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データで振り返る2023年度のふるさと納税

トラストバンク地域創生エバンジェリストの伊藤健作です。
私からは、ふるさと納税制度がどのように地域創生に貢献しているのかといった実態や、自治体・寄付者ニーズについて、専門家としてお伝えしていきます。

最初に、少し自己紹介をさせていただきます。

私は当時大学4年生であった2016年7月より「逢うふるさとチョイス」の前身「ふるさとチョイスCafé」のオープニングスタッフとして参画しました。トラストバンク社員はもちろん、自治体職員さんや事業者さんなど、地域の方々との多くの関わりを通じて、地域の魅力と共に課題も感じるようになりました。そして、自身でも地域の方々の課題解決に役に立ちたいと思うようになり、トラストバンクへの入社を決めました。

入社後は「ふるさとチョイスCafé」の店長として、ご来店される寄付者の皆さまに、ふるさと納税についてのレクチャーや地域の魅力を伝える仕事をしておりました。現在は、アライアンス部門にて、地域創生に関わる新サービスの開発などを行っています。

このように8年以上、地域とふるさと納税に向き合ってきた私のnote1本目となる今回、2023年度のふるさと納税をふるさとチョイスのデータを用いて振り返っていきたいと思います。


2023年度、ふるさと納税の全国寄付受入額はついに1兆円に

8月2日に総務省が2023年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の全国寄付総額などをまとめた「ふるさと納税に関する現況調査結果」を発表しました。

出典:総務省「令和6年度ふるさと納税に関する現況調査

2023年度の寄付受入額は1兆1,175億円。初めて1兆円を超えたことで話題を呼んでいます。
都道府県別の傾向を見ると昨年に引き続き「北海道」が寄付金額、件数ともにトップとなりました。全体的な寄付の分布傾向は前年と大きく変わっていませんが、内容面では変化が見られます。

特筆すべきは、寄付金の使途に関する透明性の向上です。ふるさと納税の寄付金の使い道について、分野および具体的な事業を選択できる自治体も増加しており、さらに、クラウドファンディング型の実施割合も多く見られるようになりました。これは、寄付者に対してより明確な使い道を示す表れと言えるでしょう。
また、2023年度は例年とは異なる出来事も起こりました。

10月にあった総務省による制度の告示改正、1月の能登半島地震への寄付……。これらの出来事はふるさと納税の在り方や、人々の意識に様々な影響を与えたと考えられます。
それでは、そんな2023年度のふるさと納税トピックを振り返ってみましょう。

2023年度のふるさと納税トピックス

分散した寄付行動:告示改正による変化

2023年6月、総務省は、同年10月より適用されるふるさと納税制度の告示改正を発表しました。告示改正の内容は主に以下の2点です。

  • 地場産品基準の改正: 加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認める

  •  募集適正基準の改正:募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄付金額の5割以下とする

これにより、2023年10月からこれまでお礼の品として掲載されていた熟成肉やお米の掲載の取り止めや、寄付額の引き上げ・お礼の品の内容量の削減などが自治体ごとに行われることとなりました。
このことを予測した多くの寄付者が、告示改正前の9月に駆け込み寄付を行いました。また、メディアでの報道増加により、ふるさと納税への興味関心が高まり、このタイミングでふるさと納税をはじめる寄付者もいました。
トラストバンク地域創生ラボが2023年11月に実施した調査によると、前倒しで寄付をした人は全体の約6割いた一方、9月の時点で控除額の上限まで寄付をした人は全体の四分の一で、残りは控除額に余裕を残して寄付をしていたことが分かっています。
この結果、例年は12月に集中していた寄付が、2023年度は9月と12月の2回に分散する寄付動向となったことがわかります。

出典:トラストバンク地域創生ラボ「ふるさと納税に関するトレンド調査
「ふるさとチョイス」の寄付動向

2023年度のふるさと納税動向は「共助の年」を示している

10月の告示改正という大きな制度に関する動きがあった一方で、2023年度は「共助の気持ちでの寄付」という寄付行動が際立った年でもありました。

ふるさと納税の真髄でもある「共助の気持ちでの寄付」が起こったトピックスについて詳しく見ていきましょう。

◆4月~7月 花火大会

「ふるさとチョイスGCF」プロジェクトページのキャプチャ

新型コロナウイルス蔓延防止のため、2019年を最後に中止されていた花火大会を4年ぶりに開催する自治体が多く見られました。運営に係る人件費や高騰する火薬代をふるさと納税の寄付で集める「ガバメントクラウドファンディング®」のプロジェクトが12件開設され、多くの寄付や寄付者からの応援メッセージが寄せられるとともに、体験型のお礼の品としても花火大会の観覧シートの人気は高く、自治体の関係・交流人口の創出にも貢献しています。

◆8月~9月 漁業支援

昨年8月~9月はホタテへの寄付が急増。8月はホタテへの寄付が前年比約1.9倍となり、続く9月には前年比約6.6倍に増加しました。2023年度全体では昨年から約1.6倍の伸びに。
その背景には、ホタテなどを扱う漁業事業者が輸入規制などにより影響を受けているという報道によって、日本の漁業支援の動きがありました。「地域の事業者・生産者を直接支援できる方法=ふるさと納税」という方程式が定着してきていると考えられます。

◆1月 災害支援

2024年1月1日に発生した能登半島地震を受け、ふるさと納税を災害支援として活用する寄付者が増えました。「ふるさとチョイス災害支援」へは、過去最多の寄付件数と、20億円を超える寄付金が被災自治体に集まりました。

また、被災していない自治体が被災した自治体の代わりに寄付を集める「代理寄付」のシステムを活用した自治体が150以上にのぼり、「代理寄付」を通じた寄付も過去最多となりました。自治体間でも、共助の輪が広がっていると言えるでしょう。

集計地域:七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、かほく市、津幡町、内灘町、志賀町、宝達志水町、中能登町、穴水町、能登町

なお、発災直後はお礼の品がある寄付を一時停止していた能登半島の自治体も、現在徐々にお礼の品のある寄付の受け入れを再開しています。2023年4月~6月と比較すると、能登半島の12自治体への寄付が増加しており、ふるさと納税を通じて被災地域を応援するという方法が寄付者の間でも浸透してきていると実感しております。

災害支援の詳細については、こちらも参照ください。

ふるさと納税の力で被災地に希望を/災害支援と代理寄付について
https://note.com/tb_regional_labo/n/n05c1d9363c0d

今後のふるさと納税のキーポイントは「寄付金の使途」と「共感」

 2023年度のふるさと納税を振り返ると、その価値がお礼の品や税控除にとどまらないことが明確になりました。寄付金の使途選択や地域ブランドの向上、地域間交流の促進など、ふるさと納税は地域創生において重要な役割を果たしています。

出典:トラストバンク地域創生ラボ「ふるさと納税体験に関する調査 2024

トラストバンク地域創生ラボの調査によれば、8割以上の寄付者が寄付金の使途選択を魅力と感じており、これは寄付者が自身の貢献の行方に強い関心を持っていることを如実に示しています。

「ふるさとチョイス」では、寄付の使い道からお礼の品を選べる機能だけでなく、具体的なプロジェクトへの寄付を募る「ガバメントクラウドファンディング®」や、「ふるさとチョイス災害支援」を提供しています。これにより、寄付者は自分の寄付の具体的な活用を知ることができ、その結果、寄付先の地域に対する親近感をより深めることができます。

私自身も、北海道栗山町のカフェ&バーの開業支援佐賀県太良町の収穫ロボットを導入したアスパラガスの最先端経営支援などのプロジェクトに寄付した経験があります。寄付後には開業に向けた進捗報告をいただいたり、支援したプロジェクトのアスパラガスを美味しくいただいたりすることで、各地域との心理的距離が縮まったうえ、具体的な課題解決への貢献を実感しました。

私は、これからのふるさと納税で寄付を集めるためには「寄付金の使途」を明らかにすること、そして、その使途に対する「共感」が重要となってくると考えています。
寄付者にとっては、寄付先の自治体をより身近に感じ、ふるさと納税の価値をより深く理解できるようになるため、今まで以上に地域との関係性も素晴らしいものになっていくのではないでしょうか。

地域の素敵な取り組みを、より多くの寄付者に知っていただけるように、我々もまい進していく次第です。


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