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【Story of MOVIES】 Episode4: "関心領域"

こんにちは!
今回は5/24に
日本で公開されたばかりの名作映画、
"関心領域"(原題:The Zone of Interest) の
感想をお話しします!

本映画は予告編も短く
公開されている情報も多くありませんでした.
そのため、"興味はあるけど
どんな映画かわからない
."
そんな人たちの背中を押すことが
できれば嬉しいです!


あらすじ

雲一つない青空.
庭に溢れた色とりどりの花々.
子どもたちのはしゃぐ声.
そして、
塀の向こうから聞こえる銃声

アウシュビッツ強制収容所の隣で
幸せに暮らす家族.
その日常
恐ろしいまでに自然に描く.
そこから見えてくるものとは…


聴覚で"観る"映画

予告からもわかる通り、
スクリーンに映るのは
裕福で幸せな"とある家族"の
ありふれた"普通の"日常です.
ただ一つ、
その幸せな日常から
悲鳴銃声を
切り離すのは不可能だという点を除いて.

"関心領域"で特に印象的だったのは
視覚聴覚のギャップでした.
目に映るのは幸せな生活.
しかし塀の奥から
終始耳に入ってくるのは
列車の音、
銃声、
犬の咆哮、
そして悲痛な叫び声です.

映画中でホロコーストを連想させる
視覚描写はほんの数回程度.
しかも巨大な煙や、建物など、
すべて間接的です.

私たちは視るだけでは
この映画を到底鑑賞できません.
常に耳を澄まして
スクリーンにかすかに波紋を広げるから
家の外、塀の奥を
想像しなければならないのです.

そういった意味で、"関心領域"は
視覚聴覚
どちらか片方が欠けてもいけない、
その両方をフルに使って
初めて理解できる、
そんな映画になっていると思います.

動かないカメラ

"関心領域"では非常にユニークな
撮影方法が使われています.

粉飾されていないリアルな映像は
鑑賞者と登場人物の距離
劇的に縮めます.

臨場感緊迫感もない単調な映像.
しかし登場人物と
重なってしまった私たちは
彼らの心情が自分のように感じられる.
そんな奇妙な感覚を経験できるでしょう.

関心が及ぶ領域

※このセクションは思考を十分に整理できていない
ため、読み飛ばしていただいても結構です.

本映画のタイトル"The Zone of Interest"はまさに
人々の特定の物事に対する関心が及ぶ領域
を意味するものだと思います.
そしてこれには個人差が大きくあります.

私の感想としては、
劇中で強制収容所からの
心理的ダメージに影響を及ぼす要素は
・元凶(収容所)からの距離
・関心領域
の2つで、
特に主人公とその妻を比較すると

【距離】
・主人公:仕事場のため距離が近い
・妻:常に家にいるため比較的距離が遠い

【関心領域】
二人とも家にいるときは
あまり影響を受けていなかったため
主人公と妻であまり差はない

と考えられます.

劇中でも主人公と妻の衝突が描かれていますが、
これは関心領域は同じだが、
距離が違うが故の感覚の齟齬だと感じました.

映画の最後に主人公が
唐突に吐き気を催すシーンがありますが、
これも彼の受けていた影響をよく示していると思います.

ここで、私たちはどうでしょうか.
本来、領域が異常に広くない限り、
私たちとアウシュビッツは距離が遠すぎて
影響は受けるはずがありません.
しかしこの映画は
先ほどお話ししたように、
私たちと"彼ら"の距離を極限まで近づけます.
その結果、アウシュビッツは
私たちの関心領域内に存在してしまうのです.
それがこの映画の持つ非常に強力な効果なのではないでしょうか.

疑問点

映画を鑑賞し、
純粋に私が理解できなかった描写が複数あったので
ぜひ読者の皆さんにコメントで教えて頂けると幸いです.
・赤で塗りつぶされた画面の意味
・大雨で川が増水するシーンの意味
・読み聞かせとリンゴを置くのを並行させた理由

最後まで読んでいただきありがとうございました!!


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