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詩▶︎ 野球場にいるおっさんの眼力



ある高校野球の試合の球場で・・・





打者がバットを振った瞬間と同時に、

隣のおっさんが「うまい!」と呟いた


ヒットだった



僕は、おっさんの顔をチラリと見た



真っ黒に日に焼けた顔

深いシワ

サングラスに麦わら帽子

おっさんが球場に足繁く通っているのが、容易に伺い知れた




次の打者がバットを振った

またも、打者のスイングと同時に、

おっさんが「うまい!」と呟いた


とても、大きな外野フライだった

ホームランまで、あとひと伸びという打球



僕はおっさんの眼力に感心した


僕は、野球を大学まで本格的にやったクチだ

その僕でも、さすがに打者が振った瞬間には、

良い打球かどうかは、わからない



僕は唸った

「きっと、この人は、何十年と球場に通い続けているのだろう」

それゆえ、仙人のように、観察力が養われれたのだろう


「いや、現役時代は名選手だったのかもしれない」


僕は、試合よりもおっさんのことが気になり始めた





次の打者がバットを振った


おっさんが「うまい!」と呟いた

強い打球の内野ゴロだった


僕は、

「こういうこともあるか」

と思った

どれだけ観察力を養っても、完全に結果は予想できないものだ





次の打者がバットを振った

おっさんが「うまい!」と呟いた

外野手がゆっくり前に来てとった、平凡な外野フライだった


僕は

「あれ?」


と思った





次の打者がバットを振った

おっさんが「うまい!」と呟いた

ボテボテの内野ゴロだった






次の打者がバットを振った

おっさんが「うまい!」と呟いた

バントだった






「・・・」


僕は、大きく息を吐いた







試合は進み、9回が終わった



球場からの帰り道で、背後から


「うまい!」


と、聞こえた



振り返ると、

あのおっさんが、自販機の前でコーラを飲んでいた






「・・・」




僕は、足早に球場をあとにした













今日も読んで頂いて有難う御座いました😃




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#いや 、この経験からまなぶことは特にない

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