「発酵から日本を再発見する」発酵デザイナー小倉ヒラクさん(前編)
柿次郎:
Dooo!!編集長の徳谷柿次郎です。本日はこちら!発酵とは?って書かれていますけど、渋谷ヒカリエで開催されている「ファーメンテーションツーリズムニッポン」の展示会場に来ています。そして、今回のゲスト!発酵デザイナーの小倉ヒラクくんです。
小倉:
どうも、こんにちはー。よろしくお願いします。
柿次郎:
よろしくお願いします。いやぁこれ、どんな展示なんですか?
小倉:
これはですね、47都道府県のその土地ならではのローカル発酵文化を47+1集めた展覧会になっております。
柿次郎:
なるほど・・・噂には聞いています。全国を駆け巡って、何度も病に伏せながらこの地に辿り着いたという・・・
小倉:
野宿したり凍え死にそうになりながら旅して来た結果の展覧会です。
柿次郎:
今日はこの発酵の素晴らしさと面白さってものを伝えるDooo!!でございます!
小倉&柿次郎:
Dooo!!
「ファーメンテーションツーリズムニッポン」と題し全国のローカル発酵食品を大都会東京のど真ん中渋谷に集めたこの展覧会。
誰もが知るものから・・・
まったく聞きなれないものまで。
自らの足で全国を旅しながら発掘したのが
今回のゲスト発酵デザイナーの小倉ヒラクさんです。
発酵デザイナーとは
柿次郎:
一応・・・発酵デザイナーってなんですか?
小倉:
そうですね。僕元々デザイナーだったんですけど、25歳くらいから地方で仕事すること増えて。山梨の酒屋さんとの出会いがあって、発酵っておもしろいなって微生物って面白いなってなってハマって、そっから微生物とか発酵に関わるプロジェクトばかりやるデザイナーになって、それが5年前で。
そこからさらに東京農業大学の醸造科「もやしもん」の舞台校ですね。そこで発酵学を学びなおして、そういう意味では半分専門サイエンスをやりながら、クリエイティブのとこの両方やって、今回みたいに展覧会やって誰でも微生物の世界・発酵の世界ってものにアクセスできる色んなプロジェクトをやっています。それが僕の仕事なんですね。
柿次郎:
元々付き合いも長くて小倉ヒラク君とは。
小倉:
はい。
柿次郎:
発酵デザイナーを名乗り、本・・・。発酵文化人類学という本をつくり、
それを全国手売りのように、新たな本の売り方をチャレンジして、相当疲れてたのに、二度とやりたくないって言ってたのに、また!
小倉:
また、日本全国47都道府県を旅して展覧会をやるっていうね・・・。
柿次郎:
なるほど、展覧会をするために、日本全国をめぐって、その土地土地の発酵食品、まだ世に出てないような・・・。
小倉:
・・・(出ていないような)ものもいっぱい扱ってますね。この番組はDooo!!でしょ?
柿次郎:
Dooo!!です。
小倉:
やってるってことでしょ?
柿次郎:
やってこです。
小倉:
柿次郎:
(爆笑)やりすぎ、ですよね。
小倉:
やってきました。やってきたことの結果がコレです。
柿次郎:
もうこれがDooo!!の、結晶ですね(声かすれる)。
小倉:
Dooo!!の結果! Dooo!!した結果です。
柿次郎:
もう声がかれてますけど僕(笑)
小倉:
僕ももう若干頭バカになってますけど。大変すぎて。
柿次郎:
まぁこれをやってみようと思ったきっかけとか?もちろん皆さんね、
味噌汁とか、発酵食品ですね、納豆とか、あとパン・・・
小倉:
チーズ!
柿次郎:
チーズ・・・
小倉:
キムチ!
柿次郎:
キムチ・・・
小倉:
お酒!
柿次郎:
お酒・・・日本酒、ビールもそうか。
小倉:
はい。
ローカルのすさまじさを伝えたい
柿次郎:
結構まわりに発酵食品いっぱいあると。そのなかであらたな発酵食品を自ら足をつかって赴いて何を伝えたいのかなって。
小倉:
そうですね・・・僕もずっとローカルのところで仕事しきて、僕の専門は発酵と麹を使った発酵技術なんですけど、今回は単純に日本の発酵食品おいしいよ、健康にいいよってことではなくて。まぁそれも大事なんですけど、
柿次郎:
ほう、すさまじい。
小倉:
その多様性と、ガラパゴスっぷりと、そこに生きている人たちの世界観がいかにすごいかっていうことですね。
僕ずっと旅しながら仕事してるんですけど、それをみんなに伝えたくて直感的に伝えるためには、ストーリーだけ話すのではなくて、その実際のものをいっぱい持ってくると、ここの場所に集めて、
みんなにその実際のものを手にとったり匂い嗅いだりしてもらいながら、
もっと言うと、
みたいなことを感じてほしいっていうのがあって、今回展覧会をやってるんですね。
柿次郎:
結構壮大な。
小倉:
結構壮大。
柿次郎:
これぐらい分厚いことですね。Dooo!!の分厚さこれぐらい。
要はこれも、それぞれの土地の人が、余った食品とか、冬を越すために発酵という技術を用いて、生きるために生まれたものですよね。
小倉:
だからこのマップが一体何なのかっていうと、もちろん発酵食品の物産カタログでもあるんだけど同時に、
になっていて。その発酵という視点から、僕たちのご先祖様とか、お父さんとかおじいちゃんとか僕たち自身ですけど、どういう風にローカルで生きていったのかってことの記憶を浮き彫りにしていくっていうのが、こういう風にローカルで生きていったのかってことの記憶を浮き彫りにしていくっていうのが、今回の展覧会の趣旨なんですね。実は今回の展覧会はバイリンガル仕様になっていて、
英語でも読める今回渋谷でやっるのも理由があって、
っていうのがあって。
柿次郎:
なるほどなるほど。
小倉:
で、今回バイリンガル仕様にしてるんですね。単純にこういうことやってきましたっていうのを、日本の人だけだと、単純なアーカイブになっちゃうとそれが、海外の全然日本の文化を知らない人に見てもらったときに、それはすごくアーカイブではなくて未来の可能性に見えると思うんですよね。
だから、今回は英語で発信して、単純に日本人でこうやって生きてきたんだねっていうノスタルジーではなくて「これ、俺も食べたいし」とか、僕の微生物の研究者の知り合いも来てくれてるんだけど「この微生物もしかしたら、もっと違う可能性があるんじゃないか」とか「この食べ物を別の文化圏で応用したらもっと色んな可能性があるんじゃないか」みたいなことを感じてほしいっていうのもあるんすね。
柿次郎:
はぁなるほど。もちろん海外にも発酵食品の文化はあるけども、日本の多様で、層が厚い。
小倉:
そう。
柿次郎:
厚いのに気付いて触れて嗅いで。
小倉:
そう、で、新しい可能性を見つけて欲しい
*****Dooo*****
柿次郎の知らない発酵の世界
柿次郎:
なるほど。これ(マップ指差し)もちろんみたことある、しば漬けとかね。あと、かんずりとか新潟で見たり、甲州ワインとか有名ですけど。
小倉:
くさやとかね。
柿次郎:
水戸納豆とか・・・一部やっぱ見慣れない・・・山口のあまぎゃあとか、全然わかんないすね。
小倉:
その下の愛媛のいずみやとか。
柿次郎:
これ店じゃない?
小倉:
じゃなくてこれ、発酵なの。
柿次郎:
いずみやって。
小倉:
食べ物の名前。あとは長野のすんき漬けとか。
小倉:
富山の黒作りとか。
宮城のあざらとか。
柿次郎:
全然知らない!青森のごど、とかも全然わからないっすね。
小倉:
そうっすね、っていうのを今回発掘してきました
柿次郎:
え!くずもちって発酵してるんですか!?
小倉:
いや、神奈川のここのくずもちだけ発酵してる。
柿次郎:
このお店の?
小倉:
ここの周辺、神奈川の川崎大師の周辺の山道で売ってるくずもちだけ発酵してる。
柿次郎:(笑)たまたまではなくて・・・意図的に発酵したくずもちをつくった人が過去にいる?
小倉:
そう、ここに集まっているいっぱい。
柿次郎:
へー焼き饅頭も!?
小倉:
焼き饅頭も発酵してる!
柿次郎:
小麦を焼いてるだけじゃないの?饅頭。
小倉:
あれは元々甘酒だから。甘酒から饅頭を作ってる。
柿次郎:
ってのが、群馬の焼き饅頭。
小倉:
そうそう。
柿次郎:
じゃあ割と身近な食べ物でも、実は同じジャンルでも発酵してる場合がある。
柿次郎:
僕も大阪出身なので、しば漬けとか日常的に食ってるんですけど、このしば漬けもちょっと違うんですか?
小倉:
柿次郎:
あれって単純に紫色につけてる?
小倉:
本当のしば漬けって。京都の大原地区っていう、京都市内からちょっと北に上ったところだけでしかつくってないローカルお漬物で、今スーパーで売ってるやつってきゅうりとか色々あって、調味料とかも入ってるんだけど、本当のリアルしば漬け、大原のしば漬けは、大原でとれる赤しそとナスとちょっとの塩だけ、これだけで作る。
柿次郎:
すごいシンプル。
小倉:
シンプルで時間かけて作るんだけど、そうすると赤しそのフレッシュな香りと乳酸菌が作る発酵臭みたいなものとかうまく掛け合って、すごくフローラルな臭いになるんですよね。すごく品がある臭いになって、スーパーで売ってるやつもまずくはないんですけど、香りが全然違うんですよ。だから僕が今回取り上げてるのは、800年くらい前から作られているクラシックなレシピのものを取り上げている。
柿次郎:
ユーチューブのこの映像が何年残るかわかんないのに。
小倉:
奈良漬は1200年くらい残ってる。
柿次郎:
1200年!?
小倉:
金山寺味噌も900年くらい。
柿次郎:
すごいっすね時間軸が。
小倉:
そうなんです。
柿次郎:
やばい、僕も最初ここの展示見に来たとき、半分見たときに、情報量いっぱいってなって、次にしようってなったんですよ。
小倉:
それは僕の過剰な性格もあるけど、ひとつひとつの蓄積してる時間軸が長いから。
柿次郎:
なるほど、それはただの文字面、発酵食品を見て嗅いでって以上のなにかを人間がうけとっちゃう、だから疲れる。
小倉:
だから、その裏側にある余白みたいなものを感じられるように、会場全体を結構デザインしていて一応一個一個の展示台はその発酵食品にフォーカスを当ててるんだけど、それ以外の展示物がいっぱいあって、そこで地域ごとの発酵食品のつながりとか、民族性とか、作っている人たちの暮らしぶりとか、みたいなものがわかるっていう工夫がされてるんですね。
*****Dooo*****
自身のルーツにつながる松浦漬け
柿次郎:
僕も出身は大阪で今長野なんですけど、でも完全に地のルーツは熊本の北の山鹿ってほうで、僕も福岡大好きなんですけどヒラク君のルーツもこっちなんですよね?
小倉:
佐賀の松浦漬けですね。
柿次郎:
松浦漬けって全然知らないですね。
小倉:
佐賀の唐津に呼子って町があって。
柿次郎:
イカが有名な。
小倉:
元々は北九州で有数の捕鯨地、鯨の漁をやっていて、その鯨の組合の頭というかパトロンをやっていた山下家ってところの娘が酒屋に嫁いで。で、鯨の使いどころのない上あごの軟骨、60キロくらいあるやつ。
柿次郎:
でっかい鯨の。
小倉:
そう。すっかすかになったこの鯨の軟骨を刻んで、酒粕漬けにするわけですよ基本的には酒粕漬けにして食べる、そういう文化。
柿次郎:
の!ルーツ?
小倉:
僕も行ってびっくりしたんだけど、山下家っていうのは唐津とか長崎で朝鮮半島と行き来してた松浦党という水軍の末裔で、僕の母方の出身も呼子で苗字も山下で、
松浦漬けつくっているのも山下で、
ルーツが一緒なんですよね、水軍、まあ海賊です。
柿次郎:
いやぁやっぱこう歴史好きのおっさんみたいな話にはなるんですけどやっぱこっち(朝鮮半島)からすごいいっぱい文化が入ってきて
小倉:
そうそう。だから、明太子もそうだし松浦漬けもそうだけど海の文化というか内陸よりは朝鮮半島から入ってきてる文化が強い。
*****Dooo*****
発酵ツーリズムのきっかけ
柿次郎:
けどこれまぁヒラク君の活動を僕は結構見ていたんですけども、この企画に至ったきっかけとか、ある日寝てたら「これやろっ!」ってなった訳じゃないでしょ?
小倉:
元々僕ずっといろんな土地をフィールドワークしてて一応僕の専門はスタンダードな麹を使ったものだからお味噌とかお酒なんだけども、その枠に当てはまらない不思議な物がいっぱいある訳ですよ。そのいうのが気になって色々調べていると不思議な歴史がその中にはあるんですよね。それがずっと気になっていて、そういうものって紹介されないしちょっとずつ掘って行くうちに実はこういう、
なんじゃないかって事に気づき始めて。それを一同に介してやるってことは
なんじゃないかってことになって気づいていったんですね。その時にここの47ミュージアムの運営元のD&DEPARTMENTのミュージアム担当の黒江さんっていう今事務局長をやってくれている女の子との出会いがあって、「一緒に展示をやりましょう」ってところから話しが転がっていった。
柿次郎:
その黒江さんは最初はこんな事を想定してなかった?
小倉:
してない。もうちょっと普段はね、楽ちんな方法でやるんだけど。
柿次郎:
要は、ヒラク君が知ってるであろう全国の発酵食品をセレクトして、ここに集めて展示して裏側のストーリーをまとめてっていうのがそれが「全部・・・行くで?」と。
小倉:
「全部行くで」と。
柿次郎:
「全国行くで」と?
小倉:
で、メーカーに「この画像ください」ってメールで言っても返って来ない。なぜならメールを使わないみたいな。
柿次郎:笑
小倉:
あるいは、メーカーじゃないみたいな。お母さん!みたいな。
柿次郎:
なるほど。お母さんがやってる笑
小倉:
そうなるから今までやってるD&DEPARTMENTの方法が全く通用しないので、
っていうスタイルで。でも、お金がめちゃめちゃかかるかD&DEPARTMENTで僕が一緒にいろんな方法でファンディングしてお金も自分たちで用意して運営もめちゃくちゃ大変なので、いっぱい仲間を募ってやるっていうスタイルになっているんですよね。
柿次郎:
思いつく限りの事全部駆使して。
小倉:
そう。
柿次郎:
このでっかいことを成し遂げたっていう。
小倉:
でも、正直言うと割と・・・こういうこと言っちゃうとあれなんだけど、
公金入れて公共のお金使って国がやるようなことだから。
柿次郎:
そうですね。
小倉:
それを無理矢理手弁当で自力でやったって話なので。
柿次郎:
でもヒラク君もあくまで個人、フリーランスみたいなもんですよね?
小倉:
D&DEPARTMENTの力も借りて。
柿次郎:
それもありで。
小倉:
民間で無理矢理自分でやったって感じですね。
柿次郎:
いやぁ・・・
小倉:
僕の・・・
じゃないかなと思いますね。
*****Dooo*****
柿次郎:はい!本日のDooo!!一旦ここで・・・一旦ここで。ちょっと僕疲れちゃったんで後編にしないと見てる人も疲れちゃうと思うんで。また次回Dooo!!見てください!