ドラゴンボール個人的10選
今年の3月1日にドラゴンボールやドクタースランプで世界的に有名な日本が誇る漫画家鳥山明氏が亡くなりました。僕自身ドンピシャのドラゴンボール世代で、やはり相当ショックで悲しかったです。亡くなられて半年が経とうとしていますが、最近またドラゴンボールを少しずつ読み返して、改めてドラゴンボールという漫画の面白さが身体に心に沁みてきております。恐らく人生で10回以上は読み返したりしているのでほとんどの話の内容は覚えております。そこで今回は「個人的10選」の特別編ということでドラゴンボールの物語を僕個人の見解ではありますが、10個に区切ってランキング形式のベスト10という形で発表したいと思います。以下に物語をどう10編に区切ったかを示しておきます。
第1編 出会い~ピラフ
第2編 修行~第21回天下一武道会
第3編 レッドリボン軍~占いババ
第4編 第22回天下一武道会
第5編 ピッコロ大魔王~天界修行
第6編 第23回天下一武道会
第7編 サイヤ人
第8編 フリーザ
第9編 人造人間
第10編 魔人ブウ
という区切りにさせていただきました。第7編サイヤ人からはかなり広範囲の区切りになっておりますが内容的にはこんな感じになるかなと個人的には思っております。かなり強引ではありますがこの物語を10編のエピソードに分けたうえで個人的なベスト10に移っていきたいと思います。では早速どうぞ。
10位 魔人ブウ編
すいません、こういう企画なのでどうしても何かを一番下に置かなければならなくて。どのエピソードも基本的に好きなのですがあえていうなら魔人ブウ編がここに来るかな。ここに置いた一番の理由はやはり鳥山明がもう連載を辞めたがっていた中での間延び感やテンションの低さが滲み出ている印象が個人的にはしたからです。最後の魔人ブウを地球人全体で元気玉を作って悟空が倒すところや、もう最終回も近くそれまでに出てきたスノやウパ、人造人間17号なども元気玉に協力するところなどはかなり大好きな場面ではあります。しかしながらそれまでのフリーザや人造人間などのエピソードで相当心を熱くさせられてきた現役世代からするとやはり物足りない感じがして、あの流れの中では相対的にかなりそれまでと比べてなあ……という印象を持ってしまいました。魔人ブウ編が好きな人もたくさんいらっしゃるかもしれませんが、僕個人の中ではこうなってしまいました。すいません。
9位 出会い~ピラフ編
これも相対的にどれかを下に持ってこなければという制約の中であえてという感じです。孫悟空とブルマがあの山の中で出会わなければこの偉大な物語は始まらなかったのですから、今思うと感慨深いものがあります。ただやはり後年の脂の乗り切ったエピソードと比べるとかなり薄味感は否めず、兎人参化からピラフに至るエピソードは当時本当にジャンプの中でかなり読者投票で最下位に近いところにあったらしく、打ち切りの話さえ出ていたとも言われるだけあって、個人的にはちょっと「名作ドラゴンボール」としてはかなり凡庸な内容だと思ったりしております。まああの垢ぬけない牧歌的な世界観は今思うといい味出しているなあとは思ったりしますけど。これも相対的にという感じで失礼します。
8位 修行~第21回天下一武道会編
当時の回顧録ではこの天下一武道会でのV字回復があったからこそドラゴンボールは今に至る世界的な名作漫画の地位を築けたとあります。ピラフまでのエピソードで打ち切りの話も出ていたらしいですが、それまでのヤムチャやブルマといった主要メンバーを一端話から外して、それまでキャラクターとしての方向性がイマイチで地味だった孫悟空を「強くなりたい」という個性を前面に出してそれをメインに描いていこうという鳥山明及び当時の編集者鳥嶋和彦の意図が当たり、徐々に人気漫画になっていったらしいです。僕自身もこの辺りからやはり明確にそれまでと違う「ワクワク感」がしてきましたね、今思うと。特に天下一武道会に向けてのクリリンと一緒に亀仙人の下で一緒に修行するエピソードが昔から大好きで。牛乳配達とか素手で畑耕すとか、あの日常的な感じとあの昭和の牧歌的な世界観と言いますか、あの雰囲気が相当ツボで毎回あそこを見て癒されております。天下一武道会自体はまだそこまで後年のバトル的な要素に欠けて、手探りな感じがして物足りない感じはしますが、それまでに比べるとやはり悟空が戦って強くなっていくというドラゴンボールの基軸がはっきりと示された大きな分岐点でまたそれが読者に支持され、ここから無敵のドラゴンボール神話が始まっていくこととなります。
7位 第22回天下一武道会編
今読み返すとここら辺りから、鳥山明のペンのタッチが成熟しているというか、こうよりバトルに重きを置き始めたリアルさが出てきていて、よりバトル漫画としての面白さが増してきているように思ったりします。物語的にはもう一直線って感じはしますけど、そこを感じさせない悟空たちの闘いの濃密さが多くの読者を取り込んでいったのかなと思ったりします。天津飯とかそれまでに出てこなかった完成度を誇っていますよね。キャラがすでに立っているというか、ビジュアル的にもそれまで出てきた敵キャラとは一線を画しているといいますか。鳥山明の気合いがこの第22回天下一武道会からより感じられて、おそらく一番脂が乗っていた時期に当たるのではないかと思ったりします。彼の精神的な部分で。技術的には後のフリーザ辺りがMAXだと思ったりしますが、こう「ドラゴンボールやっていくぞ」という漫画家としての気合いがおそらくこの後のエピソード「ピッコロ大魔王編」に向けて一番描きたかったのではないかと思ったりします。その前哨戦としてこの天下一武道会があり、絵がやっぱり気合入っているなあって思ったりします。実際鳥山明がドラゴンボールを描いていて一番楽しかったのがこの後の「ピッコロ大魔王編」だったとも言っていますし。後年の「やらされ感」がない最後のエピソードがここら辺だったのかなと思ったりします。天津飯との決勝戦とか後年のエスカレートしていくとんでもない戦いの陰に隠れがちですが、これでも十分に名勝負だと思うのですが、フリーザとかが出て来るからなあ。リアルタイムで読んでいて天津飯との決勝戦が相当面白かったので、まさかこれを軽く超えていく戦いがこれから目白押しになるとは思っても見ませんでした。やはりドラゴンボールは鳥山明という神様が描いた作品だったのだなあと思います。
6位 ピッコロ大魔王~天界修行編
ドラゴンボールを語るうえで外せないのがやはり「クリリンが殺された」あの衝撃でしたね。あれを超える衝撃はなかなか漫画史の中でもないのではないかと思ったりします。僕自身は当時はまだジャンプでリアルタイムでは読んでいなかったので、どうあの衝撃を受け止めたのかは忘れましたが、後年ドラゴンボールが終わってドラゴンボールで育ったワンピースの作者尾田栄一郎氏などが相当学校とかでジャンプ読んで衝撃を受けて「クリリンが死んだ」と友達に言ったりしていたというエピソードを聴くと、その現場感覚はかなり衝撃的なものだったことが伺えます。天下一武道会が終わるごとに新たな展開が待っていることは予想されていたと思いますが、まさかの展開でそれがまたより進化していく流れになっていくところに、このドラゴンボールのとんでもないポテンシャルを感じます。ピッコロ大魔王がいなければその後の激しいバトル漫画としてのドラゴンボールの世界観は成り立たないと言っても過言ではないので。ここから潜在意識的にはもう宇宙へと物語は広がりを見せていたのかもしれません。どんどん何か得体の知れないものがドラゴンボールを突く動かすみたいな、怪物が成長していくみたいな魔法が日本中にかけられていったみたいな。ただ個人的にはこのピッコロ大魔王編がそれまでのドラゴンボールの比較的平和な流れとは180度異なっているような異質さも感じていて、そこがやや苦手な感じもするのでこのランキングになっております。鳥山明もここで「本当の悪」を描いてみたかったと言ってるように何かこうダークエネルギーがこのピッコロ大魔王編では滲み出ていてやはり物語全体からすると異質な感じはしたりします。面白いは面白いですけど。あと個人的にではありますがこのドラゴンボールがピッコロ大魔王編やっているその裏でジャンプはというかテレビアニメはあの聖闘士星矢が「黄金12宮編」をやっておりまして、僕はあの当時ドラゴンボールより圧倒的に聖闘士星矢にハマっていて、その分このドラゴンボールのピッコロ大魔王編の印象が薄くなっている感もあるのかな思ったりします。聖闘士星矢の特にあのアニメは本当にヤバかったです。今でも一番好きなアニメであります。すいません、ドラゴンボールとは関係ない話をして。そういや80年代はジャンプの漫画原作アニメ毎日のようにテレビでゴールデンタイムでやってたなあ。キン肉マン、北斗の拳、シティハンター、気まぐれオレンジロード、他にもジャンプじゃなかったけど、うる星やつら、めぞん一刻、タッチ、ああ、アニメ黄金時代に思えるのは昭和世代だからだからか。脱線。あとドラゴンボールの話に戻しますと、ピッコロ大魔王を倒してからカリン塔を経由してさらに上の神様の神殿に昇っていくあの辺りの世界観がめちゃくちゃ好きで。本当にもの凄い世界観が鳥山明によって次から次へと繰り出されてより大きく日本中を巻き込んでいった、そんな時代の息吹も感じたりします。
5位 第23回天下一武道会編
ここから先はもう甲乙つけがたく、どれも大好きなエピソードではありますが、ランキングを付けるとこうなっていきました。まず何より驚いたのがピッコロ大魔王を倒して天界で修業した悟空が3年ぶりにブルマや亀仙人たちと再会した時です。「え、これがあの悟空か」とよく覚えているのですが相当衝撃的でしたね、「背が伸びている」「うわあー」って。編集担当の鳥嶋氏は「悟空が大きくなって、読者が減ったらどうしよう。きっとこの号読んだ読者から山のように抗議の電話が集英社編集部にかかってくるぞ」と相当な覚悟で電話機の前に座ったというエピソードを後年明かしておりますが、ほとんどそういう抗議の電話の類はかかって来なくて、読者の方が好意的に悟空の「大人バージョン」を受け入れた、ということらしいです。でもリアルタイムでこの号をジャンプで読んだ身としてはやはり子供ながら鳥嶋氏と同じように「ドラゴンボール、これで人気落ちへんかなあ」と心配したりしたものでした。僕自身それまでの「ちび悟空」に相当馴染んできていたし、悟空と言えばあの身長で元気いっぱいに戦ってきたイメージがあるから、やはり慣れるまで時間はかかりました。まあでもビジュアルがよかったですね。画面の収まりも。そしてこれから訪れる「本格的な闘い」に備えていくと言う意味ではやはり鳥山明が後年語っていたように「大人の身長での」闘いが描けないと、ってことなんでしょう。フリーザやベジータとちび悟空は戦えないし、超サイヤ人にもなりにくいですよね。「青年期の葛藤」をある程度悟空が持ち始めたからこそ、物語がこれから大きな汎用性を持って指数関数的に面白くなっていったのだとも言えます。あとここのエピソードではやはり孫悟空とチチとの結婚が印象的です。鳥山明は前作「ドクタースランプ」でも千兵衛さんとみどりさんの結婚をあっさりしたタッチで描くくらい恋愛ものが照れくさくて描くのが苦手らしいので、ああいう「じゃあ結婚すっか」と軽く悟空が言って「んだ」とあっさりチチが言う流れがドラゴンボールらしくて大好きなところではあります。ドロドロしてなくてあっさり読める気軽さがいいですね。悟空の性格はくよくよ悩みがちな僕の永遠の憧れではあります。あとベスト4のあの4人の戦いもそれまでのどんな戦いよりも華があって見ごたえがありました。天津飯と悟空の戦いで途中悟空が重い胴着を脱ぐところとか、さらりと悟空の天界の修行の成果を描くところとか、マジュニアと神様のナメック語での会話とか物語がどんどん飛躍していくあの感じがインフレ気味で面白かったです。わくわくしまくってました。そしてマジュニアと悟空の戦いはそれまででベストでしたし。これ以上ないってくらい物語は盛り上がって最後「ドラゴンボールの贈り物」では本当にこのまま最終回でも良かったくらいめちゃくちゃきれいに話をまとめていたから、ビビりましたけど。鳥山明の忙しさに対するアンチテーゼみたいな感じでしゃれで描いたのかもしれません。亀仙人が「最終回じゃないぞよ。もうちびっとだけ続くんじゃ」と言って当時本気で「ああ、もうドラゴンボールもそろそろ終わるんやあ。寂しいなあ。でもここまで面白かったらもうこれ以上面白いの描かれへんやろな」と思ったりしましたが、まさかの「ここから」が本番だったとは。本当に鳥山明は神様でした。
4位 サイヤ人編
もうほとんどおまけみたいな感じでジャンプを手に取ってドラゴンボールを眺めたりしたあの23回天下一武道会編の後だったりしましたが、これもよく覚えているのですがこの「謎の異星人戦士」の号はいつも行く本屋で立ち読みで済ませていた生意気な小学生ではありましたが、「うわあ、何。宇宙出てきた」と、期待してなかった分相当わくわくが止まらなかったです。悟空のアニキラディッツが出てきて、ピッコロより遥かに強くてピッコロがビビりまくる、そしてまた悟空の息子「孫悟飯」が初登場で、もう何というか物語の伏線が面白い方向にぶわあーって一気に張り巡らされて、まさかのピッコロと悟空のタッグとか。どこまでサービス精神旺盛なんやろって流れで、あそこら辺の流れは今でもかなり読んでいてわくわくしますね。そしてあの世で修行する悟空、ベジータ、ナッパといった新たな強敵の出現。まあアニメの「Z」の物語はひたすら強敵が次から次へと出て来るある意味パターンが決まっていたりしますが、ひとつひとつのバトルが、見ているだけでめちゃくちゃパターン化されないいろいろなバリエーションで前の戦いを超えて来る勢いだったのでただただ紙面に夢中になって中毒になるしかない面白さがこのころから問答無用でドラゴンボールから漂っていました。ベジータを悟空、悟飯、クリリン、そしてヤジロベーまで出てきてやっと倒すとかホンマドラゴンボール史上に残る激闘やったと思います。そして戦いが終わってクリリンがベジータをヤジロベーの刀でとどめを刺そうとするところで悟空が「やめてくれー」とテレパシーで叫んで止める流れとか、悟空にはそして鳥山明には普通に人が見えない世界が見えているとしか思えない感性の持ち主で。そこは両者「神人」という括りでもいいかなと。凡人な僕は思ったりします。あとどっちに入れようか迷いましたが、ここに入れるとそこからナメック星へ旅立っていく流れ。ピッコロがナメック星人で、ドラゴンボールがナメック星にあるという神の展開を、もの凄く辻褄合わせが大変だったろうに、パズルを埋め合わせるがごとくに説得力を持って物語の世界観を損なわない描写とかもやはり「神」でした。あの飛空艇から見えたナメックの希望。そして病院での悟飯のチチへの反抗。神様の宇宙船。あそこら辺が短いエピソードながら昔からめっちゃ好きでして。ワクワクが止まらないとはこのことで。日本中みんなナメック星に夢見てたんやろな。
3位 人造人間編
話の流れではこのままナメック星やフリーザに行きたかったところですが、ランキング形式の発表では先に3位となった「人造人間編」を失礼します。ネタバレは一応避けますが、あのフリーザの後、一体どう物語を展開させるのか日本中が固唾を呑んで待ち構えていたところフリーザが父親のコルド大王とともに地球侵略にやって来て、ナメック星でフリーザの恐ろしさを嫌というほど味わったベジータが「はっきり言ってやろうか。これで地球は終わりだ」とは読者すべての気持ちに近かったのではないでしょうか。悟空は帰ってこないし。ベジータやピッコロとかじゃとてもフリーザには敵わない。そこでフリーザ親子の前にスニーカーを履いた姿で立ちはだかるコマがその号のラストで。これもよく覚えているのですが、学校でみんな「これは誰なんやろ」って推理したりしておりました。多かったのが「ベジータ」でまあ靴とか見たら違うのは分かるのですが、当時は全く予想もつかなかったです。それもそのはず、その正体がドラゴンボール屈指の人気キャラ「青年トランクス」の初登場でしたから。そりゃ誰もわからんて。そしてあっという間にフリーザ親子を瞬殺してしまうあの衝撃。そして「え、超サイヤ人?何この展開、頭がついていかへん」と鳥山先生はいつも読者の斜め行く展開を持ってきたりするので、ほんと飽きなかったですね。まさかの未来から。タイムトラベルですか。あれって、鳥山先生も後年語っていましたがパラレルワールドとかかなり物語が複雑になって、中学生の僕はとりわけ読解力に難があったりしたので、分かったふりでしたね。セルとか出てきた辺りからサスペンス要素も加わり、「まだ面白いの描けてるすげえ」って思ったり。ここでの注目キャラはやはり人造人間17号、18号ですね。未来の彼らは残虐非道でしたが、現代の彼らは「ラスボス」というより、何かそれまでの敵キャラの枠を超える新しい何かを示していたから、その吸引力、カリスマ性はあのキャラの造形美と相まって凄いものがあったと思います。ホントあの二人はカッコよくてかわいかったですね。でも人造人間感はしっかり描けているという神様鳥山明のキャラクターデザイン力の極みのような存在だと思います。そんな彼らより後に出て来るのがこの「人造人間編」の真のラスボス「セル」で。当時からバイオテクノロジーなどニュースにも取り上げられることも多くなってきたりしましたが、それを本当に物語に上手く調合させて補完していくストーリテラーとしてのあの鳥山明の手法は、下手なミステリよりも面白い要素があったようなそんな気もします。未来トランクスやブルマ、悟飯がセルの抜け殻を探しに行くあの前後とかめっちゃ昔から好きなエピソードでした。で、あのグロテスクな人間の吸収。ホンマ怖かったです。アニメとかかなり演出凝ってたので、ヤバいくらいあのジンジャータウンでしたか、人間吸収されていくところとか、ホラー映画顔負けの展開でしたね。17号、18号を吸収、そして完全体へと変わったセルがまた男前で。カリスマ性に溢れて敵キャラでは一番好きでした。よく完全体セルの絵を描いたりしていました。全部書いているとあれなんで。最後にやはり悟飯の超サイヤ人のビジュアルは人造人間にも負けない造形美の極み2みたいな。鳥山明史上最高傑作と言っても過言じゃない完成度、美しさ、カッコよさ、そして最強の力を兼ね備えておりました。あの当時のキャラクターランキングでは堂々の1位でしたし、悟飯が悟空やベジータを抑えて。それも納得でした。あと親子かめはめ波は泣けましたね。親子二人で精神と時の部屋で完成させた力でセルを倒すとか。もうここでピークでしたね。鳥山明は。申し訳ないですが、魔人ブウ編は越えられてはないです。ここら辺を。違う漫画だと思ったりするくらい、内容が人造人間編までとは変わってしまいましたね。いろいろな意見はあるとは思いますが。あの大団円とか天界でのクリリンの18号への優しさとか、余韻に浸れる幸せが懐かしいです。出し切った後にまだ描かなければならない鳥山明の精神的なしんどさが今では何となくわかったりします。
2位 フリーザ編
みんなが夢見たナメック星は全く持って期待を裏切ることなく、さらにその期待の遥か上を行く納得の、最高のストーリーでした。このフリーザ編をドラゴンボールで一番好きなエピソードに上げる人はかなり多いと思います。僕も10代から20代、30代前半にかけてはぶっちぎりで「フリーザ編」がドラゴンボールで一番好きなエピソードでした。そうじゃなくなった理由は「1位」のところで話したいと思います。少年漫画では宇宙に行くと人気が下がるという教訓が漫画編集者の間ではまことしやかに語られていたらしく当時の編集部もそう思ったりしていたのでしょうか。でも世界観が本当に完璧でしたね、ドラゴンボールの「宇宙」は。ベジータが地球での大激闘の果てに命からがら逃げかえった「惑星フリーザNo79」の描写とか「どこのSFの傑作映画なん?」っていくくらい、その世界観にハマってました。ああいう世界観を完璧に構築させたうえでさらっとエピソードに入れて来る、もう神がかっていうことないです。一気に読者を宇宙に、ナメック星に持っていきました。そしてブルマやクリリンが到着した「平和なはずの」ナメック星には暗雲が渦巻いていて。ついに登場。フリーザ様。ドドリア、ザーボンを従えて。あの絵面。完璧です。フリーザのカリスマ性。そして公家口調がまたなんとも言えない、親しみやすさというか、読者との距離感を醸成して「何こいつ、何か知らんけど、凄そう」と思わせる効果が半端ないです。あと戦闘力が数値で分かりやすく次から次へと表示されるのも好きでしたね。ドドリア「23000」とか。ザーボンは「30000」くらい?って自分たちでいろいろ想像するのが楽しかったです。で、フリーザが「530000」って笑。もう理解が追いつかなかったですね、インフレーション起こしていて。あとあの生きるか死ぬかでクリリンや悟飯たち、ベジータ、そしてフリーザの間でドッジボールのでかさのナメック星本場のドラゴンボールの争奪戦。あれは本当に見ごたえがあり、ベジータがフリーザの宇宙船からマンマとドラゴンボールを盗み出した時のフリーザの「人間的な」うろたえよう、あれめっちゃ好きです。フリーザはどうしようもない悪ですが、ああいうちょっとした焦りとか感じさせる「人間味」があるから敵キャラながら人気ナンバーワンだったりするのかなと思ったりします。「願いを叶えるのはこのフリーザ様だ!きさまら下等生物なんかではないー!」なんて凄いセリフですね笑。悪党の中の悪党だからこそ言える納得の説得力というか、名セリフです。あとはギニュー特戦隊の華。僕としてはもっと活躍してほしかったですが、一番活躍したのはリクームでしたね。ジースとか一番くらいに強かったらしいですが(ギニューを除けば)ベジータに瞬殺されたのはちょっと残念でした。まあ鳥山明は早くフリーザとの戦いを描きたかったからそこまで「前座」にエネルギーを費やしたくなかったのかな。あと一番不思議なのは悟空がナメック星着くまでに100倍の重力室で仙豆を駆使しながらギリギリまで痛めつけてベジータ戦から10倍以上も戦闘力を上げたのは理解できるのですが、ボディチェンジでギニューと入れ替わって、悟空の姿のギニューがベジータにぼこぼこ、といっても数発食らっただけで、まあ瀕死にはなりましたが、そこからメディカルマシーン入ってフリーザ最終決戦に出てきた時メチャクチャパワーアップしているのが少し解せないというか。まあそこは物語の流れで、フリーザに何とか合わせてこれくらいにしようとか打合せがいろいろ入ったのでしょう。そしてフリーザ戦。「フリーザはあと2回も変身する」は強烈な言葉でしたね。どれだけ絶望感を読者に与えたことか。ベジータの悟空に対する思い「サイヤ人の手で、フリーザを倒してくれ」とか泣けます。さりげなくベジータとドドリア、ザーボン、フリーザとの幼少期からの関係性が描かれていて長い知り合いで因縁浅からぬ仲だってわかるそれぞれの会話とかに物語の奥行きを感じさせて、好きでした。アニメ特別編とかじゃあの当時悟空の父親「バーダック」が出てきたエピソード、ビデオに録画して擦り切れるくらい何度も見直したくらい、あのフリーザ編のいろいろなサイドストーリーも含めて大好きでした。最高です。そしてクライマックスが本当に凄かった。いうまでもなくあの「悟空ーー」「やめろ、フリーザ」「二ッ」「ドカーン」わなわな、「よくも、よくも」「許さんぞ」。プチン。ズゥゥーン。の超サイヤ人悟空の初登場シーン。あれは前の「ドラゴンボール原論」でも書きましたが漫画史の頂点だと思います。それくらい何というか完璧な頂上を描けていて。歴史的なマンガだからこそ、神様鳥山明だからこそ、すべての読者を巻き添えにして日本中にとんでもないムーブメントをあの一コマから巻き起こした、そんな瞬間だったと思います。圧倒的な実力差がそれまでのフリーザと悟空にはあって界王兼20倍のかめはめ波も片手でフリーザに防がれ、ナメック星やその隣からかき集めた元気玉を直撃させても生き残るフリーザの絶望感。あの荒野というか、島からフリーザが出てきて誰もが「もう終わった。これ以上悟空に何が出来るねん」ってところであのクリリン惨殺からの「伝説の超サイヤ人」へと覚醒する悟空に、ほんと読んだ人すべてが持っていかれたと思います。あの展開は漫画史の頂点だとやはり思います。その後はパワーバランスが悟空に傾いてそこまで名勝負とはなっていませんが、もう流れ的には十分でして。あそこら辺はもう鳥山明の一人勝ちみたいな、そんな時間が止まったような、ドラゴンボールだけが漫画としてあるみたいな、究極の一択状態とかだったんじゃないかって思うくらい、神がかってました。ドラゴンボールは。
1位 レッドリボン軍~占いババ編
その最高傑作「フリーザ編」を超えるのが僕の場合この「レッドリボン軍~占いババ編」でして。理由はなかなか難しく伝わらないかも、ですが。何とか言語化しますと、「純粋な冒険漫画としてメチャクチャ面白い」からとかですかね。そこまで後年のリアルなバトル漫画の「スキのなさ」といいますか、「不自由さ」がなく、悟空が否、換言すると鳥山明自身が伸び伸びと漫画を描いていて、自由を謳歌しているのが、その精神性が紙面いっぱいに伝わってくるから、というのが理由です。読んでいて単純に幸せな気持ちになれる、本当に大好きだったドラゴンボールが、悟空が仲間たちが、初めて出てきた謎の組織「レッドリボン軍」と戦いながらドラゴンボールを世界中駆け巡って探して、アドベンチャーな世界観がたまらないです。マッスルタワー昇って各階にボスキャラおるんとか当時のファミコンの世界観にマッチしていて面白かったですし、ムラサキ曹長との戦いのギャグとのいい塩梅、そして塔の中にあんな本格的な日本庭園あるとか、刺さりまくりな世界観、外見との調和の取れなさはご愛敬。雪国のジングル村の後に悟空が初めて訪れる大都会「西の都」。悟空の目線に立って普通の人々が描かれて、悟空の特別な強さが伝わって来る描写もたまりません。ブルマの家のとんでもないでかさ、抜けた感じの、大物感を醸し出すブルマの父ちゃん、母ちゃん。そしてこのエピソードで何と言っても好きなのはブルー将軍が出て来てからで。あの夏のイメージと、80年代のカラフル感のシンクロ率、ヤバいっす。ほんま、あの世界に入りたい。あの海底洞窟を悟空達と一緒に探検したい、そう思わせてくれる、もうこの時点で世界観が神なんです、鳥山明は。あの海賊たちの秘密基地、ドンピシャの好みでして。あそこの場面でずっとおりたい衝動に毎回読むたびにかられます。ドラゴンボールはあるわ、海賊の宝物はあるわ、そこに至る海賊たちの罠とか、何故かでかいタコ、そしてネズミに助けられた悟空が最後洞窟が崩れるのにそのネズミを自分の口の中に入れて助けるとか、もう悟空のやさしさがたまりません。最高です。大好きなところです。その後にまさかの前作「ドクタースランプ」が出て来たり、サービス良すぎる。アラレちゃんから読んでいた世代はここでやられたんじゃないでしょうか。まだドラゴンボールとアラレちゃんの世界が地続きである内容だったからこそ出せたんでしょうね。人が死ぬようになってからはさすがにアラレちゃんの世界観には馴染まないでしょうし。そう、アラレちゃんのすぐあとからドラゴンボールが変わっていきます。桃白白が出て来るからです。それまでほとんど誰も死ななかったドラゴンボールですが、まずそれまでの最強の敵だったブルー将軍(僕このブルー将軍結構好きだったので、この場面は辛かったです)をベロで瞬殺。そして聖地カリンでもウパの父親ボラを惨殺。それまでドクタースランプからの流れにあった平和な空気感はこの桃白白の登場でなくなりました。そこら辺の考察は僕が前に書いた「ドラゴンボール原論」に書いてあるのでよかったら。あとでリンク載せておきます。これよりもう少しシビアにいろいろ書いております。まあここから悟空の強さが加速度的に増していって、その後の物語の核ともなっていくからこの変化は仕方ないですかね。バトル漫画としての面白さが反比例するように増していきましたから。牧歌的な世界観の消失とともに。で、桃白白をカリン塔に登って超聖水飲んで強くなった悟空が倒して、ここからがまた爽快さ満点のレッドリボン軍本拠地を悟空がひとりで壊滅させる、あの本部のいろいろな場面とかもっと見ていたかったです。そのあとがこのエピソードのラストで占いババ。一番印象に残っているのはムフフなアレもそうですが笑、やっぱりおじいちゃんの孫悟飯との感動的な再会ですね。猫のお面被っているのもなんともいえない味がありましたが、そのバトルの描き方がそれまでの桃白白よりもしっかり描かれていて、見ごたえ十分とかでした。そして悟空が死んだ祖父との再会の場面はやっぱり何回見ても、僕自身いろいろおばあちゃんやお父さんを亡くしたりしているので、生き返って会えたらとか思うと泣けてきます。ほんとうに温かい人間味のある、鳥山明の素晴らしい人間性が滲み出たような場面で大好きですね。乾いていない昭和の良い時代の空気感みたいで。失われた楽園でドラゴンボールが鳴っていた、そんな美しい時代の空気感がやはりこの「レッドリボン軍~占いババ編」では特に感じられて、今の時代、言っちゃ悪いですが余裕のない時代の乾いた空気を反映してか漫画でもグロテスクな描写が多くて、僕はそれが本当に苦手でして。だからこそこの昭和の最後の日々にアラレちゃんを世に送り出した鳥山明の描き出す懐かしい故郷のような優しい世界観、それは日本人の原風景みたいな宝物でして、それは鳥山明から令和の今の時代を生きる僕たちに向けての贈り物みたいな感じがします。不思議とその3年後を描いた「第22回天下一武道会」からこの「楽園」の空気感、鳥山明の漫画を描くペンのタッチから消えているんですよね。時代の空気の変化に敏感だった鳥山明がバトル漫画へと梶を切らざるを得ないドラゴンボールの変化をここからも感じます。そこら辺もかなり前に書いた「ドラゴンボール原論」にいろいろ時代考察も含めて書いているので、よかったら。ランキングは以上になります。最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
あとがき
鳥山明先生は本当に亡くなってしまったのですね。その存在があまりにも僕ら世代には大きすぎて、まだ受け止めきれてない部分もあるのかもしれません。最近、鳥山明先生が亡くなってからまたドラゴンボールを読み返していますが、まあどのページも本当に丁寧に描き込まれていて、見ていて心が洗われるというか芸術作品に近い「絵」だなと改めて思ったりします。そしてまた物語がとんでもなく面白くて、読者の想像の遥か先を行っているから毎回ワクワクが止まらなかった。こんな漫画は僕が生きている間は二度と出てこないと思います。リアルタイムでドラゴンボールの漫画やアニメを見れて、一緒に悟空たちと冒険の旅に行けて、あまりいいことない人生ではありましたが、魂はそうとう「わくわく」させてもらって、生きる喜びを鳥山明先生から多く、数えきれないくらい多く頂きました。本当にありがとうございました。僕の青春であり、幼少期の宝物でもあり、人生に悩んだ時の指南書みたいなものでもあり、最高の漫画でした。改めて、本当にありがとうございました。世界中のファンはいつまでもあなたに感謝し続けることでしょう。ありがとう、さようなら。
最後にかなり以前に書いた「ドラゴンボール原論」のリンクも貼っておきます。よかったら。
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