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成分調整牛乳の謎不思議

最近気づいたのですが、世の中には成分調整牛乳と成分未調整牛乳という風に二種類の牛乳があるんですね(厳密には七種類なのですが、それは下のリンクをみてください)。

僕は牛乳と言ったら牛の母乳がそのままパッケージされるものとばっかり思っていたので正直びっくりしました。
あんまりびっくりしたのでちょっと調べてみることに。

そうしたら、「成分調整」の定義はこんなふうになっているみたい。

Q. 
牛乳には「成分無調整」と「成分調整」が表示されていますが、法律的な規制があるのでしょうか。
A.
「成分無調整」とは、牛乳の製造工程で成分を調整(加えたり除いたり)していないことで、法律的な規制はなくメーカーが独自に表示しています。種類別「牛乳」の表示があれば、「成分無調整」の表示がなくても、成分は調整されていません。「成分調整牛乳」は、乳等省令で決められた種類別の表示です。原料は生乳だけですが、含まれる脂肪などの成分が調整してあります。成分調整牛乳のうち、健康増進法の栄養表示基準に基づき、脂肪分を低減したものは「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」があり、いずれも乳等省令で決められた種類別名称です。

なんということでしょう。
今まで牛の母乳だとばっかり思っていたものが、実は人工的に成分を加工された人工生成物である可能性があるわけです。
慌てて冷蔵庫に行って中身を見たら、案の定成分調整牛乳でした。
どうりで安いわけだ。

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ちなみに普通の牛乳の場合、主要な栄養成分は以下の通りになります。(ソース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

分量 100 g あたり
カロリー (kcal) 66
炭水化物 4.8 g
タンパク質 3.3 g
脂質 3.8 g
カルシウム 110 mg

上の写真の牛乳はあざとい事に成分表示がコップ1杯あたりとしているため、ストレートに数字で成分が比較しにくい。

なんかイラッとしたので換算して比較する事にしました。
とりあえず正常な生乳の比重は 1.027~1.035(平均 1.032(15℃))であるため、近似的にこれを1としても問題はないでしょう。つまり、分量100gあたり=分量100mlあたりと読み替えます。

その上で比較するとこうなります。

スクリーンショット 2021-04-12 午後3.10.20

……ふーむ、こうやって同じ条件下で比較すると思ったよりも成分調整牛乳も悪くないな。
タンパク質量は調整牛乳の方が多いし、カルシウム量も調整牛乳の方が多い。
気になるのはカロリーが低い事ですが、これは人によってはメリットです。

ただ……

やっぱりね、成分調整している牛乳なのにあたかも無調整のように「生乳100%使用」ってところを強調してパッケージに書くのはなんとなく欺瞞の匂いがしますよね。これは消費者をミスリードしているとなじられても仕方がない気がする。

ちなみに味ですが、調整牛乳の方が明らかに ”軽い” です。これはおそらく乳脂肪分が少ないためでしょう。コップに入れて比較しても心なしか調整牛乳の方が色が薄いように思います。

さて、気になるのは調整牛乳の製造方法です。無調整であれば、牛の母乳を水で薄めるなりして均質化して出荷しているはずなのですが、では調整牛乳はどうやって作るのでしょう。新たな疑問が頭に浮かび、早速調べてみました。

森永乳業の「よくいただく質問」の答えによれば

2. 成分調整牛乳(例:『まきばの空』)生乳から水分、乳脂肪分、無脂乳固形分等の一部を除去し、成分を調整したものです。

なのだそう。
でも、この ”除去” というところが猛烈にひっかかる。
という訳でさらに色々調べてみたのですが、どうやら化学的に除去する訳ではなく、むしろ物理的に分離するみたい。具体的には遠心分離機を使って乳成分から脂肪分を分離するようです。

生乳から遠心分離により乳脂肪分を分離すると、脱脂乳(乳脂肪分を除去したもの)ができる。その後、脱脂乳をエバポレーターにより水分を除去し、濃縮した後に冷却した液状のものが脱脂濃縮乳である。脱脂乳を濃縮させた後、乾燥させたものが脱脂粉乳である。
(出典:厚生労働省 乳及び乳製品の成分規格等に関する省令における脱脂濃縮乳のたんぱく質量の調整について 平成 27 年 12 月


なお、参考のために牛乳のもっと詳しい情報を集めておきました。ご参考まで。


ところで味のプロフェッショナルである料理人はやはり成分調整牛乳を敬遠する傾向があるようです。成分調整牛乳も種類によっては脱脂粉乳のレベルにまで落として保存性を確保する場合があるようなので、やはり生乳とは別物です。別段身体に悪い訳ではないのですが、繊細な味覚を大切にする料理人であればやっぱり生にこだわるのでしょうね。

最後に。
成分調整牛乳は一般的に成分無調整牛乳よりも安価ですが、これには理由があります。
成分調整の過程で脱脂された乳脂肪分はバターや生クリームに加工されるんです。そのため、こちらで利益が取れるので牛乳を安く提供できるというメカニズムみたい。
また、長期保存が可能なことから生産調整がしやすいため、安定した価格で提供できるということもあるようです。

さて、ここまで読んであなたならどうしますか?


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