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三門ばかり眺めていました「曹源寺」

今回訪れたのは、岡山の臨済宗妙心寺派の禅寺「曹源寺」。岡山藩主池田家の菩提寺である。

本堂まで真っ直ぐ続く参道

境内は綺麗に保たれていて、植木の手入れも行き届いていました。建物もかなり短い頻度で手入れをしているのではないかと推測されるくらい綺麗に保っています。

正面奥が経堂、右が本堂
鐘楼

境内を歩いていると、木々の向こうに人影があり、よく見ると僧侶がお二方、庭の手入れをしているようでした。開山堂を眺めながら、先ほど見えた僧侶の近くを通ってみると、英語でお話をされていました。どうやら、ここ曹源寺は海外からの修行僧が多いとのことです。

毎朝、綺麗に箒で掃いているようす。

さて、境内には、本堂、三門、経堂、開山堂、鐘楼、三重塔がありますが、私が気になった建物は「三門」です。

今まで多くのお寺にプライベートで訪れることもあれば、専門的視点で実際にお寺や文化財の修復工事にも関わったことがありますが、ここ曹源寺の三門を見たときに、直感的に「良い建物だ。」と感じました。

この直感は、自分で言うのも変ですが、案外信頼できるもので、後から調べるとその建物が、重要文化財に指定されていた、ということがあります。(もちろん、先人たちや巨匠、その道のプロの感覚には及ばないと思いますが、少しでも近づけるように日々経験と勉強を積み重ねていきたいと思います。)

しかし、こちらの三門は、特に文化財の指定はありませんでした。

誤解を招きそうなので、先にお伝えしておきたいのが、
文化財であるか文化財でないか、ということが重要と言っているのではなく、この三門が日本全国にある文化財級の建物と同等レベルの空気感を醸し出していた、ということを今回お伝えしたかったです。

写真と一緒にご紹介します。

禅宗様を基本としつつも、端正な意匠が光と馴染む
細い木割だが、横架材のセイ(高さ)を大きくみせて華奢に見えないようにしている。
組物に目立つ意匠はないが、木鼻(柱に挿さっている象の鼻のような部位)の平彫曲線のバランスが良い
天井に見える板幅も2尺ほど?あるか。虹梁の彫刻も滑らかでバランスが良い。
口数が少なく目立つことが嫌いな頑固親父が、仕事を確実にこなしている。全体的にそんな印象。
軒がきれい
垂木もほとんど転んでいない(傾いていない)
石床も綺麗に敷き並べている
柱の綺麗な木目が引き立つように配置している。以前、宮大工が言っていたが、柱を立てる向きは自然にならいなさいとのこと。柱下の礎盤(禅宗様の特徴のひとつ)も品質が良い材料を使っているのか、白く均一に経年劣化している。
三門内部には木造の十六羅漢像が並んでいるとのこと。
背面から見上げる
正面から

南向きに建つ三門が、その瓦屋根を光にくっきりと照らされながらも、深い軒が建物の木部に陰影をつけていました。

この三門が、ここ曹源寺境内のランドスケープにおいて、とても大きな役割を果たしていると思います。

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