わたしのWHY 東京オリンピック・パラリンピックはどうなる?
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わたしのWHY 東京オリンピック・パラリンピックはどうなる?

ニュースが少しスキになるノート from TBS

今回のnoteは、開催まで半年をきった東京オリンピック・パラリンピックについてです。本当に開催できるの?開催するとしたらどのような形になるの?など、気になることを皆川アナが都庁・五輪キャップの中道記者に聞きました。

■東京オリンピック・パラリンピックは開催できる?

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皆川アナ:
ズバリ、中道さんから見て東京オリンピック・パラリンピックの開催は可能ですか?

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中道記者:
「東京大会の開催は可能」だと思います。もちろん、いくつか条件はありますが、最も大事なのはオリンピックの開催に絶対必要なアスリートが来られるかどうか。各国からアスリートが来ることができれば、観客の有無は置いておいても、開催することはできると思います。今、できるか、できないかの1か0の議論になっています。大会開催のイメージを変えてみることも必要です。恐らく一昨年のラグビーワールドカップのようなものを想像されている方が多いと思いますが、あのフルスタジアムで世界中から観客が来て、どんちゃん騒ぎするような、あの形での開催は、ほぼ不可能だと思います。ただコロナ対策を徹底して、選手も、関係者も、観客も、きちんと管理された安全な状況を作り出せれば、大会の運営はできると思います。たしかに感染状況が落ち着くことも、ワクチンが広く行き渡ることも期待されますが、そういう前提なしに、コロナ禍でどうすれば開催できるかというのが、去年3月以降、ずっと議論されてきました。 どう選手を安全に日本に入れて、どう安全に競技してもらって、日本で感染を拡大させないか、こうしたことが考えられてきていて、今も続けられています。それなので物理的に、オリンピックのコアである選手が日本に「入国」さえできれば、日本でオリンピックを開催することは可能だと思います。

■欧米主要各国が不参加表明したら?

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皆川アナ:
いま「入国」とありましたが、世界のコロナ感染状況が未だ厳しい中で、各国から選手団を派遣することはできるのでしょうか。アメリカやイギリスなど欧米の主要各国が参加できないと大会の開催は厳しいのではないですか?

中道記者:
東京大会は206の国と地域から参加が予定されています。たしかに、アメリカやイギリスなどオリンピックで多くのメダルを獲得する主要な欧米各国が選手を派遣しないとなれば、IOCが開催しないという方向に大きく傾く可能性はあります。ただ、欧米が参加しないからオリンピックができない訳ではない。ある組織委員会の幹部は、「すべての国からアスリートが来られなくても開催はできる」と言っています。その根拠として、過去に東西冷戦の影響で日本がボイコットしたモスクワ五輪のときに、半分程度の80か国で開催されたことをあげています。ロス五輪も参加国は140か国程度に留まりました。ただ現実的に、欧米各国が参加しないとなると、大会の価値がやや失われる部分もあり、IOCが大会の中止を決断する可能性はあるかもしれません。

■選手から延期を求める声もある

皆川アナ:
去年延期が決まった際、選手から延期を求める声があがりましたよね?

中道記者:
はい。ただ今回、選手も簡単に延期を訴えることは少ないと思います。選手生命をかけて1年延期を受け入れこの夏の大会にかけています。去年ギリシャの陸上選手が延期を訴えましたが、この選手も今回は去年と違ってコロナへの対応の仕方が分かるとして開催を強く求めています。今のところIF(=国際競技団体)などから反対の声は一つも出ていないようです。

■国内世論は厳しいが、大丈夫?

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皆川アナ:
JNNの世論調査では東京大会の開催について「支持している」と答えた人は13%にとどまりました。大会の開催に悪い影響があるのではないですか?

中道記者:
森会長も先日「一番大きな問題は世論」と発言しています。緊急事態宣言も延長され、ここで感染を抑え込めなければ、ますます五輪開催ムードは落ち込んでいきます。ただ開催できるか、できないかという視点でいえば、現時点の国内世論が支持していないから、開催できないと直接結びつくわけではありません。開催の決定権を握るのは、あくまでもIOC。とはいえ、アスリートも歓迎されていない大会に参加するのは辛いという声もあります。陸上女子1万メートル代表に内定している新谷選手は「アリスリートだけやりたい、国民はやりたくないでは、開催する意味がなくなってしまう。応援あってこその私たちが表現できる場所」と話しています。各国の選手も、歓迎されないホスト国に行くのは悲しいことだと思います。今後、国民の理解や共感を得られる形で、国、東京都、組織委員会、IOCは、東京大会の開催に向けた機運醸成をしていかないといけないですね。

■医療体制は確保できるの?

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皆川アナ:
当初は会場に医師・看護師1万人以上を無償で配置させる予定でしたが“医療崩壊”の中で東京大会のために医師を確保できるのですか?

中道記者:
これは非常に難しい問題です。大会期間中、医師や看護師、理学療法士らが1万人必要とされています。組織委員会は、大学病院などに協力を要請していますが、理解を得られなければ、円滑な運営は難しくなります。都内の医療体制が逼迫していることを踏まえ現在、日本医師会は外国人客について「受け入れ可能ではない」と言っています。都医師会は「無観客で開催すべき」と厳しい姿勢を示しています。集められる医療スタッフが何をするのかというと、いわゆる競技会場などに設置される「医務室」での対応が中心です。ドクターの専門分野も特に縛りはありません。ですので今コロナ感染症に携わっているドクターが五輪対応をするというのは、あまり想定はできないと思います。ただ、やはり大会時に感染が拡大している場合、医療従事者を五輪のために割くということ自体が、どこまで都民・国民の理解を得られるのかという部分があります。ましてやこの時期は、ワクチンの接種も同時並行で進められているようなタイミング。ここはすごく感情的な部分で、組織委などは五輪開催でも感染症対応や通常医療に大きな影響を及ぼさないということをきちんと説明する責任があります。

■観客入れて開催はできるの?

皆川アナ:
仮に大会が開催されるとして観客はどれくらい入れるんでしょうか?

中道記者:
いま組織委員会などは「無観客」、国の基準の「5000人」「収容率の50%」「フルスタジアム」でのシミュレーションを行っています。まず無観客であれば選手だけを厳格に管理すれば良いので、医療従事者への理解は得られやすいと思います。ただ無観客となると、組織委員会は900億円のチケット収入を失うことになり、スポンサーも黙ってはいない可能性があります。ある組織委員会の幹部は、緊急事態宣言下でもスポーツイベントが無観客開催となっていないことを踏まえ「少なくとも国内客に限っての開催はできる」と自信をのぞかせていました。今判断するのは難しく、3月末の感染状況次第で国のイベント規制基準に沿って判断されます。

■外国人客は来ないの?

皆川アナ:
国内客に限ってという話だったが、外国人客を入れての開催は難しいということですか?

中道記者:
外国人客を入れるとなると、かなり複雑になります。去年12月にまとめられた中間整理では、外国人客は公共交通機関を使って移動することが想定されています。変異ウイルスの問題もある中で、都民や国民は、世界中から来た観客が自由に公共交通機関を使うことを受け入れられるのか。ただ国は外国人客を入れることを諦めているわけではありません。関係者によると、国は一定の行動制限をかけたうえで、五輪チケットを持っている外国人客に限って特別に入国させる方法も検討しているようです。もうひとつ外国人客もそうですが、観客の上限を決めるうえで重要なのは、3月末時点の菅内閣の支持率。現状、支持率が下落しているので、どこまで思い切った判断ができるのかというのが大きな要素になるのではないでしょうか。

■東京大会のコロナ対策とは?

皆川アナ:
仮に開催できるとして、どんな対策が検討されているのですか?

中道記者:
去年12月に、コロナ対策の中間整理がまとめられています。それによると選手は出国72時間前、入国時、入国後4~5日おきに検査、行動範囲は原則選手村と競技会場・練習会場のみ、専用車両で移動、活動計画書と誓約書の提出。観客は、外国人客は、コロナ対策などを前提に、原則2週間隔離を免除、移動は公共交通機関を想定、大声の会話など感染リスクを高める行為を禁止、売店やトイレなど混雑場所での間隔の確保となっていて、実はまだ中間整理の段階でコロナ対策について課題は山積している状況です。

■安心・安全への信頼感・納得感は?

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皆川アナ:
色々コロナ対策が検討されているのはわかりましたが、本当に安心・安全なのか、まだ少し不安な部分はあります。

中道記者:
今後は「安心・安全」をいかに説得力を持って都民・国民に示していけるかが大会の機運醸成にとっても大切です。国や都、組織委員会は、去年9月からこうしたコロナ対策を検討してきています。例えば、外国人客を入れる場合、公共交通機関を使うことになるわけで、どこまで安全なんだという納得感を与えられるかが今後の判断において重要になります。安心安全への信頼性を高めていって、都民・国民にこれなら大丈夫だねと言われるようになれば、結果として東京大会の機運も盛り上がってくると思います。

■大会組織委員会・都庁内の温度感は?

皆川アナ:
実際のところ取材をしていて大会組織委員会、都庁の温度感はどうですか?

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中道記者:
取材をして感じるのは、諦めている人はいないということです。たしかに今は五輪について大声で話せないと多くの職員がやるせなさを持っているように感じます。ある都の幹部は「今は力をあわせて五輪をやりましょう!とはとても言えない」と話していて、機運を盛り上げるきっかけ、転換点をみつけられずに苦しんでいる様子がうかがえました。それでも開催都市である東京都も、大会運営を担う組織委員会の職員もみな開催を信じて、粛々と準備を進めています。あと最近、政府も小池知事も「コロナに打ち勝った証」という言葉を使わなくなりました。代わりに、東京大会を「連帯の象徴」にしたいと。関係者に話しを聞きましたが、打ち勝った証というのがすごく空々しく聞こえるし、使いにくくなってしまった。だから「連帯の象徴」という言葉にしたと言っていました。東京大会のイメージを変えることも考えているなと感じました。

■そこまでして開催しなきゃダメ?

皆川アナ:
世界的にコロナの感染収束が見通せない中、苦しんでいる人もたくさんいると思いますが、それでもこの東京大会を開催すべきなのでしょうか?

中道記者:
オリンピック・パラリンピックを開催する意義は何かということだと思います。オリンピックの主役はもちろんアスリート。スポーツを通じて多くの人に感動を届けてくれます。それだけではなく、これだけ力を入れているのは多くの「レガシー」を残してくれるからなんです。レガシーとは、経済的にも、社会的にも、文化的にも得られる長期的な恩恵のこと。たとえば、成功したといわれるロンドン大会では、障がいのある人への理解が進んだと言われています。街はバリアフリー化が進み、大会を通じて障がいのある人に関心が広がり、街で困っている人を見つけたら積極的に声をかける市民が増えるなど、心の面の変化もあったといいます。IOCはLGBT差別のある国では大会開催を禁止していて、こうしたことから多様性教育も広がったといわれています。また経済の活性化もさることながら、世界中にテレビなどを通じて中継されることで、日本の例えば水素技術などの技術力、さらに日本の文化もこの機会に発信でき、世界に向けて日本という国をアピールできます。こうした恩恵が花開くのが、やはりオリンピック・パラリンピックを開催したときです。単なるスポーツイベントではない、多くのレガシーを生み出すものと捉えられています。

■東京都としては早めに決定してほしいのが本音?

皆川アナ:
2月にIOCと日本側の4者会談があると聞きました。大会開催の可否が話し合われるのでしょうか?そもそも開催可否判断のデッドラインはあるんですか?

中道記者:
2月の4者会談は大会開催に向けて頑張っていこうという機運醸成的な場になると聞いています。デッドラインという話がありましたが3月末はひとつ注目していいのかなと思います。3月25日から聖火リレーが始まります。また大会運営をするための契約を結ぶ時期でもあります。この時期に日本含め世界で爆発的感染が起きて、変異ウイルスも猛威を奮っていたら、大きな判断が下される可能性はゼロではない。ただ、選手さえ入国できれば開催はできると思うので、この時期は基本的には観客の上限がどうなるかの判断時期だと思って頂いた方がいいかなと思います。


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中道秀宜 記者

2008年TBS入社。報道局社会部、埼玉県担当、福島第一原発事故後、原子力規制委担当、その後宮内庁、情報制作局「あさチャン!」、再び社会部、宮内庁キャップ・天皇の代替わりを取材、去年から都庁・五輪キャップ。

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