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中世の革新的デザイナー重源
日本全国には神社はどのくらいあるのでしょうか。
その数は8万社を超えるといい、神社には摂社・末社などもあるため、建物の数でいうと数十万社にもおよびます。
さて、この数多くの神社建築の中で、一際目立つ造りの神社建築があります。それが岡山県にある「吉備津神社本殿」です。
神社建築には、ある程度の構造様式の種別があります。日本全国で最も多いのが「流造」といい、皆さんの氏神様の社もこの造りの可能性が高いです。
構造様式の例は下記のサイトをご参照ください。
さて、吉備津神社の構造様式はというと、「比翼入母屋造(ひよくいりもやづくり)」といいます。
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この入母屋を2連に連続した形。神社ではこの吉備津神社本殿のみです。ちなみに、これを真似た面白い建物があります。それが同じく岡山県内にある「旧大國家住宅」です。
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画像元:Wikipedia
入母屋屋根が2つ並ぶ外観てす。現在は、約10年ほどかけての保存修理工事の真っ最中で見学はできません。しかし、保存修理現場は不定期に現場見学を実施していることが多いです。私個人的には、この修理現場の見学の方が修理後の建物よりも面白いと思っています。保存修理工事は一つの建物において、一生に一度しか訪れない機会です。普段は絶対に見ることができない貴重な文化財の現場に入ることができます。
しかも、今回は揚屋を行った修理工事です!
揚前の様子を下記のサイトで見ることができます。
私も以前、関東の文化財で揚屋をして、保存修理&免震・耐震工事の設計監理をさせていただいたことがあります。とても珍しい現場だったため、見学会も何度かあり、日本建築構造技術者協会の方々や、元日本建築学会会長であり建築構法学の父と呼ばれた故内田祥哉先生もいらっしゃいました。
話を戻しまして、吉備津神社本殿について。
構造的にはかなりアクロバティックです。
背丈ほどある亀腹(基礎の漆喰で固められている部位)の上に高欄(手摺のようなものがある縁側)が大きく跳ね出していて、屋根の軒は大きな翼を広げるようにさらに大きく跳ね出しています。
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このダイナミックな形態。昨今の現代建築にもありそうな、アクロバティックなフォルムです。現代でいう映える建築です。カッコいいと思った方、映えるなぁと思った方。まさに、それはこの吉備津神社本殿の造営に関係した重源(1121―1206)の思惑通りです。
宋に渡り、大陸の建築様式を持ち帰ってきた重源。東大寺大勧進職にも任命された彼のつくる建築はダイナミックで劇的な演出効果を社寺建築にもたらしました。それは後に「大仏様」と呼ばれるようになりました。吉備津神社本殿にも大仏様の要素が見られ、デザイナー重源が背後にいるのをじわじわと感じます。
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ちなみに、現存する大仏様の代表的な建物は「東大寺南大門」と「浄土寺浄土堂」と言われています。どれもダイナミックな建造物です。
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画像:https://www.todaiji.or.jp/information/nandaimon/
![](https://assets.st-note.com/img/1653543159639-kA1nFEd1Ag.jpg?width=1200)
画像:https://www.travel.co.jp/guide/photo/43828/4/2/
浄土寺浄土堂は阿弥陀三尊像の背面がちょうど西にあたる。夕刻になると、蔀戸を開放させた柱間から夕日が入り込み、光が一気に内部空間を埋め尽くす。
ダイナミックな大陸の架構と、白地に朱色の軸線で際立たせた空間に、黄金色の光が満たされる。その劇的な大陸様式の建築と相まって、それはまさに阿弥陀三尊が西方(大陸)からやって来てこの地に降り立ったことを連想させます。
重源のダイナミックな演出は憎い。もし、彼が現代にいたとしたら、その建築デザインセンスをどのような形で表現するだろうか。時代の革命建築家。彼から学べることは多いです。
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P.S
岡山に観光予定がある方いらっしゃいましたら、喜んで観光ガイドいたしますので、メッセージください!(主に建物解説がメインになりますが…)史実だけではない。普段聞けない、ちょっと主観も混ぜた建築家のガイド。建築は古今東西なんでもOKです。
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