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テレワークゆり物語 (144)眠れない子を寝つかせる、母の優しい嘘

私「ママ、眠れへん。どうしよう。」

なかなか眠りにつけない、小学校低学年の頃の私。
このまま朝になって、学校に行くと授業中居眠りしてしまうのではないか。
どんどん不安になる私に、母がこういった。

母「心配せんでええ。寝なくても、かまへん。
  目をつぶって、じーっとしとき。
  それだけで、半分は寝たのと同じやから。」

私「半分?」

母「そうや。2時間、目をつぶって、じーっとしてたら
  1時間寝てたのと同じや。」

私「そうなんや。わかった。そうする!」

母の言葉で安心した私は、目をつぶってじーっとする。

気が付くと、朝になっている。

そして、元気に学校へ行った。

大人になって、それは母の嘘だとわかった。
あたり前だが、起きていれば、脳は休めない。
しかし、「寝れない」という不安は、「寝ているのと同じ」という言葉で払拭される。あとは「目をつぶって、じーっとしていれば、たいがいの人は眠りにつける。

母の見事な「やさしい嘘」である。

母は、世間でいう「良いお母さん」ではなかった。毎日大阪の百貨店に遊びに行って、夜は飲み歩くし、言うことやること、無茶ばっかりだった。でもそんな母が大好きで、母だけを見てきた私は、やっぱり普通の母にはなれなかった。

しかし、子育てにおける愛情の大切さと工夫する知恵は、母が教えてくれた。

そんな私は、この歳になっても、寝れない夜は、母のあの言葉を思い出し、目をつぶってじーっとする。

※冒頭の「羊」は、三女作。私にとっては、「羊の数を数える」より、母の嘘のほうが効果的だったけどね。


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