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トレント・ロヴェレト近現代美術館

 トレントの旅行で立ち寄った美術館についての記事です。無名な美術館ですが、企画展も常設展もクオリティが高く、非常にお勧めできます。


概要 

Mart - Museo di arte moderna e contemporanea di Trento e Rovereto

入り口

アクセス

 イタリア北部の町ロヴェレトに位置する大きな美術館。トレンティーノ・アルト・アーディジェ州の州都であるトレントの隣町なので、トレントの観光と合わせて訪れたい。

チケット

 チケットは、近くにあるフォルトゥナート・デペロの博物館およびトレントの近代美術ギャラリーの三つ分がセットなのでなくさないようにしましょう。また、トレントの観光カードの特典を使うと割引があります。

アドルフォ・ヴィルトを探す旅

 アドルフォ・ヴィルトの作品を見られる場所をChat-gptに聞いてみたところ、この美術館を提案されました。行ってみなければわからないので、とりあえず半信半疑なまま、現地に向かいました。

破壊された企画展ポスター

 美術館では今ちょうどアートとファシズムの企画展を行っており、そのメインビジュアルにお目当てのアドルフォ・ヴィルトのムッソリーニ像の写真が使われています。美術館の隣で掲示されていたこのポスターは破られ、落書きがされていました。ARTE e FASCISMO(アートとファシズム)という題に対し、英語でいうAndにあたるeが消され、FASCISMO è MERDA!!!(ファシズムはクソだ!!!)と読めるようにスプレーで乱雑に塗装されています。いまだに扱うことが難しいテーマであることが、生々しく伝わってきます。

 とにかく、Chat-gptはこの企画展の存在を察知し私に回答したとみて間違いなさそうです。とりあえずアドルフォ・ヴィルトの作品をお目にかかれそうで安心しました。ファシズムは好きではありませんが、歴史についても学べそうです。

展示(2024年6月)

Felice Tosalli(企画)

Felice Tosalli
Felice Tosalli

 入り口では、イタリアの動物彫刻で重要な存在であるフェリーチェ・トザッリの展示がありました。非常に表現豊かで生き生きとした木彫りの彫刻やそのスケッチが素晴らしかった。また、空想の生物の作品にも果敢に挑戦しており、観察力や造形力だけではない芸術的素養も存分に確かめることができます。

常設展

ジーノ・セヴェリーニ
Ritratto di Madame

 こちらは常設展示です。20世紀にミラノ未来派の絵画運動をけん引した、ウンベルト・ボッチョーニやジーノ・セヴェリーニの絵画をはじめ、ヨーロッパを中心に近代芸術家の作品が展示されていました。

Pietro Gaudenzi(企画)

Ritratto di gentiluomo, 1912
Ombrellino, 1948

 次の部屋には、ピエトロ・ガウデンツィの企画展がありました。ジェノバ出身の20世紀の画家で、非常に優れた描写力と落ち着いた色使いが素晴らしいです。ファシスト政権時には高く評価されていた模様ですが、その後はあまり機会に恵まれなかったようです。

Arte e Fascismo(企画)

アドルフォ・ヴィルト
左からベニート・ムッソリーニ、ヴィットリオ・エマヌエーレ3世の胸像
アドルフォ・ヴィルト
Nicola Bonservizi

 アートとファシズムの企画展です。ムッソリーニの像は全部で4個も展示されていました。アドルフォ・ヴィルトの作品は全部で6個でしたが、ほとんどは企画展用に持ち込まれており、この美術館の所蔵品はNicola Bonservizi像のみの模様でした。

フォルトゥナート・デペロ
Duce nel mondo

 アドルフォ・ヴィルトの作品はこの展示のごく一部で、この美術館の位置するトレンティーノ・アルト・アーディジェ州出身のフォルトゥナート・デペロの作品もたくさんありました。彼の作品の題名に使われているDuceという単語の意味はリーダーのようなもので、つまりはムッソリーニを示しています。

パルチザンに破壊されたムッソリーニ像

 最後の締めくくりは、声高々に叫ばれたファシズムの終わりに関する展示でした。ファシズムはイタリアの短い期間を支配した政治思想ですが、当時のイタリアの近代芸術にも深く影響を及ぼしていたことがわかります。

屋外

庭園

 美術館の隣には作品を展示する庭園があり、現地の若者たちがくつろいでいました。

まとめ

 美術館のショップも品ぞろえが豊富で、特にフォルトゥナート・デペロのTシャツやペンが多かったです。ほかにも、貴重な美術書がたくさんありました。この美術館は非常に規模が大きく、企画展の質も非常に高いと思います。その一方で、私一人でほぼ貸し切り状態でした。あまり知名度は高くないようで残念です。

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