ、若い人の経済活動とか若い人が学校に行ったりすることも出来るので。その若い人が家に帰ってきておじいちゃんおばあちゃんとかに移すのがやっぱり問題。その人たちのリスクを下げるって言うことには合理性があるとは思いました。

パレスチナの人は

パレスチナ

イスラエル国内にいるイスラエル国籍のアラブ人はもちろん受けられる。私が受けたところはアラブ人地域で、なにをもってパレスチナ人というのかすごく難しい問題。アイデンティティの問題なのか、地域の問題なので、イスラエル国籍を持っているアラブ人の方でも自分はパレスチナ人だっていう方はいっぱいいるんですね。でもその国籍はイスラエルなんですよ、アイデンティティがパレスチナ。それでパレスチナ地域、自治政府なりハマスなりが政権を敷いているところに住んでいる人は、保険が別なので受けられない。つまり、その人たちが保険組織に加入しているかしていないかなんです問題は、人種ではなくて。

ネタニヤフ首相が大量のワクチンを買えた理由

いろんな憶測は飛び交っている。お金積んだとか、モサドが握っている国際情報と引き換えなんじゃないかとか。あとはファイザーの経営陣にイスラエル人がいたとか、モデルナの開発にイスラエル人がいるとか個人的人脈もあるんでしょうけど、とにかく手腕がすごいのは確か。どんな手を使ったか分かりませんが、ネタニヤフ首相がこんなに短期間にこんなに大量のワクチンを買い付けたっていうのはやっぱり一つの手腕であって、どれだけネタニヤフ首相を嫌いであっても国民がその恩恵を受けていることは確かであり、なかなか難しい複雑な気持ちになります。

イスラエル式ロックダウン

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(山森さんの近所にあるキオスク。野菜や乳製品、パンなどが買える。「マスクをしていない人は入店不可、一度に5人まで」と書かれている)

自宅から1 km 以上離れてはいけないことになっている。スーパーとか、どうしてもはいい。みなさんどうしてもな理由を見つけてくるけど、ただ遊びに行く、はダメで。仕事とかスーパーはいい。テレワークも多い。スーパーや薬局は開いている。レストランは 今まではテイクアウトはダメでデリバリーだけは良かったんですけどもうダメになると思います。家で料理するしかないです。
(経済的には)全然大丈夫じゃない。みんな失業保険もらって、あと休業補償も今そんなになくてすごく怒ってて、すごく怒ってる人たちがデモをするから、またいっぱい人が集まって密になって。

国民の不満

元々イスラエルはユダヤ教正統派だとかイスラム教徒とかが入って、宗教的な信念が強い。ロックダウンとか言われてもやっぱり集会、特に宗教的集会を確信犯的にやったりする人たちが多いのでどうしてもすごい罰則が厳しい。マスクは装着義務があって、装着してないと罰金が日本円で1万6000円ぐらい。開けちゃいけない店が開けていたり、隔離しなきゃいけない人が出歩いたりしたら16万円の罰金があるんですけれども、罰金があろうが確信犯的にそう(違反)してしまうのでなかなか難しいものがあります。

(記者:罰金はみんな払うんですか?)

素直な人は払う。ただ、不服を申し立てできて、裁判、あと警察でもできる。払ったのは切符を切られた人の半分くらい
と聞いています。

(記者:開けちゃいけない店とはどんな店?)

すごくちっちゃい小売店で今開けないと死活問題だという店。あとは美容院。店のカーテンは閉めてあるけど、常連さんでどうしてもっていう人は裏口から入れてこっそり切るというやり方が流行っていまして。みんな髪切りたいから。それなのに、ネタニヤフ首相のサラ夫人が自宅にお抱えの美容師を呼んで髪を切ったっていうのが公になって、みんなすごい怒って。私たちは髪を切りに行ったら罰金になって、なんで首相夫人だけ家に呼べるのかって。どこの国も同じ。政治家の人たちは自分たちは特別だと思っていて、庶民には何かが我慢を強いるみたいな構図が明らかになったので、庶民はもう自分達も我慢しないみたいな感じになった。それで、いくら上からロックダウンとか罰金とか言われても、「知るか」みたいになって。秩序をどう守るかって問題。守れない人が増えたら警察だってもう守れない、ちまちま切符を切ったって100人マスクしてないところに警察官が1人で行っても何もできないわけですから。連日政府へのデモは起きています。

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コロナでもデモ権

本当に市民的不服従っていうのは非常にイスラエルは伝統的に強くって、2つそれに考え方があって、1つは宗教なんですね。ユダヤ教の人たちは宗教的な法の方が世俗の法律に優越してるって信じてるんですよ。
だから神様の方が首相より政府よりえらいから、神様が集まれって言ったら自分たちは集まるんだってそこはもう揺るがないわけですね。で、もうひとつのほうは、世俗のユダヤ教もそんなに信じていない人は、市民の自由を信じている。移動の自由や政治的主張をやめられることへの忌避が強くて。イスラエルは最初から行かなきゃいけない外出に①薬品や食物買う、②宗教的集会に行く、③デモに参加する。これはみんながあきらめられない3つの権利だった。デモ権、集会。宗教的、政治的な集会は人間の基本的な権利なので、それは制限するような法律なり政府の主張は、絶対に間違っていると。

デモ

日本では今はデモやらないでしょう。イスラエルは逆で、そこだけは死守するって人がいて違うなって思いました。でもあんなに政府に反対してたのにじゃあやっぱりワクチンとかって言ったら、最初の世論調査では半分ぐらいの人がちょっと信頼できないって言ってたのに蓋を開けてみたらもう予約殺到で変に合理的。自分たちの自粛とか罰金じゃもう無理で、科学的ななにかでウイルスとは戦うしかないってみんな思ってたんだなって思いました。

イスラエルの入国規制

12月になって誰でも外国から帰ってきた人は空港から直に政府指定のホテルで2週間強制隔離になって、それがあまりにも評判が悪くて。みんなホテルのロビーに集まって手にプラカード持って「うちに帰りたい!」って飛んだりしてデモをしたのでそれはすぐに撤回になった。イスラエルはみんな受け入れられないとすごく騒ぐので政府も「わかったわかった」ってなって割とすぐ撤回します。

イスラエルではすでに2度目の接種も始まりました。9日に2度目を完了したネタニヤフ首相は、3月末までの16歳以上の国民全員への接種を約束。ロイター通信は、イスラエルが他国の2倍の金額でワクチンを購入したことも驚異的スピード購入の背景にあると報じています。ただ、山森さんが話していたように、政策で抑えられないからワクチンに頼る、というイスラエル政府、そしてその政府へのデモが毎日起き、感染も増えていて(デモ以外の要因もあると思いますが)1月11日には1日当たりの感染者数が9725人(日本の人口に換算すると約13万3000人)、累計感染者数も50万人を超えています。ワクチン先進国として、日本など後発国のモデルとなりえるのか、正念場を迎えています。(聞き手:デジタル編集部 遠藤弥生)

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