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テレワークゆり物語 (75)ホウレンソウのデジタル化はビジネスの要

ビジネスにおける『ホウレンソウ(報告・連絡・相談)』はもう古い
ネット等でそんな「ホウレンソウ不要論」を見かけることがある。

これからの時代はテレワーク。自分の好きな場所で、個人の自律と責任のもと、仕事を進めよう。働く時間ではなく成果(アウトプット)が評価され、個人の能力を生かすジョブ型の雇用も広がる。

これまで無駄の多かった、上司との報告・連絡・相談はもう古い。テレワークでは、新しいコミュニケーションの形を取り入れよう。

・・・というのが、私が感じている世間の「ホウレンソウ不要論」である。

しかし、私は、こう考える。
「ホウレンソウ」自体が不要なのではなく、口頭や文書回覧など、従来の「ホウレンソウのやり方」が不要なだけではないか。

日本の仕事の進め方は「大部屋主義」と揶揄されるほど、「部署単位で仕事をする」「一か所に集まって仕事をする」「みんなで課題に立ち向かう」「チームで喜びを分かち合う」というスタイルが、一般的だった。

「付き合い残業」や「面倒な人間関係」といったマイナス面もある一方で、池井戸潤の小説『下町ロケット』のように、社員が家族のように仲良く、また心をひとつにして困難に立ち向かう、『日本らしい仕事の仕方』でもあったはずだ。

アドビが世界7か国で調査した結果によると、『テレワークの方がオフィス勤務より仕事がはかどる』が、グローバル平均で69.1%のところ、日本は42.8%。
日本が唯一「テレワークではオフィスほど仕事がはかどらない」が多数派となっている。

その理由は、欧米と日本は、労働の背景・法律・意識などが、もともと大きく異なるからだ。・・・と、アメリカ国務省の「インターナショナル・ビジター・リーダーシップ・プログラム(IVLP)」で学んだ

コロナ後のテレワークを「出社」に引き戻してしている、最も大きな理由は、日本における従来からの『仕事の仕方』ではないだろうか。

実際、新型コロナウイルスの感染防止で頑張ってテレワークを実施したものの、「コミュニケーションがとりにくい」「マネジメントがしにくい」という理由で、戻る企業が少なくない。

これまで、毎日会社に集まり、顔を見て、口頭で進められてきたチーム仕事。突然のテレワークで離れて仕事をすることになれば、これまでオフィスで実施されてきた、チーム(部署)における「報告」「連絡」「相談」(いわゆる、ホウレンソウ)がしにくくなり、業務自体の効率が悪くなってしまう。当然と言えば、当然だろう。

では、どうすすればいいのか?

『仕事の仕方』は、会社で異なるし、時代でも異なるし、時代とともに変わっていくだろう。しかし、時間もかかる。短期間で、変わるものでもない。急いで無理をしてしまうと、揺り戻しが起こる。

従来からの良いところは大切にしつつ、「課題」であったことは捨てて、少しずつ変えていこう。

「ホウレンソウ」は、日本における仕事の基本だった。
ただし、毎朝のうんちく朝礼や、島型に並べられた机上での会話、無駄に社内を駆け巡る紙の稟議書・・・。『その場所にいないとできないホウレンソウ』が多かったのは、事実。

テレワークの実施は、「仕事の仕方」を変えていくための、めったにない「機会」。なのに、「感染リスク」が低くなったからといって、戻ってしまってはもたいない。

日本の企業のみなさん。

Web会議ツールを導入して、在宅勤務の社員と会議ができるようになって、「テレワークできた」と満足していませんでしたか? 

チャットツールを導入して、在宅勤務の社員に声掛けができるようになって、「テレワークできた」と満足していませんでしたか?

会社でのコミュニケーションはそれだけではないですよね?

新型コロナウイルスの感染リスクが低くなり、出社に戻り始めている今だからこそ、「戻る理由」に向き合ってください。

機械が会社にあるので、出社しないと仕事ができない。
店舗での接客があるので、出社しないと仕事ができない。
ハードルは高いですが、あきらめてはいけません。どんなカタチになればテレワークできるか、そのカタチを作るには、何が必要なのか。想像力を膨らましつつ、長いスパンで取り組みましょう。

一方で、出社に戻る理由が「出社すると、仕事のやりとりがスムーズだ。」
としたら、ここは、今が頑張りどころ。御社が「テレワークをすすめる」ための必要なことが、見える貴重なタイミングなのです。

ものづくりの会社だからテレワークは無理と決めつけ、毎日出社を当たり前とし続けると、たとえ下町ロケットの佃製作所でも、人材を確保ができず、世界に羽ばたくことができず、厳しい状況に陥るのではないでしょうか。

これからは世界で、インターネットを使って、ビジネスを拡大する時代です。素材も人材も商材もお客様も世界がベース。それを推進する社内の重要なコミュニケーションが、建物の中、というのはあり得ないですよね。

もう一度、叫びしておきます。

ホウレンソウのデジタル化はビジネスの要です。


※冒頭の図は、私の講演等で利用している「オフィスでのコミュニケーション」から引用。



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