ネタツイッタラーが医者より偉い世界線
「行ってきま~す。」
僕はこうして毎日、有名ネタツイッタラーが設立した「面白ツイート大学(通称、オモツイ大)」に通う学生。今年で3年目になる。オモツイ大の偏差値は83.5。偏差値で東京大学を抜いて5年くらいが経とうとしている。
こうして朝のネタツイをした。
そろそろ普通の大学では「就活は情報戦だからね~」などと言っている人が湧き出す時期だ。一方、うちの学生の多くはTwitterから緑の公式マークがもらえる「プロネタツイッタラー」を目指す。気になる給料はというと「1ツイートあたりのいいね数×1000円」で、いわゆる万バズ(1万件のいいねをもらうこと)を達成すると1000万円を稼げるというわけだ。
この緑の公式マークを付けたネタツイッタラーの平均年収は、50億円(ドルで換算すると34,109,900$となる。)。医者の年収をはるかに凌いでしまうほどの額だ。
でも、もちろんこの大学に通う全員が緑の公式マークを獲得できるわけじゃない。こうして夢の途中で挫折した多くの人はマッキンゼーに行く。さすがに余裕で入社できる。偏差値83.5なので。
ただ、うちの大学では、卒業前にプロネタツイッタラーになって、忙しすぎて退学してしまう人もいる。みんなそういう天才になりたがっているから、尖りまくっていて個人的には過ごしにくい。
最近は、浜辺美波がプロネタツイッタラーの「ハンマードリル」と結婚した。直筆で書いた「ご報告」には「これからは2人で仲良くツイートを考えていければと思っています。 ハンマードリル」とかかれていた。浜辺美波が所属する事務所からの発表には「一般男性」と書かれていたのだけれども、男性諸君からは全然一般男性じゃないだろ!と厳しいご意見も上がっていた。
僕が尊敬するプロネタツイッタラーの「3択ロース」先輩のところに、こないだこんな依頼がきたらしい。「祖母が危篤なんです、ツイートで元気にしてあげてください!」と。これは結構難しいご依頼だと思った。ツイートで元気にするなんて絶対できひんやん。
病室に向かった彼は、ツイートの下書きから一つのツイートを選出し、「ツイートする」ボタンを押した。
13時46分、おばあさん永眠。
「祖母も、最後にネタツイが見れてうれしかったと思います。ほんとうにありがとうございました。今頃、走馬灯に三択ロースさんが出てきている頃かと思います。腹筋ワンダーコアって、まだ売ってるんですかね…」
と感謝されたという。
その先輩から学んだことは、ネタツイは使い方によっては世界を変える、ということ。本当にそれはそうだな、と思った。
僕は決めた。プロネタツイッタラーとして、朝のワイドショーのコメンテーターに呼ばれ、暗いニュースや社会問題をネタツイで斬っていきたい、と。でも正直、「産みの苦しみ」が怖い。その場でネタツイを産めなくなったらどうしよう、と。ツイートは準備ができるけど、ワイドショーというのは、ご存知の通り生放送で、ミヤネ屋で宮根誠司がディスプレイを殴って壊れてしまっても、誰も救ってくれないヤバい現場だ。
もしも自分がその場で笑えるネタツイを産み出せなかったとき、世間は、即興で韻が踏めないイップスのR指定を見つめるような顔で僕のことを見つめるだろう。
ま、そんなリスクを恐れているようでは、プロネタツイッタラーにはなれないと思うので、修行を続けるのみだと思っています。
でも、進路に関する家族会議で親にこんなことを言われた。
答えに困った。おそらく偉くない。プロネタツイッタラーが食べていけるのも渋沢栄一が経済の基盤を作ってくれたからだ。ただ、ここでひるんでしまうようでは、プロネタツイッタラーにはなれない。
ぶん殴られた。プロネタツイッタラーは諦めることにした。
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