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ある雨の日の出来事

1番怖いのは人間だ、というのはよく聞く言葉である。比較対象として危険な動物や、幽霊などが挙げられる。ちなみに私は幽霊を信じている。もちろん出会ったことはない。だがいないと言い切るのはロマンがない。全ての現象は科学で説明がつく、これもよく聞くがまだ解明されていない現象があるのが事実。その理由のつかない現象の存在がより一層興味を引き立てる。


さてここ最近雨が酷い、そんな中深夜にコンビニに行った時の話だ。


深夜なので家の近くの道路には車が少ない。昼間とは大違いである。さらに豪雨なので歩いている人もいない。そんな雨の音だけの空間を私は味わっていた。しかし道中、奇妙なものを見つける。白い服の女性が傘をさして道路の真ん中に立っているのだ。普通なら正直変な人がいる、程度で私の心は収められた。しかし、豪雨さらに深夜まして私1人という状況も相まって「奇妙」という表現が私の直感として正しかった。


私は道路脇の歩道、彼女は道路の真ん中なので「近くですれ違わない」というだけでホッとした。
よく見ると彼女は電話をしていた。


私の中の恐怖度メーターが下がる音が聞こえる。声が聞こえることの安心感を充分に感じた。少なくとも幽霊という可能性がグッと下がった。無口な印象を持っているからだ。しかも幽霊は電話を持って話すだろうか?いや、ない。人間だ。幽霊とのファーストコンタクトとはならなかった。

次に湧いてくるのは人間の怖さである。そこにいるのは幽霊なんてものではない。「ヤバい奴」なのだ。幽霊なら襲ってきても消えてくれる、とかいう淡い期待ができるが、「ヤバい奴」は死ぬまで追ってくる。


まずい。もうすぐすれ違うぞ。


話し声がだんだんハッキリと聞こえてくる。早歩きで立ち去ればいいのだが、興味本位で少し彼女の声を聞いてみようと思い、私は立ち止まった。
どうやら怒っているっぽい。誰かと言い合いをしている様子だ。
これにより標的が私にならないことに安堵した。ヤバい奴の中でも「瞬間系ヤバい奴」だからだ。カテゴリは今適当に作った。
一時の感情に左右されてヤバくなってしまう、これが「瞬間ヤバい奴」
1番怖いのは無差別テロ系だ。もう常時狂っていて見つけた奴を標的にする。彼女はそれに該当しない、だから安心したのだ。


一通り思考を巡らせている内に心が落ち着いた。私はその間に足を進めて彼女も後ろの方にいる。だがやはり気になる。先程までは見えていた挙動が認識できないのだ。暗闇の恐怖心と同じだろう。


怯えていると、そこに1台の車がやって来る。彼女は今も道の真ん中だ。

一体どうなる


もし幽霊なら?


車が彼女をすり抜けるというTVでよくある恐怖映像さながらの瞬間を生で見れることになる。チャンスだ。



さあ、どうなる



車が止まった。



クラクションを鳴らした。



彼女は道路脇へと歩いた。


なんだ、ただの人間か。
心の奥でそれは理解していた。だが少しヤバい奴だったからクラクションを鳴らされた後に反抗するのかと私は期待した。

そのやり取りを見た後、初めに抱いた恐怖心などは一切無かった。ただ残念という感情が心の隅にある。


もしかすると私は傍観系ヤバい奴なのか?

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