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中世の要塞教会の村Effeltlich①

ハイデルベルクからの客人

先日、ハイデルベルクに留学中の後輩が、友人を連れてニュルンベルクまで遊びに来てくれた。同市に1泊2日の旅だったのだが、いかんせんドイツの「中世都市」はどこも小さい。楽旅といえば楽旅だが、1日目でニュルンベルクの観光名所とクリスマス・マーケットを回り終えてしまった。

さて2日目をどうするか。遠浅には行ってみたい場所があった。エアランゲン在住の先達から教えていただいたEffeltrichという村である。なんでも、そこには中世の要塞教会(Wehrkirche)が残っているという。

しかし同地は人口2000人程度の小さな村。10万人規模の人口を「誇る」エアランゲンですら村Dorfといった風情である(ドイツ人語学講師談)。絶対なにもない。しかも閉店法が猛威を振るう日曜である。バスは1時間に1本、気温は0度。最悪、せっかく来てくれた2人を遭難させるかもしれない。

聖ゲオルグ教会

そう思いながら迎えた2日目の朝。10時から敢行したエアランゲン散策は案の定1時間も持たずに終了。とりあえず喫茶店で昼食をとり、他に行き場がないのもあってEffeltrich行が決定した。同村まではバスで30分。たかが30分の道行ではあるが、車窓に広がるのはだだっ広い草原。気分は完全にドラクエである。同行人も同じ気持ちだったのか、集住地帯が目に入るたびに「町(正確にはたぶん村)が見えた!」などと言っていた。

さて、今回最大のお目当ては、15世紀末に建てられた「要塞教会」聖ゲオルグ教会である。要塞教会とは、聖堂の周りに防壁を巡らせた籠城可能な教会のことで、有名どころではトランシルヴァニア村落群のそれが世界遺産になっている。こちらがその聖ゲオルグ教会。

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入口前の解説によると、この教会は賦役(Handdienst)と畜耕役(Spanndienst)によって、中世後期に建てられた自称「オーバーフランケンで最も保存状態がいい要塞教会」である。存在が文書によって確認できるのは1405年かららしいが、建物の一部はさらに約百年前の1303年に遡れるとのこと。

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門(?)におわしました聖人像。右から、体中に矢を生やしているのが聖セバスティアヌス、見えないけど竜を踏んづけていると思われるのが聖ゲオルギウス、脇に鉄格子を置いているのが聖ラウレンティウス。ニュルンベルクには聖ローレンツ教会という有名な教会があるが、ラウレンティウスはローレンツのラテン語読み。フランケンではラウレンティウス崇敬が盛んだったのだろうか?この教会自体はその名前の通り聖ゲオルギウスに奉献されている。

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祭壇付近はこんな感じ。バロック様式の祭壇と、制作年代がバラバラと思しき木彫群。フレスコ画(Fresken)も残っていたらしいが、どれのことか判らなかった。クリスマス前に行ったのでAdventskranzがあったが色のチョイスが謎(笑)。

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こちらは信徒エリアにあった盛期ゴシック(hochgotisch)の木彫。1520年ころの作品らしい。中心がもちろん聖母マリア、向かって左で聖杯(Kelch)を手にしているのが聖バルバラ、右側で剣と車輪を持っているのが聖カタリナである。カタリナが完全に見切れてる…。


るんるんで解説を読んでいたら案外長くなってしまった。この教会がどんな戦争に巻き込まれたかなどについてはまた次回書きたい。

参考資料
・聖ゲオルグ教会前にある"Wehrkirche St. Georg"の解説プレート
・聖ゲオルグ教会公式HP(2019/12/29最終閲覧):https://kirche-effeltrich.de/kirchen/

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